ミニシアターが数多く存在する街、渋谷。文化村通りを歩いて5〜6分お洒落なオープンカフェが立ち並ぶ一画に『シネ・アミューズ イースト&ウエスト』がある。劇場名の通りイースト=アジア映画とウエスト=西洋映画をバランス良く上映しており、配給会社シネカノンと製作などを手がけているアミューズとの共同出資で誕生した劇場である。「もともとは、日本映画を含む良質のアジア映画を上映したいというのが基本にあったんで」と語ってくれたのは劇場担当の佐藤順子さん。「西洋と東洋の映画をバランス良く提供するというのがあるのですが、必ずしもその図式には固執していません」こちらの劇場は『イースト』と『ウエスト』と二つの劇場で構成されているものの、あえてジャンル分けにはこだわらず自由な感覚で映画をかけている様に思われる。


ただ単にニュープリント上映するのではなく、当時では完全な形での上映が不可能だったものを、今なら無修正完全版という形でリバイバル上映できるのでは?と考えたという。また、フットワークの軽さを劇場のカラーにしたいですね…という佐藤さんはアジア、アメリカ、ヨーロッパ各国のいわゆる危ない映画をセレクトしている。1995年12月9日に“幻の光”と“南京の基督”でオープンして今年で6年目を向かえ、昨年の12月には5周年記念作品として“愛のコリーダ2000(無修正板)”を上映したばかり。また史上最多のオナラ登場回数がウリの“サウスパーク”がヒットするなど遊び心満載のラインアップだ。

「むしろ間口を広げる事によって色々なタイプの映画を若い方が観ることが出来る状況を作っていきたいですね。」上映作品の中でもリバイバル作品が多く、今の若い人に昔の映画を映画館で観る機会を提供したいという思いが言葉通り反映されている。「特にこだわっているワケではないのですが…今、名画座が少なくなっているから、以前やった“シャンドライの恋”を観にきた若い人が“ラストタンゴ・イン・パリ”を映画館で観るた事が無いって言ってたんです」ちゃんと時代というものを反映させている過去の名作を観ることが少なくなってきていると、現場にいて感じたという。


また、舞台挨拶が多い劇場なだけに前日からの徹夜組のお客様の対応も大変だという。「それでも身近に出演者や監督、スタッフの話しを聞く事が出来るチャンスを出来るだけ提供していきたいと思っています」作り手と観客の距離が近いというのも舞台挨拶の良さであり、普段聞く事が出来ない話しも飛び出したり…まさにファンにとってはありがたい企画である。場内の椅子はフランスのキネット社製を採用。座った感じが実にシックリとくる座り心地抜群のシートだ。劇場のウリとしてもうひとつ、会員割引というのがある。3000円の入会金で無料の招待券2枚と1年間有効の会員カードがもらえる。このカードを提示すれば、1年間は1200円で映画を観ることが出来るのだ。実際、当日券で1800円払うことを考えたらどちらがお得か理解できるだろう。「入場料を安くすることで足を運ぶ機会が増えてくれればこういった企画をもっと考えていきたいと思っています」という言葉通り今では会員も増え続けリピーターの数も確実に増え来ているという。

明るく開放的なロビーはオープンスペースにしているので出入りは自由。映画を観なくても、チラシを貰っていったりショップで販売しているグッズを購入するだけでもOK。隣接しているカフェ『Bis』で、入場開始までお茶をするのも良し、何しろ入場券さえ購入してしまえば整理番号順の入場なのだから開場までは時間を有効に活用できるのだ。オススメは3日間煮込んだ手作りカレー。勿論、映画を観なくても利用可能だ。「忙しい方こそ映画を観ていただきたい…余裕がない時こそ癒してくれる力が映画にあると思います。だからブラリと気軽に立ち寄れる空間を作るよう心がけているんです」その言葉通り、理想的な空間がここにある。(取材:2000年10月)

【座席】 『イースト』132席/『ウエスト』129席 
【音響】 DS・SR

【住所】東京都渋谷区道玄坂2-23-12フォンティスビル4階
※2009年10月31日を持ちまして閉館いたしました。


  本ホームページに掲載されている写真・内容の無断転用はお断りいたします。(C)Minatomachi Cinema Street