横浜駅西口─ターミナル駅としては関東の中でも最大規模を誇るこの場所…昼は若いティーンエイジャーがグループで集まり、夜にはサラリーマンたちがネオン瞬く歓楽街で盛り上がる。歌舞伎町とも渋谷センター街とも違った独特の“横浜”という文化を持つ街だ。雑多でありながら一本芯が貫かれている西口に『ヨコハマ・シネマ・ソサエティ』は在る。
以前は“横浜西口名画座”という館名で親しまれてきたコチラは今年のゴールデンウィークに場内をリニューアル、それを機に昭和30年の設立時から続いてきた館名を初めて変えての再スタートを切った。「本当は劇場の名前を変えるというのは良くない事なんだけどなぁ」と経営者の
福寿祁久雄氏はこう続ける。


「時代の流れだろうね。名画座という名前が古くさいものになってきている。昔はごく当り前の様に使っていたのに、今では名画座っていう名前の劇場はどんどん姿を消してしまっているでしょう…。」それでも映画ファンにとっては館名は変わっても映画を観るならココ!と決めている人も少なくない。コチラの劇場は当初、洋画の二番館としてスタートして二本立興行の名画座スタイルで始まった。その後、にっかつロマンポルノが全盛期を迎え、日活側より「横浜でロマンポルノの封切館を2館にしたい」という要望があり、当時あった伊勢佐木町の“日活シネマ”(後の横浜オスカー)と“横浜西口名画座”の両方で日活ロマンポルノを封切を行っていた。その体制が13年間続いた後、ロマンポルノが下火となり6年ほど松竹の邦画系封切館となるのだが「正直言って、日活がロマンポルノをやめてからが苦労したんですよね」と当時を振り返る。

「その間にも色々な上映体制を行ったりブランクがあるんだけれども、今度は松竹が製作をやめちゃったんですよね。…でその後は色んな映画を色んな風に映してもなかなか定番というか性格が出ないんですよ。そんな上手くいかなかったという時代があったりしましたね」そんな試行錯誤を繰り返しながらもマイナーな洋画系作品のレイトショウ上映を行ったり、有名なのはハナ肇が急逝した時は封切上映を中止してまで追悼番組を組まれるなど映画への想いが強いプログラムを実施している。「スタイルというか色を今の時代は逆に決めないほうが良いということですよ。理想的な映画館というのは何をやってもお客さんが来る映画館という事なんだから…。大切なのは作品・サービスなど全てですよ。それがクリアされて、水準以上の作品を掛けていれば洋画であろうと邦画であろうと満足されている映画館だと言われるだろうね」と福寿氏は語る。その言葉通り、夏休みや春休みには子供向けのアニメを上映しているかと思えばミニシアター系の単館ロードショウを行ったり、前身である名画座として二本立興行も行ったりと上映形態は多岐に渡っている。ビルの地下に降りて行くと薄暗い照明に照らされたチケット窓口とエントランスが現われる。いたってシンプルな入口だが奥行きのある縦長の場内は思いのほか広い事に驚かされるだろう。


休憩所とお手洗いは場内に入ってから向かって左手の扉から行くことが出来る。コチラの劇場のユニークな点は場内に売店があることだ。同じビルの2階にある喫茶店“エリーゼ”の作りたてのサンドイッチやコーヒー、キンキンに冷えたビールを購入する事が出来るのがウレシイ。今回のリニューアルで座席を新しく入れ替えて座り心地の良い深々と腰掛けられるシートを採用しており以前と比べて快適さはグレードアップしている。「今の時代、もうお客さんのほうが変わったんだよね。なぜ、名画座のスタイルが成り立たないんだろうか?我々が逆に聞きたいですよ。別に二本立だからって二本観る必要がないんですよ。だって本来1本の値段よりも安く2本上映しているんだから…でもこの名画座スタイルが何で受け入れられないのか?せっかくそういった劇場があるのにそれが失われてしまうと、もう全館ロードショウ劇場になってしまいますよ」と日本人の映画離れに対して語る福寿氏。特に30代から40代といった働き盛りの世代が映画を観なくなっているという。観たい映画よりも映画を映画館で観る価値というものを再認識する必要があるのではないだろうか。そう、映画館という空間は決して家庭のホームシアターでは味わうことが出来ないモノがあるのだから。(取材:2002年9月)

【座席】 91席 【音響】  DS 

【住所】神奈川県横浜市西区南幸1-10-18 中山ビル地下1階  ※2004年12月27日を持ちまして閉館いたしました。 


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