昭和30年代の高度経済成長期に九州最大の規模を誇っていた三池炭鉱を有する炭鉱の街として栄えた大牟田市。福岡県と熊本県の県境に位置するこの街は今では博多のベッドタウンとして新しい街が形成されてきている。炭鉱が閉鎖されてしばらく映画館が無かったこの地に、シネマコンプレックス『大牟田セントラルシネマ』が2011年3月18日オープンした。有明海に面した広大な敷地を有するイオンモールは元々、石炭のボタ置き場だったそうで、建設が着工する直前まで敷地のアチコチに石炭が落ちていたという。「バタバタした中でのオープンでした」と支配人の岩浅大司氏は当時を振り返る。

「ウチは元々宮崎県の街なかで映画館をやっていた会社が母体で、シネコンとしては2軒目(1軒目は『宮崎セントラルシネマ』)なのですが、正直言ってそれほどノウハウも無かったため、キチンとした告知も出来ず、劇場の案内パンフも急いで印刷会社を探して作った感じで…(笑)最初の土日はスタッフも慣れていないかったせいで売店とチケット窓口が混雑してお客様にご迷惑をかけてしまいました」

最初、イオンモール側から提示された図面は、従来のシネコンとあまり変わらず、そこから少しずつ手を加えていった。中でも一番こだわったのはシネコンにありがちな暗い照明のロビーというイメージからの脱却だった。「ウチのロビーはやけに明るいのですが(笑)やはり女性のお客様が多いという事で、劇場設計のコンセプトもフェミニンな優しい雰囲気を…と、設計者の方に要望しました」天井の高い開放的なロビーはシネコンでは珍しいほど明るく、フロアのアチコチに花をモチーフとしたデザインが施されている。木目調のナチュラルな風合いが見た目にも温かいロビーの床からコリドーを通って場内に入るまでは花模様のカーペットに変わり各スクリーンの入り口には花弁が敷き詰められたパネルがハメ込まれているのが印象的だ。

場内は全席ゆとりのあるプレミアシートで肘掛け(コチラも木目調という徹底した統一感)が全て独立しているのが嬉しい。また座席番号を背もたれに大きく表記しているのが年輩のお客様に対する気配りが現れている。「ウチは7スクリーンですが座席にゆとりを持たせているので敷地面積で換算すると通常の映画館の9スクリーン分に相当しており、一番小さい劇場でもスクリーンはかなり大きく感じるはずですよ」コトブキ社製のシートは座り心地も抜群で低反発のクッションが体を優しく支えてくれるのが特長だ。









「土日で、例えば3000人の集客が現在あったとしても、これが4000人を動員するというのは大牟田の市場を考えると難しい。それよりもむしろ、平日400人のところを450人にする方が大切だと思います。そこで重要なのは接客…同じ映画を他所の劇場でやっていた場合、気持ちよく接してくれる劇場を選びますよね?どうしても接客って油断すると気が抜けてしまうところでもあるので…」メインとなるお客様の層は、女性のグループや小さな子供を連れたお母さん。また大牟田市は学童保育が多く団体鑑賞の問い合わせが頻繁にあるという。「今後の課題は積極的に地元の小学校や団体に声を掛けて行こうと考えています」現在、行っている小さな子供を連れてゆっくりとお父さん・お母さんが映画観賞出来る“ゆりかごシネマ”もそうしたお客様の要望からスタートしたサービスだ。

「映画が終わって出て来られたお客様は、良い映画だと本当に皆さんイイ顔をされていますよね」と語る岩浅氏は、元来映画が好きでこの業界に入ったそうだが最近では映画を観るより、お見送りする時に満足されたお客様の顔を見るのが好きになったという。「最近は仕事に追われて、映画館で働いているのに映画を観る機会が減ってしまいましたが、その分お客様の表情で映画を観たつもりになっています」と笑顔で語ってくれた言葉が印象に残った。(2011年9月取材)

【座席】 『スクリーン1』263席/『『スクリーン2』304席
     『スクリーン3』209席/『スクリーン4』141席
     『スクリーン5』173席/『スクリーン6』162席
     『スクリーン7』162席
【音響】 SRD-EX・SRD



【住所】福岡県大牟田市岬町3-4 イオンモール大牟田1F 【電話】0944-41-0700

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