映画の街と言えば、銀座・日比谷・有楽町が上げられるが、そんな有楽町の玄関口にたたずむミニシアターがある。それが『シネ・ラ・セット』だ。1957年に“有楽シネマ”という劇場名で東宝系のロードショウ専門館としてスタートし、1995年にピンク映画専門の“シネマ有楽町”として姿を変え、そして翌1996年に日本映画“ビリケン”をこけら落としにミニシアターとして現在の形に生まれ変わった。「正直、オープン当初は満員御礼という華々しいスタートではなかったですね」と、劇場担当としてオープン当時から関わっている内屋敷保氏は振り返る。「位置的に有楽町駅前という便利な場所にあるのですが、逆に近すぎてお客様から場所がわからないという問い合わせが多かったです。それに映画館と言えばマリオンという認識が強いために、つい見過ごしてしまうのでしょうね」それでも、お客様の数…特にリピーターの数は確実に増え続けている。


客層は渋谷に比べると年齢も高くなり、ご婦人方がグループで観に来ているのが目立つ。また全体の6割強が女性というのも、この劇場が女性向けの優しい雰囲気を持っているからかも知れない。上映作品はシネカノン直営館という事もあってヨーロッパ、アジア映画を中心に番組編成されている。「試行錯誤を重ねながら、ジャンル分けすると範囲は広くなりますが、これを劇場のカラーとしています」たしかに娯楽性が強い作品もあれば重厚な人間ドラマもあり、まさしく劇場名の由来となっている映画理論の先駆者カニュドの言葉から取った「映画は建築・音楽・舞踏・彫刻・絵画・文学という六つの芸術をひとつにまとめる芸術…いわゆる第七芸術である」そのものを感じさせる。

“ブラス!”の大ヒットが記憶に残るが、ヨーロッパ映画以外にも韓国映画の“シュリ”を筆頭に韓国映画にも力を入れている。近年ではコリアン・シネマ・ルネサンス2001と銘打って、“太白山脈”や“スプリング・イン・ホームタウン”といった韓国の新しい才能に目を向けている。

フィルムの形状をした扉の取っ手が印象的な入り口を通り、赤いカーペットの階段を上がって行くと目の前にチケット売り場と受け付けが現れる。まるで鰻の寝床のような細長いロビーはいたってシンプル。丸イスが数脚と向かいの壁に備え付けられたカウンターには所狭しと近日公開予定のチラシが置かれている。何よりウレシイのは、一度チケットを提示すると引き替えに整理券を渡してくれる事だ。一度、受け付けを済ましてしまえば後は入場までの間、銀座をブラブラしたりショッピングに興じると、ちょっと大人になった気になるかも知れない。座席は実に座りやすく深々とシートに腰掛けると自然と身体になじんでくる。シートはフランスのキネット社製で座席の間隔も充分ゆとりある設計をしており、スクリーンの位置が低いのに前の人の頭が気にならないのがポイントである。


「ミニシアターの敷居の高さを取り払って、いつでも気軽に立ち寄れる劇場にしたいんです」と言われる通り、こちらの劇場では場内の飲食に関しては厳しく制限していない。「映画が始まってしまえば、映画館はお客様の物なんですよね。私たちは出来るだけ口出ししないんです。場内でのマナーについてはお客様=映画ファンの良識を信じたいので、絶対禁止にはしていません。周りの方に迷惑を掛けない様に飲食される分には目をつぶろうと思っているんです」と、熱く語ってくれた内屋敷氏。たしかに映画ファンである以上、どういった事が迷惑なのか?を心しておかないと、せっかく信頼してくれている劇場もいずれ『注文の多い映画館』にせざるを得なくなってしまう事を胆に命じておかなくてはならないだろう。「うちでしか味わえない映画や雰囲気があります。一番心がけていることは、いかに快適に映画をご覧頂ける環境を提供できるかって事です」最高の環境とサービスを提供してくれる劇場と、そういった場所を作り上げて行くのは映画ファン自身なのかも知れない。(取材:2000年10月)

【座席】 159席 【音響】DS・SR 【住所】東京都千代田区有楽町2-8-6 
※2004年2月27日を持ちまして閉館いたしました。

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