モテキ
恋が、攻めてきたっ!

2011年 カラー ビスタサイズ 118min 東宝
エグゼクティブプロデューサー 山内章弘、塚田泰浩、中尾哲郎 監督、脚本 大根仁  企画 川村元気
原作 久保ミツロウ 撮影 宮本亘 照明 冨川英伸 美術 佐々木尚 音楽 岩崎太整 録音 下元徹
編集 石田雄介 スタイリスト 伊賀大介
出演 森山未來、長澤まさみ、麻生久美子、仲里依紗、真木よう子、新井浩文、金子ノブアキ
リリー・フランキー、ピエール瀧


 180万部を超える久保ミツロウの同名コミックを原作に、TV版でも監督を務めた大根仁が完全オリジナルストーリーで映画化。恋愛偏差値の低いさえない男が、突然訪れた“モテキ”に翻弄されながら、女性たちとの恋愛を通して成長していく様を描く。出演は『苦役列車』の森山未來を中心として豪華女優陣が集結。『曲がれ!スプーン』の長澤まさみ、『シーサイドモーテル』の麻生久美子、『ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲』の仲里依紗、『SP革命篇』の真木よう子といった夢の共演が実現した。また全編を彩る多数のJ-POPは、単なるBGM以上の役割が与えられ、シークエンスを表現する装置のひとつとして、時に登場人物の心境を代弁したりする。


  31歳の藤本幸世(森山未來)は、金なし夢なし彼女なし。派遣会社を卒業し、ニュースサイトのライター職として新しい生活を踏み出そうとしているが、プライベート(=恋愛)の方はまるで充実しないまま。結局のところ新しい出会いもなく、恋することも忘れ、ロンリーな日々を送っていた。だがある日突然、異性にモテまくる軌跡のシーズン“モテキ”が訪れた。趣味が合い見た目もど真ん中タイプなのだが彼氏持ちのキュートな雑誌編集者・みゆき(長澤まさみ)、御幸の親友で清楚で素朴な美形OLるみ子(麻生久美子)、ガールズバーのハデかわ孃・愛(仲里依紗)、クールビューティーな美貌のSキャラ先輩社員・素子(真木よう子)というまったくタイプの異なる4人の美女の間で揺れ動く幸世。「こんなの初めてだ…今まで出会った女の子と全然違う。冷静になれっ!期待しちゃダメだぁ…」めくるめくモテキと4人の美女に翻弄されながら、幸世は本当の恋愛(含むセックス)にたどりつけるのか?


 「それでは私、このへんでドロンさせていただきます」忘年会シーズンになるとよく耳にするこのセリフ。中年のオヤジが言うと一瞬にして酔いも醒めるものの、二十六歳の女の子がこのオヤジギャグを言うとどうなるか?ましてや長澤まさみだ。終いにゃ手裏剣を投げるジェスチャー付きで「シュッシュッ…」こんな事をされたら、その場にいたリリー・フランキーならずとも大抵の男はもんどり打つだろう。『ロボコン』で早くもその頭角を現し、『曲がれ!スプーン』でヨーロッパ企画の演技派と渡り合った長澤まさみが、コメディエンヌに更なる磨きを掛けた。しかも自然体でイイ演技を見せてくれる。森山未來演じる31歳の冴えない彼女いない歴更新中の“セカンド童貞"(こんな言葉が存在するのを本作で初めて知る)幸世の前に現れたのが長澤まさみ扮するみゆきと名乗るノリの良い編集者。男が見て可愛いのは勿論だが、女性が見ても嫌みを感じさせない絶妙なバランスで演じるヒロインは『タッチ』の浅倉南役で培った「みんなのアイドル」の進化系か?
 美少女で演技が上手く注目を集める若手女優は往々にして、ヒット作の直後から妬みや嫉みを受けるという悪しき風潮がある。それに関しては長澤まさみも例外ではなく、好き勝手な書き込みをするブロガーたちの洗礼を受けていた…そんな矢先に本作は公開された。出会ったその日に幸世のアパートに泊まって、唐突に口移しでペットボトルの水を飲ませるみゆきという役はヘタをすると同性から反感を買いかねない役なのだが、悪質なブロガーは沈黙したまま、代わりに彼女の演技を賞賛する意見がネットを埋め尽くしたのだ。大根仁監督があくまで幸世の一人称形式で描いているのと、長澤まさみの発するセリフのひとつひとつがイヤらしさを全く感じさせないおかげで、みゆきの私生活がミステリアスな要素として浮き彫りにされたのが成功の大きな要因だろう。久しぶりの森山&長澤コンビの復活だが、ウザいくらいにパニックる童貞色全開の幸世に対して、冷静なみゆきの言動の噛み合わないもどかしさと切なさを笑いに天昇させるあたり、さすがに最強の組み合わせと言って良いだろう。みゆきの部屋でキスを交わす場面のスリリングな展開は突然の来訪者によるチャイムで寸断されるまで息をするのも忘れるほど素晴らしい出来だった。中でも幸世から友人と寝たと告げられた時に見せる長澤まさみの表情…鳥肌級の美しさ。
 本作は人気テレビドラマ(深夜枠)の映画版であるが本編を未見でも充分楽しむ事が出来るのはありがたい。今の時代の流行りを恋愛物語にまぶす手法は『なんとなく、クリスタル』あたりから始まったように記憶しているが、ひと昔前に月9テレビで流行ったトレンディーというアイコンが、サブカルチャーに変化した代表格とも言える本作。音楽業界とネット業界を舞台に、Twitterや桃クロなどを散りばめながらも内容はBOY MEETS GIRLの王道を行く至ってシンプル。男女の恋愛には流行廃りは無いという事かな?1980年代以降のJ-POPをカラオケ風の映像で表現したり、モテキ到来の予感に喜ぶ幸世がPerfume出演によるミュージカル仕立てで感情の高ぶりを表現したり…オリジナルのコンセプトを踏襲しながら幸世と4人の女性の絡ませ方など大根仁監督の演出にはイイ意味で裏切られ、心地よさだけが心に残った。

「彼氏がいないって事は世界中がライバルなんだ。でもな…彼氏がいるって事はライバルはたった一人なんだ」リリー・フランキー演じる幸世の社長が言う。ムチャクチャだが理屈は合っている。


レーベル:東宝(株)
販売元: 東宝(株)
メーカー品番: TDV-22040D ディスク枚数:1枚(DVD1枚)
通常価格 3,890円 (税込)

平成12年(2000)
クロスファイア

平成14年(2002)
なごり雪 あるいは、五十歳の悲歌

平成15年(2003)
ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS
黄泉がえり
ロボコン
阿修羅のごとく

平成16年(2004)
ゴジラ FINAL WARS
深呼吸の必要
世界の中心で、愛をさけぶ

平成17年(2005)
タッチ

平成18年(2006)
涙そうそう
ラフ ROUGH

平成19年(2007)
のときは彼によろしく

平成20年(2008)
隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS

平成21年(2009)
群青 愛が沈んだ海の色
曲がれ!スプーン

平成22年(2010)
てぃだかんかん 海とサンゴと小さな奇跡

平成23年(2011)
モテキ
コクリコ坂から
冬の日
奇跡
岳 ガク

平成24年(2012)
日本列島 いきものたちの物語

平成25年(2013)
白い息
ボクたちの交換日記
潔く柔く きよくやわく




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