大宮からJR東北本線の快速で40分あまり。栃木県・小山駅に直結した商業施設“小山ロブレ”内に、シネマコンプレックス『シネマロブレ5』がある。前身は戦後間もなく現在の場所に設立された映画館“銀星座”(銀星会館)を現代表の柳勲氏が昭和29年に買い取ったところから始まる。元々、サイダー工場を経営していた柳氏だったが、戦後アメリカからコカコーラが入ってくるという事で、娯楽産業に参入。小山駅前にあった銀星会館を購入して映画館“銀星座”の経営を始めたのが長い映画人生のスタートとなった。


東映と日活を中心に上映して数多くの映画スターが訪れ、戦後から高度経済成長期を経て映画が娯楽の中心であった時代を支え続け、現在も変わらず県外からも多くの映画ファンが訪れている老舗映画館である。現在のスタイルとなったのは平成6年に行われた小山駅前の再開発に伴い、銀星会館の敷地は“小山ロブレ”に変わり、地権者である“銀星会館”は、そのまま映画館を継続。5スクリーンを有するシネマコンプレックスとして再スタートを切る。「まだ、その当時はシネコンの雛型が無かったものですから既存の映画館が5つ同じビルのフロアに集まったという設計なんです。だから普通のシネコンだったらトイレはどこか1箇所に固まっているはずですがウチは各スクリーンごとにトイレがあるんですよ」と語ってくれたのは支配人の仁木健一氏。





シネコンスタイルとなって従来の映画館には無かった明るい雰囲気に若いカップルが増え始め、小山市を中心とした近隣の映画人口は『シネマロブレ5』に集中したという。それまで宇都宮から東京に流れていた人も話題作は『シネマロブレ5』で観るというのが一般的となっていた。(“踊る大捜査線レインボーブリッジを封鎖せよ!”で1日2000人の動員があった)また、駅ビルという立地条件の強みから車を運転されない年代のお客様に重宝されており、番組編成も近年ではアート志向の強い単館系作品がメイン。小山遊園地跡に出来た同社経営のシネマコンプレックス“小山シネマハーヴェスト”と連動した番組編成を考えている。ロブレ前からハーヴェストウォーク行きの無料送迎バスが定期的に出ているのでコアな映画ファンは上手く活用して映画のハシゴをされているようだ。ジム・キャリー主演の“マスク”がデートムービーとしてヒットした時、これからはこういった映画が受ける時代になるのだ…と興行形態の在り方が既存の単独館から作品を選べる複数のスクリーンへの変化を予感したという仁木氏。

当時、シネコンが日本で普及しておらず、ひとつの劇場に必ずトイレを設置する…という規制がそのまま反映されてしまった。「記録上ではワーナーさんがシネコン第1号となっていますが、ウチは工事が遅れてオープンが僅差で抜かれてしまったのです。だから本当ならばウチがシネコン第1号だったんですけどね。」と笑う。まだお客様がシネコンの作りに慣れていなかった時代、1階のチケット窓口(現在は閉鎖中)でチケット購入してから5つの劇場でやっている作品が違うとは思わず、上映されてから違う劇場に入っていた事に気づいたお客様が慌てて出て来る光景も当時は見られたそうだ。受付と売店が一極集中の機能性を果たしたアイランド型として劇場の中央に配置されているのも当時は珍しいデザイン。ロビーには柳社長が趣味で集めた高価な骨董品や美術品が展示され、さながら美術館のようだ。年輩のお客様の中には上映までの待ち時間に美術品を鑑賞するのを楽しみにされる方も多い。最初は使い勝手に戸惑われていたお客様も次第に全体が見渡せるフラットなロビーに利便性を感じ始めるようになる。








「レンタルビデオやインターネットが無かった昔は、観たい映画を情報誌で調べて遠くの街まで行ったりして…映画を観るという行為に対する情熱のバロメーターが今とは全然違いましたよね?不便だったからこそ観たいという欲求が強い中で観た映画って特別なものだった気がします」気軽に映画館に行けるようになった分、一本の映画に対する思い入れが希薄になっているのでは?と手軽さのデメリットを指摘する仁木氏。「あまり昔は良かったという話をしても仕方ないですが、今の若い人たちには広い空間で映画をもっと観てもらいたい。映画を集中して観ているのだけど、同じ空気の中で同じ映画を見ず知らずの他人と観る醍醐味を味わってもらいたいですね。最近は何をやるにも慌ただしく過ごしていますよね。食事にしても娯楽にしてもゆっくり楽しむ事を忘れている。昔は食事をするにしても周りの光景をちゃんと見ていたと思うんです」全てが合理化という名の元に自動化された昨今…『シネマロブレ5』は、チケットの対面販売にこだわり、お客様との対話を大事にしているのだ。(2012年10月取材)

【座席】 『スクリーン1』120席/『『スクリーン2』120席/『スクリーン3』171席/スクリーン4』131席/『スクリーン5』99席
【音響】 SRD(スクリーン3・4のみ)SRD・SDDS・DTS・SRD-EX

【住所】栃木県小山市中央町3-7-1 【電話】0285-21-3222 0285-21-0050(テープによる案内)

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