名古屋駅の太閤通口は駅の反対側と異なり、昔ながらの青物問屋が軒を連ね、毎朝活気に溢れている。そんな路地に入る一角にミニシアター『シネマスコーレ』がある。1983年2月19日に映画監督の若松孝二氏が“若い人が作った映画を上映できる場を提供しよう”という思いで立ち上げた映画館だ。館名にある“スコーレ”とはラテン語で学校という意味で、公園に集まって芸術や文化の話をしていたのが学校の起源ということから、ここを映画好きの人々が集う場所にしたいという若松氏の思いが表れている。そんな若松氏の趣旨に賛同されて、是非コチラで映画を上映してほしいという監督も少なくない。「小さな劇場ですが舞台挨拶やイベントが多いのです」と語る劇場スタッフの柴田寛子さん。取材当日も“変身”に出演している蒼井優の舞台挨拶があり、徹夜組が出ていた。




こうした上映作品の選定も支配人とスタッフが全員で行っているという。「作品選びのポイントは…正直、自分が好きになれる作品を選んでいます。それだけに思い入れも大きく、お客様が自分の選んだ作品を観て満足して帰られる時はうれしさも一際大きいですね」「映画を作る事よりも、難しいのは映画を見せる事」と若松氏は指摘している。だからこそコチラではお客様が選んで観に来てくれるような作品選びを心がけており、同時にお客様の目を肥やしていける役割を劇場が担っているのだ。

まさに上映する側も鑑賞する側も、そして製作する側もレベルアップする場となる…まさしく“学校”という館名がピッタリと当てはまっている。「私は入社して5年目ですが改めて思ったのは、ココは映画が好きな人々が集う場所なのだという事です。自分の好きな事を話す時は皆、情熱的で楽しそうに目を輝かせて…。集う場所というのは、出会いの場所でもあるわけです。映画と出会って、人と出会って…。そうして今までの自分の世界からもっと広がりが生まれて来るのだと思います」という柴田さんの言葉通り、コチラではスタッフが常に観客の反応や意見を取り入れながら一緒に映画館を育てて行こうとされている。上映作品はモーニングショー、メイン、レイトショーと3部構成になっており、チケットは整理券となっているため中には朝から夜の分までチケットを購入されてハシゴされるファンも多い。

ロビーは細長い通路があるだけなのだが、そこには来場された監督や出演者、ゲストたちの色紙で壁一面埋め尽くされており、さらに所狭しとチラシや情報誌、関連グッズが置かれている。無駄な物を一切省いて映画を快適に観るための空間を第一に考えられた劇場だ。そして、一昨年20周年を迎えた際に場内をリニューアルし、フラットだった座席に段差を付けた事で観やすくなったと好評を得ている。

サービスとして会員制を導入しており、会費1500円で入会すると半年間有効の会員カードと招待券が進呈される。実は招待券で元は取れているのだが、会員割引で鑑賞できる他、会員だけの特典として映画サロンに参加できる。ココで同じ映画ファン同士交流の輪を広げてもらいたい。他にもサービスカードを発行しており5回鑑賞すると1本無料になるというリピーターには嬉しいサービスだ。









コチラのホームページで若松氏が語っている『シネマスコーレ』のモットー。「映画を上映する場を作ったのだから、マニアックであっても観た人が感動するとか、泣くとか笑うとか、何かを感じて帰ってくれるようなものを提供したい」という言葉の中に映画を育てていくのは観客でもあるのだ…ただ与えられた物を観るのではなく自分たちの意見を映画館に提示する事も観客(観る側)の義務なのだ…と考えさせられた。(取材:2005年12月)

【座席】51席 【音響】DS

【住所】愛知県名古屋市中村区椿町8-12 アートビル1階 
【電話】052(452)6036

  
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