名古屋の中心部に位置する昭和の面影を今も残す街・伏見。昔と変わらない開業当時の商店街や繊維問屋街が存在し、地下鉄伏見駅の真上には明治28年より創業の御園座が街のシンボルとして風格ある佇まいを見せる。周辺をオフィス街に囲まれて商業と文化が融合して幅広い世代が訪れているこの街に、地上4階建て3スクリーンを有する単独館ミニシアター『伏見ミリオン座』が平成17年12月17日にオープンした。

名古屋市を拠点としてテレビ放送とインターネット事業を展開するスターキャット・ケーブルネットワーク株式会社のグループ会社スターキャット・エンタープライズが運営しており、市内のコミュニティチャンネル等で放送されている番組「映画屋TV」は、劇場内にあるTVスタジオ「伏見Million The Studio」で収録を行っている。元々、映画配給・興行会社ヘラルドグループの関連企業として設立され、現在はヘラルドグループから離れたが映画部門の一部を引き継ぎ映画館経営以外にも映画配給事業などを展開されている。


『伏見ミリオン座』がオープンするという一報は往年の映画ファンにとって大きな話題となった。というのも現在の場所から少し離れた場所にあった前身となる“ミリオン座”は戦後間もない昭和25年に設立され映画の黄金期を支えてきたが昭和58年に惜しまれつつ閉館。運営会社が異なるとはいえ同じ“ミリオン座”の看板を掲げた老舗劇場の復活は何よりの朗報だったに違いない。グランドオープンを前に一般無料開放を実施して新作や名作映画の予告編上映会を開催。また“ディア・ウェンディ”の試写会と映画評論家おすぎによるトークイベントを実施して、新しいミニシアターに期待を寄せるファンが多く訪れた。単独の映画館として3つのスクリーンがあるミニシアターは全国的にも珍しく、「アート系ミニシネコンを目指す」というのを映画館のコンセプトとして掲げ、今までに芸術性の高い作品を提供し続けてきた。1階に1スクリーン、3階に2スクリーンを有し、1階ロビーにはチケット窓口と売店の他に、ベーカリーカフェ“カフェミリオン”が併設されている。

「やはり地下鉄の駅からすぐという交通の便と、近くに御園座があるからでしょうか、年輩のお客様が多いですね。御園座で公演がある時は、舞台が跳ねるとカフェだけを利用されるお客様で混雑する事もあるのです」と語ってくれたのは劇場スタッフの太田謙氏。コチラのカフェでは、季節に合わせたオリジナルのドリンクを開発されたり、名古屋ではココだけという東ティモール産のフェアトレードコーヒーを提供されており、わざわざこのコーヒーを楽しみに訪れる方もいらっしゃるほど。壁面は全面ガラス張りのため日中は自然光が降り注ぎ、メイン通りから一本中に入った老舗の飲食店や呉服屋が立ち並ぶ御園通りに面しているので車の往来が少ないというロケーションも人気だ。一見すると映画館よりもカフェっぽい外観から、中に入られたお客様から「ミリオン座はどこですか?」と聞かれる事もしばしば。映画を身近に感じながら、ゆったりと過ごせる環境がお客様に好評で、それは書店にあるカフェが落ち着くように、文化施設に併設されている事でワンランク上の空間になっているようだ。「名古屋は喫茶店文化が発展している街ですからお客様も敏感なのです。そんなお客様に満足いただけるメニュー開発には気を抜けないですね」









またカフェに隣接してシェルフショップという小さな雑貨店のようなスペースがある。これは、棚の一画を希望者にレンタルして商品の販売を請け負うユニークなサービスを実施している。
昨年はフランス映画の“最強の二人”が人気を博し、正にコチラの客層にピッタリとハマった作品だったようだ。こうしたミニシアター系の小品からメジャー系の話題作まで幅広く取り上げているが、最近ではアニメにも力を入れており、ファンの間では、“このアニメなら『伏見ミリオン座』でやってくれるだろう”という認識が定着しているらしく中高生のリピーターも増えている。常連のお客様も多くシネクラブ会員の中には毎日のように来場されている方もいらっしゃるとか。「同じ映画が掛かっていても『伏見ミリオン座』で観たい…と思っていただけるような劇場を目指しています」
そのためには、作品を提供するだけに留まらない、映画館という施設を魅力的な空間にして行きたいと太田氏は語る。それが映画館という枠に捉われないカフェやシェルフショップという形で現れているのだ。映画の余韻に浸りながら上映後にカフェを利用するも良し、映画を身近に感じながらカフェだけを利用するも良し…





「映画館をひとつの括りにするのではなく、色々な利用目的で来場していただき、思い思いに楽しんでいただけたら嬉しいですね」ロビーがカフェになっているおかげで、スタッフとお客様のコミュニケーションが取りやすく、逆にお客様から声を掛けていただく事も多い。「上映終了後にカフェを利用れているお客様から“さっきの映画、良かったわよ”と映画の話しで盛り上がったりして…お客様とスタッフという立場を越えて同じ映画好きの方と同じ場所を共有できるのが楽しいですね」常連のお客様とは“いらっしゃいませ”ではなく、いつしか“こんにちは”と挨拶するようになったという太田氏は最後に映画館という空間についてこう続けた。「DVDと映画館は画面の大きさの違いだけではなく真っ暗闇の空間と映画館独特の匂いは自宅では感じられない特別な空間ですよね?どうしても自宅でが身の回りの生活が目に入ってしまう…。足を運んで敢えて自分の生活環境から切り離す…というのが映画館で映画を観る良さだと思います」(取材:2012年9月)


【座席】 『ミリオン1』169席/『ミリオン2』105席/『ミリオン3』67席
【音響】 『ミリオン1』ミリオン・ナチュラル・サウンド・システム/『ミリオン2・3』SRD-EX

【住所】愛知県名古屋市中区栄1丁目4番16号 【電話】052-212-2437


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