昼は年輩のご婦人方の買い物客、夜はネオンが瞬く銀座四丁目付近。老舗デパート三越と時計台で有名な銀座和光が建ち並ぶ銀座の歴史ある町角に、昭和30年代、古いハリウッド映画専門の名画座『銀座文化劇場1・2』がオープンする。1987年、配給会社の“ヘラルド・エース”と“フジテレビ”そして劇場を運営していた“籏興行”3社の合同出資から『シネスイッチ銀座』はスタートした。しばらく2つの館名だったが97年に『シネスイッチ銀座1・2』の2館体制でリニューアルオープン。「女性に優しい映画館というのがウチのコンセプトで今でもその姿勢は変っていません」と、語ってくれたのは支配人の北村外男氏。「多分、一番最初にレディース・デイを設けたのはウチだと思いますよ」客層は確かに女性が多いものの渋谷地区のミニシアターと違う所は年輩の方が多いところだ。


「それは銀座という街の特性ですね」と支配人は続ける。「銀座の街に来る人々は年齢層も幅広い、言い替えれば誰でも来易い落ち着ける場所なんですよ。だから上映作品も渋谷でかかっている作品の様な個性的なモノよりも、誰もが親しめる作品が中心になりますね」たしかに、上映作品はソフトなタッチの作品が多く歴代ヒット作でも明らかな様に“ニュー・シネマ・パラダイス”(この作品の入場者記録は未だ破られていない)や“ライフ・イズ・ビューティフル”といった子供から大人まで楽しめる作品なのだ。特に、“ライフ・イズ・ビューティフル”は、常連のお客様から、とても良かった…とお褒めの言葉をいただいたのが今でも忘れられないという。

今後の作品選びについて北村氏は次のように語る。「基本的にはクオリティの高い映画を追求していくつもりです。せっかく2スクリーンあるのですから同じような作品を掛けるのは避けて、幅広い年代に発見してもらえるセレクトをしたいですね。お客様が満足してまた来ようと思ってくれれば、それで良いんですよ」また、リピータのファンが多く“銀座文化劇場”時代から知っている人はココでハリウッド・クラシックをもう一度観たい!と要望されている方も多いという。

キャッチフレーズは「女性に優しい映画館」を唱えているだけあって客層の8割以上を女性客が占めている。金曜日のレディースデー(週末にゆっくりと映画を観てもらいたいから、コチラのレディースデーは水曜日ではない)には、仕事帰りのOLが多く訪れるのが特長だ。「建物が古いのでハードの面ではシネコンに劣りますが、その分ゆったりとくつろいでいただけるような環境作りを心がけています」だからロビーで待ち時間を過ごされるお客様のために、余計なBGMは流していないという配慮が嬉しい。また昔ながらの映画館のシステムをそのまま活かして、場内での飲食は可能と…いうのも近頃のミニシアターでは珍しい。


「映画館というのは唯一、自分の時間と空間を持てる場所だと思います。自分の選んだ映画を観て素晴しい時間を持てたとしたら、お金では買えない贅沢な時間ですよね」と語る通り、場内やロビーには心地よく過ごせるために最善の心配りをはらっている。地下に降りる『シネスイッチ1』は静かな夜の森をイメージしたブラウンで統一し、壁面にはイタリア製の大理石を利用しており細部に渡ってこだわりと歴史の重みを感じさせてくれる作りになっている。設立当時は大理石の壁にアンモナイトの化石が埋め込まれた豪華な内装が話題となり、パンフレットの表紙をペーター佐藤氏によるオリジナルのイラストで構成するなど、ハイセンスな銀座マダムのハートをしっかりとキャッチしていた。また、場内も1階席と2階席に分かれているのもミニシアターとしては珍しい構造…自分の好みの場所から映画鑑賞を楽しめる。1階に降りる階段(写真右)には上映している作品にちなんだ映画のポスターやスチールなどを展示(これも『銀座文化』の馴染み?)してる。

エレベーターで3階に上がると、場内が深い海をイメージさせるダークブルーの『シネスイッチ2』が出迎えてくれる。ゆとりのあるロビーの奥に小さな階段があるのだが、“階段画廊”と銘打ったこちらの通路には上映作品にちなんだ絵画やスチールなどを展示(ただし不定期なのでマメにチェック)。名画座時代からの歴史と風格を持ち続ける劇場…。固定ファンの「次は何を?」の期待に応えて今日も良質の作品を送り出している。(取材:2001年1月)


【座席】 『シネスイッチ1』273席/『シネスイッチ2』182席 
【音響】 『シネスイッチ1』DTS・SRD/『シネスイッチ2』SRD

【住所】東京都中央区銀座4-4-5 【電話】03-3561-0707

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