神戸という街は戦前、新開地を中心に栄えていた。西からは山陽電車が兵庫駅まで延びており、東からは阪神電車が元町駅まで、阪急電車が三宮駅まで、国鉄が神戸駅、神戸電鉄が湊川駅まで…と、新開地を中心に路線が集まっていたのだ。明治34年、それまで神戸を東と西に分断していた湊川を埋め立てた場所に出来た新開地には当然、そういった地の利から自然と人が集まり、兵庫県随一の繁華街となる。こうした地政学上の必然性から発達した新開地は、昭和30年代くらいまで芝居小屋や映画館が多数軒を連ね大いに賑わいを見せた。かつては「西の新開地、東の浅草」と並び称されるほど賑わっていた新開地も高度経済成長期を過ぎた昭和40年代になると、日雇い労働者が路上で酒盛りをする姿が日常的に見られる、ちょっと危ない街として女性や子供に敬遠されるようになってしまう。


そこに追い打ちをかけるように阪急阪神山陽電車が直通運転を始め、新開地駅は単なる通過駅となってしまい、ますます寂れていく一方となってしまった。それでも神戸の中で立地的に良い場所にある新開地には現在、新しい風が吹き始めている。神戸市は、かつての新開地の輝きを取り戻したい…という思いで、文化・芸術の発信拠点となるアートビレッジ構想という計画を打ち出した。平成8年に『神戸アートビレッジセンター』がオープンして以来、演劇・美術・映像・音楽などに関わるアーティストたちの創作の拠点として、活動の手助けをしている。地下1階の視聴覚ホールでは、不定期ながらそれまで新開地の映画館では掛からなかった作品を積極的に取り上げ、幅広い年齢層から支持され、着実にリピーターを増やしている。

『神戸アートビレッジセンター』が映画の興行を始めたのは平成9年から。「結果的には映画を上映する事で、より多くの方々の目に触れやすくなって、施設の認知度も上がりました」と映画の効果を改めて実感している。「現在、映画興行の厳しい中で、大きく落ち込んでいるわけではなく、私たちが当初から掲げるコンセプトも明確に打ち出せています。だからこそ、お客様も理解して、何度も足を再び運んでもらえているのではないか?と思うのです」と語ってくれたのは、指定管理者として運営を担っている大阪ガスビジネスクリエイト(株)副館長を務められている福西達氏だ。「施設のコンセプトは若手芸術家の育成を図る場ですが、一番重要なのは新開地を芸術の村として構築し当センターを中心に活性化を図る事です。

どうしても新開地という街のイメージが一杯飲み屋や木賃宿のある危ない街…というのがあると思うのです。このイメージを払拭することが一番の課題で、そのためには昔と変わった新開地に足を運んで見てもらいたいのです」という福西氏の言葉通り、駅から商店街を歩いていると、整理された道路と街路樹、通りに面した店が昭和を彷彿とさせるレトロな雰囲気を醸し出しており、日雇い労働者の街として近づきがたかった昔のイメージしか持っていない人が来たら、通りを歩く若者たちの姿にきっとビックリするはず。

正面玄関から入り地下1階へ降りると、129平方メートルほどのシアターがあり、フィルム映写機とデジタルシステムが完備されている。最近では、映画の上映だけではなく、もっと映画の背景を伝えて興味を持ってもらいたい…との思いから“えいがのみかた”という事業を定期的に開催している。ゲストをお呼びして映画にまつわる話をして頂いたり、時はセンターから飛び出して、塩屋にある洋館で映画音楽のコンサートを開催。いつもの倍以上の参加者が集まったそうだ。








また『神戸アートビレッジセンター』で人気を得ているのが意外な事に『爆音映画』だ。一昨年のゴールデンウィークに"AKIRA"の爆音上映を行ったところ、期待を超える反響があったという。「劇場が地下にあるおかげで爆音がやりやすい環境にあるのです」翌年も楽しみにしてくれる若いお客様も多く、新しい取り組みとして手応えを感じているという。

現在『KAVC(カブック)倶楽部』という会員制度を設け、映画だけではなく施設全体の催し物案内をしており、着実に会員数を増やしている。更に、今では新開地にある3つ映画館で合同のチラシを作成するなど、映画で新開地を盛り上げようと試みている。新開地の商店街では"B面の神戸"というキャッチフレーズを付けて盛り上げようとしているが、もしかすると再び映画をキッカケに芸術の街として"両A面の神戸"となる日も夢ではないかも知れない。(2013年8月取材)


【座席】 94席

【住所】兵庫県神戸市兵庫区新開地5-3-14 【電話】078-512-5500

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