名画座…という定義は、どこで線引きされているのだろうか?度々、その墨分けで悩まされてしまう。そもそも名画座というものは昔の映画を上映する劇場であって、それでは昔というのはどこからを指すのか?という事が問題になってくる。厳密に言えば、現在日本にある名画座は少なくとも2つのパターンに大きく分けられる。ロードショウ公開を終えた映画を二本立て(もしくは一本)で上映する映画館と、それ以前の上映可能な作品を二本立て(もしくは一本…三本立て)で上映している映画館である。前者は一昔前、日本がプログラムピクチャーを量産していた時代において所謂ムーヴオーバー館や二番館、三番館と称されていた映画館である。そのため、観客もロードショウ作品を見逃した場合は前者の名画座へ流れ、逆にビデオやDVDでしか観る事が困難な(いや、それすらも無理な)昔の作品を求めるファンは後者の名画座へやってくる。いずれにしても、DVDの普及率が上がってきた現在、名画座へ映画を観にくる観客は20年前に比べると圧倒的に少なくなっているのは事実だ。
そんな時代…新しい名画座が、若者が集まるミニシアター激戦区である渋谷に2006年1月14日“北野武/ビートたけしレトロスペクティブ”の特集上映を引っさげて、オープンした。映画関係の契約問題等の弁護士として活躍されている内藤篤氏が館主を務める『シネマヴェーラ渋谷』である。前述のように映画館で映画を観る事をしなくなった今の若い世代に「真っ暗な劇場の大きなスクリーンで大勢の観客と感動を共有し、映画館で映画を観るという本来の楽しみを知ってもらいたい」という気持ちから名画座を立ち上げたという内藤氏。10年前から映画館の無い地域で映画を上映する支援を行うコミュニティシネマ支援センターの世話人を務めていた内藤氏は次第に、自ら映画館を立ち上たいと考えるようになり、遂には夢を実現させてしまったと、いうわけだ。




オープンして半年が過ぎ、ユニークな特集は数多くの映画ファンを魅了して止まない。オープン第二弾としてマキノ雅弘監督による“次郎長三國志 全13作”を一挙上映したり、女優“薬師丸ひろ子”に焦点を当て、次いで名匠“加藤泰”特集を行ったかと思えば、最近では東映ピンキーバイオレンスVS日活ロマンポルノといった型破りな特集を組む等、毎回趣向を凝らしたプログラムを内藤氏自ら組まれている。こうした劇場で観られる機会が少ない作品を観る事が出来るのもコチラの劇場のウリである。ロードショウ公開以来ずっと映画会社の倉庫に眠っている作品に日の目を見るチャンスを与えてくれるのが、こうした名画座の良さだ。“次郎長三國志”のように13作品中7作品をニュープリントで上映を敢行する等、日本映画史を知る上でも貴重な場所でもある。メインは日本映画だが、海外の作品も特集上映を行っており、オープン第四弾では“チャウ・シンチー監督”特集を組む等、滅多に観る事が出来ない作品編成を第一に考えている。





エレベーターで4階に降りると日中は階段上にあるガラスの天面より自然光が注がれ、夜は淡い間接照明が落ち着いた雰囲気を醸し出してくれる。コンクリートの壁面に上映作品の懐かしいポスターが貼られ休憩時間は昭和におけるポスターアートを楽しみながらゆっくりと過ごす事が出来る。渋谷という場所柄か、名画座に慣れ親しまれている年配層から若い世代に至るまで幅広い年齢層に支持されているのもコチラの特徴。むしろ若い世代の客層が、名画座の形態に慣れていないせいか“二本立てを続けて観られるのか?”といった質問をされる現象が起きているという。勿論、特別興行では無い限り入れ替えなしの二本立て興行が基本となっており、年会費1,200円で会員(ユーロスペースと共通)になれば一般1,400円が1,000円で鑑賞でき、さらにポイント機能によって8回の来場で1回無料となる。場内は前列の頭が邪魔する事無く鑑賞できるスタジアム形式となっており、フランス・キネット社製の座席が体にフィットして心地よく、お尻が痛いのを我慢して二本立てを観賞する…なんていうことは今となっては懐かしい想い出だ。勿論、音響にも気を配っておりスピーカーとスクリーンが分離設置されているおかげでクリアなサウンドが堪能できる。最高の環境でお弁当を広げながら懐かしい名画を鑑賞する…我々日本人が忘れかけていた映画館の姿がココにあった。
(取材:2006年4月)


【座席】 142席 【音響】 DTS・DLP上映可能

【住所】東京都渋谷区円山町1-5 【電話】03-3461-7703

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