日本にまだ“シネマコンプレックス”というシステムが存在していなかった1984年3月、西友大森店の中にココ『キネカ大森』は日本初のシネコンとしてオープンした。5階にあるレストラン街の奥に3館を有するコチラの劇場は四季を通じて幅広い年齢層のファンに支えられている。オープン当初はシネコンの概念が確立されていなかったせいか映画館と知らずに迷い込んでしまったり、どうやって入場するのか?等という問い合わせが多かったという。商業店舗に併設され、ロビーを共有スペースとして各々の上映館に入場するという形態が広く認知されるようになるのは、『キネカ大森』のオープンから更に7年を費やすことになる。そしてコチラのもうひとつの顔…それはミニシアターとしての一面もあることだ。当初はセゾングループの劇場として“海辺のホテルにて”や“サンスーシの女”のようなヨーロッパ映画などを単館上映しており“キネカ・マガジン”という独自のパンフレットを販売。「丁度、その頃は“シネ・ヴィヴァン六本木”がオープンしてミニシアターがブームになりかけていました。勿論、通常のロードショウ作品も上映していたのですが、3館ある内の1館ではココでしか観られない作品を掛けていこうと言う事で単館系の作品を上映するようになったんです」と語ってくれたのは支配人の熊木清氏。

アジア映画専門館と言われるだけに売店も充実の品揃えだ。ショーケースの中に所狭しと陳列されたアジア映画グッズの数々。ポストカードは勿論、香港や韓国映画の専門雑誌、ビデオ、CD、写真集などなど…とにかくココに来れば日本では手に入りにくい商品も扱っているのがウレシイ。中でも人気があるのはアジア映画スターの生写真(大型サイズに引き伸ばされた物まで…)や珍しいのはビデオCD(中国はビデオCDの普及が多いのか商品がかなり出ていると言う)など。とにかくマニアックなファンも納得できる品揃えのショップなのだ。現在、3つの劇場という強みを活かしてアジア映画、東宝洋画系、旬の監督や国の映画にスポットを当てた特集上映といった3つのプログラムで構成されており、幅広いファンのニーズに応えている。

93年に経営が東京テアトルに変わり、98年からアジア映画専門のミニシアターとしてファンの間で認知される程、積極的にアジア映画を上映するようになった。「当時はアジア映画を専門に上映している劇場が無かったですから…そういった意味でも一番最初にやったということで、ある種のアドバンテージがあったのかなと思います。どうしてもウチは新宿や渋谷のような中心街と比べるとアクセス的に弱いので、何か特色を出さないとお客様も足を運んでくれませんからね…。ですから映画ファンに喜ばれるような企画を考えながらたどり着いた感じなんです」と熊木氏が語る通り、アジア映画を観たいならまずは『キネカ大森』に行くべき!という図式はしっかりとアジア映画ファンに定着しているようだ。



また、来日した俳優や監督などのサイン会といったイベントにも積極的で特にアジア映画スターが舞台挨拶を行う時はあっという間にチケットが完売してしまう。「今後もアジア映画を充実させていきたいですね。新作だけではなく過去にやった作品でもレスリー・チャンの特集上映などを行ったりと考えています。また、イベントなども可能な限り来日スターのスケジュールに合わせてやって行こうと思っています」コチラのサービスとして毎週水曜日は男女共に1000円で入場出来るサービスディがある。それだけに水曜日は映画のハシゴをされるファンも数多い。クルマで来場されて映画をたくさん観たいという方には西友の駐車場を使用すれば4時間分の駐車料が当日チケット窓口で無料になるのだからありがたいサービスだ。

また映画ファンに好評なサービスとしてスタンプカードがある。1回、入場券を購入する毎に1スタンプが捺印され3回たまると次回、無料になるというもの。勿論、サービスディの時でも1回スタンプが押されるのでコアなリピーターにはウレシイ特典だ。「何度も来ていただけるためにこの様なサービスだけではなく接客、ご案内には力を入れていきます。」と語る支配人「春・夏・冬休み期間になるとお子様連れの方が大勢いらっしゃいますから…とにかく誰からも親しんでもらえるような劇場にしていきたいと考えています。都心から離れているだけに、年に一度だけではなく、昔の名作を愛する年輩の方から、ミニシアターファンのリピーターに至るまで何度も足を運んでもらえたら理想的ですよね」という言葉通り3つの映画館を各々のファンが利用し、共存している数少ない貴重な劇場であることは間違いない。(取材:2001年10月)


【座席】『キネカ1』168席/『キネカ2』82席/『キネカ3』52席 【音響】 SR・DS

【住所】東京都品川区南大井6-27-25 西友大森店5階 【電話】03-3762-6000 

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