関門海峡に面し、九州の玄関口として古くから栄えてきた北九州最大のターミナル・小倉駅。山陽新幹線と鹿児島本線が交差する駅のお膝元には旅の途中でサラリーマンたちが、暫し羽を休められる昭和の薫り漂う歓楽街が今も残っている。銀天街と呼ばれる一画に走る細い路地に所狭しと軒を連ねる小さなスナックやキャバレー、そして小さなストリップ劇場が控え目に佇んでいる。昼でも淫猥で雑多な雰囲気が漂うその場所に成人映画館『小倉名画座1・2』がある。小倉駅南口を出て5分程の場所にある歓楽街という立地の良さから昭和50年代に成人映画館として創業を始めたという。1階の『名画座1』が一般の成人映画、2階の『名画座2』がゲイポルノ専門館となっている。「飲み屋が多いから一杯飲んだお客さんがそのまま流れてくるんですよ」と、語ってくれたのは支配人の宮野元清剛氏。「元々2階はストリップ劇場で、3階は踊り子さんたちの楽屋だったんです」その頃の名残りで『名画座2』には今でも使われなくなった小さなせり出しのあるステージが残っている。


最近まではヤングホモショーと銘打った男性たちによるダンスショーが実演として開催されていたというが、今は映画上映のみでもっぱら出会いの場(いわゆる発展場)としての役割が大きい。場内の最後尾にあるトイレに書かれた落書きが訪れた人々の思いが綴られたある意味劇場の歴史と言って良いだろう。踊り子さんの楽屋だった3階は現在はレンタル個室となっており、映画館で知り合ったお客さんが連れ立って利用されているそうだ。
3階建ての映画館壁面に掲げられた名画座…という実に潔いシンプルな館名。提灯がぶら下がった昭和の雰囲気を漂わせる外観と絵看板に惹かれて映画館の入口をくぐる。上映は午前11時から夜中の2時30分(以前は朝の5時までやっていたそうだが)まで。2つの劇場を仕切る風呂屋の番台のような畳敷きの狭いチケット窓口にはおばちゃんが、チケット販売から受付業務を全て一人で賄っている。3人も入ればキュウキュウの小さな『名画座1』のロビーを抜けて場内に入ると、60席ほどの小じんまりとした客席が広がる。不思議なことに成人館特有の怪しげな雰囲気は無く、朝から古くからの常連と思しき御年輩の姿が何人か見受けられる。「たまに若い方も興味本位で観に来られたりするんですよ」右手の入口からそのまま階段を上がると元ストリップ劇場だったという『名画座2』がある。30席ほどの場内はゆったりとしており、ステージのせり出しを囲むように配置された座席が当時の面影を忍ばせている。


ステージの横には黒いボックスのような小部屋があるが、場内で仲良くなったお客さん同士が自由に使えるプライベート空間となっている。一方『名画座1』は来場されるお客様の高齢化が進み、昔は頻繁に来ていた常連さんも年を追うごとに少なくなっているという。コチラの劇場では両館共通のチケットが販売されており、その共通券があれば終日上と下を自由に行き来出来るのが特長だ。共通券を購入される方は、出会いを求めている常連さんで、一日中上と下を行ったり来たり…カップルになったら場内でイチャイチャする光景もあちこちで見られる。
「ショーをやっていた頃は若い人から年輩の方々まで盛り上がっていたんですけど、最近、こうしたショーの規制が厳しくなってね…」と残念そうに笑う宮野元氏だが、それでも成人映画館としては珍しく『名画座2』だけでも平日は60人前後、休前日になると100人を超すお客様が常時、来場されているというのだから驚く。上映作品は、『名画座1』は、新日本映像、新東宝、大蔵映画の二本立上映。『名画座2』のゲイポルノは大蔵映画、EMKプロモーション作品の二本立て上映、新作よりも少し遅れた成人映画の再映館となっている。








「1年もすれば題名を変えて同じ映画が来るわけですからお客さんも知っているんですよね。“あっ、これ観た”って…(笑)新作がなかなか作られないんですよ」と苦笑いをする宮野元氏。それでもお客様が絶えないのは映画館に出会いを求めている人が多いからだ。ゲイの方は勿論、女装が趣味の方、場内でパンツ姿になる方…色々な趣味の方が多く来場される『小倉名画座』。表の看板に描かれている「君と僕の情報発信基地ー薔薇族専門映画館」という言葉に偽りは無いというわけだ。鹿児島の映画館から大阪に渡り現在に至るまで映写技師一筋という映画人生を振り返って「技術一本でやってきたからこれからもずっとそれで続けて行きますよ」と年季の入った映写機をポンポン叩きながら笑う宮野元氏の笑顔が印象に残った。(取材:2011年9月)

【座席】 『名画座1』60席/『名画座2』30席 

【住所】 福岡県北九州市京町2-5-6 【電話】 093-522-5916


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