数年前まで静岡市内には東海道随一を誇る映画街があった。静岡県庁から真っ直ぐ伸びる“七ぶらシネマ通り”という愛称で親しまれていた通りには大正8年創業の静活(株)が運営する9つの映画館が建ち並んでいた。昭和30年代には“七ぶら”というローカルな流行語まで生み出したほど多くの人々がここを訪れ映画を観る。それから60年…新静岡駅再開発計画により、老朽化した“七ぶらシネマ通り”(※1)にあった映画館は、静鉄清水線・新静岡駅にリニューアルオープンしたファッションビル“新静岡セノバ”の最上階に平成23年10月5日、シネマコンプレックス『シネシティ ザート』として生まれ変わった。

「七間町の映画街に愛着を抱いている地元の人たちから出て行かないで欲しい…というお声をもらっていたので、移設についてはかなり迷ったようですが…」と語ってくれたのは支配人の池田圭介氏だ。当時、七間町から映画の灯を消さないで欲しいという移転反対運動まで起こったほど。「私たちスタッフも子供の頃から親しんで来た映画館なので出来れば七間町で続けたかったのですが…。もし他のシネコンが入ってしまったら間違いなく負けてしまうであろうと予測が出来たので皆さんに納得していただきました」驚くのは“七ぶらシネマ通り”(※1)の最終興行は『シネシティ ザート』がオープンする3日前まで行われたという事。最後に上映された木下恵介監督作“二十四の瞳”には300人以上もの別れを惜しむ行列ができた。町のシンボルともなっていた“静岡オリオン座”(※2)の外壁を彩る印象派の画家スーラの名作“グランド・ジャット島の日曜日の午後”を模した外観に、集まったファンがカメラを向けていたのが印象に残る。「社員は引っ越しと新しいシステムの研修をしつつ、最後の上映イベントをやっていたので感傷的になる暇もないほどでした(笑)」

シネコンになった今でも昔からの常連の方は『シネシティ ザート』に足を運んでくれるという。「ただ、シネコンの指定席に馴染めない方も多く、七間町の時は一日中ずっといても良かったし途中入場も出来たのに…と言われるお客様にはひとつひとつ対応させてもらいました」とは言え、ご年輩のお客様からは駅前になって良かったという声も上がっており、特にバスの利用者が多くを占める静岡県民にとってバスターミナルに直結している映画館の利便性は高く評価されている。「ターミナル駅の中心にあるので、車を使われない層の皆さんが来場しやすく県内でも入場者数は上位なんですよ」









エレベーターを降りると目の前には、片側壁面が全面ガラス張りとなっている円形のロビーが広がる。晴れた日には富士山が一望出来るという静岡のシネコンらしい特長のカフェは常連の女性グループが気兼ねなくお喋りに興じれるお気に入りのスペースだ。「若者向けのシネコンというのは窓がなく、照明を落とした暗いイメージがありますが、家族連れやお年寄りを念頭に置いて設計されているので、日中は外の陽射しを取り込む明るいロビーにしました」基調色も白と茶色に統一しており、外の景色を眺めながら待ち時間ゆったりと過ごせるのがイイ。


最近はコアなファン向けのアニメにも力を入れており、広域から多くのリピーターが訪れている。また、駅から近く、テレビ局が集中する中心部にあるため出演者による舞台挨拶が多いのも『シネシティ ザート』の名物。コチラでは通常のサービスデー以外に、水曜日はルルカ・メンバーズデーと設定されており1100円で観賞が可能だ。ルルカというのは静鉄が発行しているカードの名称で、静岡県民の生活拠点となっている静鉄ストアで昔から使われているため所有率は高く、メンズデーよりも動員が良いほど。「お客様の満足度を上げる事がリピートにつながり、映画を観た後は食事や買物をして帰る…という相乗効果が生まれると思います。お互い地元の企業同士なのでいつも協力いただいているんですよ」前述の舞台挨拶時には控室を用意してくれたり、配給会社から希望があればエレベーター内の装飾も無料で許可してくれるという。「“新静岡セノバ”も年々集客が上がっているそうで、映画館のおかげ…と評価してくれるのが嬉しいですね」

オープンして3年…作品だけではなく、いつでも笑いと感動を提供できる場にしていきたい…という思いでスタッフは接客を続けてきた。地域密着型のシネコンとして、お年寄りのお客様とは丁寧に対話をするようスタッフに徹底しているという。その地道な積み重ねから順調にお客様が増えている手応えを感じると池田氏は語る。「私たちは感動を共有できる場を提供できているという自負もあります。お客様もそれを求めて来ていただいているのかな…と思います。お客様からお叱りを受ける事もありますが、そのお客様からまた来るよ…と言っていただけると本当に嬉しいですね」(2014年9月取材)





(※1)七ぶらシネマ通り>>詳しくはコチラ  (※2)静岡オリオン座>>詳しくはコチラ

【座席】 『スクリーン1』318席/『スクリーン2』229席/『スクリーン3』84席/『スクリーン4』143席/スクリーン5』212席
     『スクリーン6』198席/『スクリーン7』192席/『スクリーン8』74席/『スクリーン9』160席/『スクリーン10』311席
【音響】 SRD-EX

【住所】静岡県静岡市葵区鷹匠1-1-1新静岡セノバ9F 【電話】054-253-1500(24時間・音声案内)

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