2005年4月2日、配給会社“アップリンク”が運営する『アップリンクファクトリー』が渋谷、宇田川町にオープンした。同施設内にはファクトリーのオープンから遅れること1ヶ月半後に隣接するカフェレストラン“Tabela(タベラ)”がオープン、さらに2階に日本一小さな映画館と自称するミニシアター“UPLIMK X”がある等、ひとつのビルが“アップリンク”の情報発信基地となっている。『アップリンクファクトリー』は渋谷、神南のファイヤー通りに映画、ライブ、ギャラリーなど様々なサブカルチャーのステージとして1995年10月10日オープンして以来、多くのインディーズシーンをリードして来た。「旧ファクトリーに比べて、お客様の層は確かに広がった感じがします。」と語ってくれたのは、上映作品の選定からイベントの企画・演出に至るまで手掛けている鎌田英嗣氏。「元々ファクトリーは作品によって客層がガラリと変わっていました。その中でもドキュメンタリーにおいては10代から70代までと年齢層が全く異なるのです。」


オープニングで森達也監督のドキュメンタリー特集を組んでから、ドキュメンタリーが中心で構成されているが、特に幅広い客層で賑わったのが“ジャマイカ楽園の真実”だった。「この作品は映画ファンだけではなく、レゲエミュージックに傾倒している音楽ファンからジャマイカを研究されている年輩の方やNPO団体の方々までお越し頂いたのは想定外でしたね。」と語る鎌田氏にとって今後の課題は、そこからリピーターをどうやって獲得していくかにあるという。「様々なジャンルの作品を各々のファン層に対して、どうやって訴求していくかを、これまでの経験を基にして考えていかなくてはなりません。」と言う鎌田氏だが、その結果、今年の夏に行われた中島多佳子監督の“TAIZO”では俳優の菟田高城氏による一人芝居を連日公演し、多くのファンが詰めかけ、予想以上の反響を呼んだ。「この作品は既に2〜3年前に都内で上映されていて、たとえ編集し直したとしても多くの方がご覧になっている訳ですから。それでは、どうやってアピールしていくか…をプロデューサーの奥山和由氏と打ち合わせを重ねた結果、だったら思い切った事をしようじゃないか…という事になったのです。」演出を“ラストサムライ”のキャスティングを担当した奈良橋陽子氏が担当する等、贅沢な組み合わせが実現した。結果、終了までの2週間は常に満席となる程の熱狂的な盛り上がりをみせ大成功を収めた。

こうした上映作品を選ぶポイントは「やはり、純度の高い作品であるという事ですね。アップリンクだからこそ、という作品を選んでいきたいのですが、そういった素晴らしい作品=興行としてお客様に受け入れられるか?というのが難しく、いつも葛藤しています(笑)」という鎌田氏は作品を持ち込んでくる若手の作家に厳しい目で選定を行っている。いすれは、ファクトリーとカフェ“Tabela(タベラ)”の稼働間仕切りを取り除いて一つの空間として何かイベント的な事が出来ないかと検討中だという。いくつもの顔を持っているコチラのスペースで今後、何が起きるかが楽しみである。


6.1chのサラウンドシステムを導入している場内はフローリングの床にデザイナーズチェアと前列には半球体のクッションが設置されており思い思いの鑑賞が楽しめる。ブロードバンド対応の上映も可能なプロジェクターを完備しており、映画のみならずライブ、パフォーマンス等あらゆるカルチャーを披露出来る多目的スペースだ。

そして、その隣には身近なアートをカクテルを飲みながら楽しめる“アップリンク・ギャラリー”が併設されている。バーカウンターでは上映開始までの待ち時間を専属のバーテンダーによる特製のカクテル(上映作品にちなんだカクテルも登場するので是非、お試し頂きたい)を楽しめる等、気軽に様々なスタイルのアートに接する事ができる空間となっている。展示されている作品で気に入った物があれば購入も可能。構える事なく気軽にアートに接してもらいたいというスタッフの思いが表れている。








ビルの正面入口にあるカフェレストラン“Tabela(タベラ)”は旅をテーマにした多国籍レストランで、12ヶ国の料理をシェフがオリジナルアレンジを施して提供している。コチラも上映作品によって、その国にちなんだ料理を期間限定で作っており“ジャマイカ楽園の真実”ではジャマイカ料理、“TAIZO”ではカンボジア料理と、他所ではお目にかかれない逸品も楽しむ事が出来る。「待ち時間を過ごしたり、上映終了後のおしゃべりの場所として活用してもらうだけではなく、デートで立ち寄ってもらって“ここに映画館があるのだ”と認知してもらうキッカケ作りになったら…と思っています」料理も然ることながら何と言ってもお店の持っているオリエンタルなムードを醸し出した調度品の数々に目を見張ってしまう。カフェやギャラリーのバーカウンターで使用されているスツールなどは全てアップリンク代表の浅井隆氏が自ら選んで発注したブラジルのアンティーク家具の一点もので、それを輸入したというこだわりよう。


「実は、“Tabela(タベラ)”のオープンが1ヶ月以上も遅れたのは家具を輸入する際に大西洋が荒れていて船便が遅れたためなんです(笑)」という言葉通り、店舗や劇場のイメージ作りに対する思い入れは並々ならぬ深さを持っている。だからこそ、施設内のどれを取っても完成度が高く、それでいて決して敷居が高い訳ではない親しみ易さを持っているのだろう。オープンは11時45分からランチもやっており、ディナータイムにはシェフが腕によりをかけた世界の料理が味わえるので是非、活用してはいかがだろうか?渋谷駅前から少し離れた隠れたスポットにある映画館とギャラリーとカフェレストラン…まさにココは都会の慌ただしさから隔離された世界の文化を楽しめる隠れ処なのだ。(取材:2005年8月)

【座席】50席 【音響】DS・SRD・DTS DLP上映
【Tabela営業時間】月〜木11:45〜23:00 金・土11:45〜翌4:00

【住所】東京都渋谷区宇田川町37-18 トツネビル1階 ※2021年5月20日を持ちまして閉館いたしました。

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