平成20年12月20日、長野県松本市南松本にあるイトーヨーカドーの敷地内にグランドオープンした『松本シネマライツ』。「年末ギリギリのオープンでしたのでお正月映画と重なってかなりバタバタして当日を迎えた事を覚えています」と語ってくれたのは副支配人の柳島健氏。以前は松本市内で映画館が軒を連ねる上土通りにあったロードショウ館“テアトル銀映”を経営していた株式会社北原が業務を拡大し、松本駅から程近いコチラの場所でシネマコンプレックスとして新たなスタートを切った。「以前、松本は人口の比率からすると映画館が一番多かった街で、やはり住民の皆さんが映画館で映画を観る事に慣れているという土壌がある映画の街だったのです。にも関わらず年々映画館離れが進み、松本から映画の灯を消してはならないという思いで、映画の街らしいシネコン作りを目指したわけなのです」オープン当時、お客様から“こういう映画館が欲しかった”という言葉をいただいた…という事からも住民の皆さんから寄せられていた期待が高かった事が理解出来る。コチラの劇場は交通の便も良く、南松本駅から歩いて10〜15分程の距離に位置しているおかげで、車を使われない世代の方々にも喜ばれている。

外観はアメリカのシネコンをイメージさせるシャープなデザインとなっているが、劇場内のデザインには松本らしさがいくつも反映されており、ロビーに入ると和の雰囲気を醸し出す暖色系の光が優しく出迎えてくれる。随所に松本の手工芸品をモチーフとしたデザインが施され、天井には柔らかいオレンジの光を放つ行灯型の照明が設置されロビー全体を上品な明るさで浮かび上がらせている。「劇場を設計された方が松本の街を見て歩き、城下町と蔵特有のなまこ壁をモチーフにしたデザインを考えついたらしいのです」また、スクリーンへと誘導するコリドーの天井は昼と夜(20時以降)とでライティングのトーンが変わる仕組みとなっており、こちらも松本を流れる川の曲線をイメージしているという。


広々としたロビーの壁側にはテーブルとイスが並べられており、上映開始までの待ち時間をカフェ感覚でゆっくりと過ごしてみるのも良いだろう。ちなみにコチラのコンセッションの目玉はロング肉まんや究極のカレーパン、厳選されたコーヒー豆を使用した氷温熟成珈琲など他所では見られない珍しい逸品が充実している。『松本シネマライツ』は通常のシネコンのようなショッピングモール内にあるのではなく駐車場を挟んで、単独の映画館として独立しているのが特長で、国内でも数少ない(勿論、長野県初)1フロア・ユニバーサルデザインの劇場である。「エントランス、ロビーから各スクリーンまでが1つのフロアですから、車いすの方の負担を少なくご入場いただける設計になっています」。それだけこだわった成果はオープンして間もなくお客様の反応から現れた。年輩のお客様の来場数が日に日に多くなっていった事だ。「シネコンのシステムに抵抗を感じられている年輩の方が何人も常連さんになっていただき嬉しい限りですね」と柳島氏は顔をほころばす。

チェーン展開をしていない地元の企業が経営するシネコンだからこそ出来るアットホームな雰囲気作りというのも圧倒的な強みとなっているコチラの劇場はスタッフもお客様も地元の顔見知りの方が多く、そのおかげで気軽に声を掛けられている光景がよく見られるという。電話でも常連の方から“この映画をやってもらえないか?”という要望が入ったりするらしく、これもひとえにコチラの劇場に愛着を持っているからこそ出て来る証しであろう。オープンから1年が経過して予想を超えるお客様からの反響を得ている『松本シネマライツ』の今後としては「勿論、お客様としては映画を観て…その映画に満足して帰るのが一番なのでしょうが、我々はお客様が映画館を出るまでが映画観賞だと思っていますので、もし映画に満足していただけなくてもスタッフの対応に満足して気持ち良く帰っていただける事を常に心掛けて行きたいと思っています」地元密着型のマニュアルに縛られない独創的なシネコンを目指して、2年目を迎え、松本ならではの新しいサービスが次々と生まれてくるであろう。(取材:2009年10月)

【座席】 『スクリーン1』229席/『スクリーン2』106席/『スクリーン3』106席/『スクリーン4』106席
     『スクリーン5』106席/『スクリーン6』194席/『スクリーン7』161席/『スクリーン8』366席
【音響】 『スクリーン1』SRD・SRD-EX/『スクリーン2〜5』SRD/『スクリーン6〜8』SRD-EX

【住所】長野県松本市高宮中116-2 イトーヨーカドー敷地内
【電話】0263-24-0122(24時間テープ案内)

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