昭和40年代―高度経済成長の波が押し寄せる中、テレビの台頭によって低迷を続ける大手映画会社各社が、こぞってピンク映画の製作を開始した時代。メジャーからエロダクションと呼ばれた独立系(インディーズ)に至るまで数多くの名作や珍作を生み出してきた成人映画は、日本映画界に新しいムーブメントを巻き起こした。時は大阪万博で活況を見せていた昭和45年頃…大阪市の中心地―梅田の新御堂筋通りに日活映画の専門館“東梅田日活劇場”がオープンする。丁度、日活と大映の経営が苦しくなり始め、共同でダイニチ映画を設立、しばらくはエログロナンセンスのキワモノ路線を作り始めていた頃だ。そして…その数年後に日活はロマンポルノ製作への路線転換を打ち出すこととなる。設立当初運営を行っていた会社より、昭和57年頃に現在の“東梅田日活株式会社”が経営を引き継ぎ、時を同じくして、同ビルの3階にゲイポルノ専門館『梅田ローズ劇場』をオープン。平成15年には“東梅田日活劇場”を『梅田日活劇場』に改名し再スタートを切り現在に至る。梅田の繁華街の入り口に建っているコチラのビルは、通称“ポルノビル”と呼ばれており、最近までは3館の成人映画館が入っていた。(地下にあった“東梅田シネマ”は閉館―夜通りを照らしていた“ポルノ地下”というネオンサインが消えたのは寂しい限りだ。)


全国的に成人映画館を取り巻く環境が厳しい現実を迎えている中、純粋に「成人映画を楽しみたい」というファンの要望に応えるべく、常に新しい試みにチャレンジを続けている『梅田日活劇場』と『梅田ローズ劇場』は、低迷する成人映画業界に勇気と活力を与えてくれる存在だ。昭和46年から活況をみせていた日活ロマンポルノもビデオの普及とともに昭和63年に終焉を迎え、『梅田日活劇場』は二度目の転換期を迎える事となる。“新日本映像—エクセスフィルム”の封切り館として継続し、現在は“大蔵—オーピー映画”も加わり2社の作品を上映している。番組は毎週金曜日の夕方から切替えの一週間興行というスタイルを取っている。これは一週間、仕事で疲れたお父さんたちへ週末の帰宅時に新作を提供しようという、劇場からのささやかなサービスというわけだ。

「最盛期程の盛り上がりは無くなりましたが、今年のお盆興行で、ホームページで行ったロマンポルノ女優人気投票コーナーの結果とリンクして、第1回(71年〜72年編)の人気トップ女優の主演作3本を選出して特集を行ったところ、興行的に今年一番の入りとなりました」と語ってくれたのは支配人の駒田氏。上映(再映)機会の少ない作品を中心に構成したせいか、往年のファンから若い映画ファンまで数多く訪れたという。「今後もこうしたホームページとリンクしたイベント性の高い企画を行っていきたい」と今後の抱負を述べてくれた。

また、企画上映として高い人気を誇るのが、月一回行われているロマンポルノ特集だ。ジャンルや監督毎に特集を組み、往年の名作を提供しようという試みは当時を知らない学生からも人気があり、さらに、レディースシートを朝イチの回から夜9時前後まで設定(特集上映時のみ)しているので女性同士で来場される姿も多く見られる。場内は比較的大きな椅子を採用しているため座り心地抜群。毎日オールナイトを行っているため終電を逃して朝まで過ごされる方のためにコインロッカーを設置しているのが、ウレシイ心配りだ。そして薄暗い場内に輝く“お飲みものコーナー”の看板。その扉の向こうには喫煙所と休憩所が…映画の途中でもロビーに出ること無く、ちょっと一服できるスペースがある。



昭和57年に東映セントラルが配給したゲイを描いた作品を同社所有の“東梅田シネマ”で上映したところ、大反響を呼び行列が出来て劇場の扉が閉まらない程の大ヒットを記録。そこでゲイポルノの可能性をいち早く見いだし、急遽専門館である“東梅田ローズ劇場”を設立すると共に製作会社ENKプロモーションを立ち上げ、国内初のゲイポルノの製作(現在に至るまで約100本のゲイポルノ映画の製作・配給、製作委託として日活ロマンポルノ約5本、エクセス作品10本以上製作)を手掛けるようになる。コチラの劇場では製作、配給、上映の全てをこなしていたというわけだ。記念すべき第一回作品―昭和58年の“巨根伝説 美しき謎”以降、日本のゲイポルノは“ロッテルダム映画祭”に招かれるなど海外でも注目を浴びるようになる。最近は、製作を一時休止して、ゲイポルノ映画だけではなく、国内外のゲイをテーマにした一般映画などの配給や上映を積極的に行っている。「最近上映した香港映画の“藍宇 LAN YU 〜情熱の嵐〜”が話題となり、連日何人ものお客さんがこの映画に出会えて良かったと、声を掛けて下さいました。正直言って、その時は心の中で“やった!”と叫びましたね(笑)」こうした手応えのある作品を上映して良かったと、熱く語る劇場スタッフの万波氏。「今後の展望としては、こうした素晴らしい作品がアジアにはたくさんあると思いますので、今後は洋画の配給部門にも力を入れたいですね」と続けてくれた。


中央に迫出したステージが印象的な場内は、薄暗い明かりの中プライベート空間のような居心地の良さを感じさせる適度なスペースだ。月一回、このステージでは“ヤングHOMOショー”という若い男の子たちによるダンスステージを開催し、大いに盛り上がりをみせている。お客様の殆どがリピーターで占めており、幅広い年齢層の方が思い思いの楽しみ方をされている。ちなみにショーの出演者は随時募集をしているそうなので、我も…と思われる方は劇場の方へ一報してみるのも良いだろう。

交通量の激しい梅田駅近くの新御堂筋通りに面した小さな入り口。その入り口から細長い階段を2階に上がるとチケット販売機と受付のあるロビーが現れる。明るいロビーは女性客を意識しているためか、成人映画館が持つ陰湿なイメージは無く、ミニシアターのような雰囲気さえ醸し出している。常に清潔に誰でも楽しめる映画館…とモットーとしている劇場の姿勢がロビーに表れている。売店にはビデオやDVD、関連書籍などのグッズがワゴンの上に陳列されており、あれこれと眺めているだけでも楽しく待ち時間を過ごす事が出来る。


3階の『梅田ローズ劇場』に続く階段途中の踊り場にもショーケースが設置されておりゲイポルノのビデオ、DVDなどが所狭しと陳列されている。しかも入会金無料のポイントカードを持っていれば、貯まったポイントで、これらグッズ交換が可能だ。

コチラの劇場が現在、力を入れているのがホームページ。前述した人気女優投票をサイト上で行って特集上映などの企画とリンクさせたり、上映作品紹介だけに留まらず、何と言っても最大のウリは、日活時代から最新作に至るまでのポスターを通信販売している点だ。その数約400点以上にも及ぶのだからコレクターは、是非一度アクセスしてみると良いだろう。一部画像入りで掲載されているので、一度見始めたら懐かしさに時間が経つのも忘れてしまう。成人映画の貴重な風俗資料館としても楽しめるのが特長だ。

4年前には関西を中心に活動を行っている吉本興業の芸人、河内家菊水丸氏とのコラボレーション上映会を行い大成功を納める等、常に新しい企画を打ち出して、ファンを喜ばせてくれている二つの成人映画館。成人映画を取り巻く厳しい状況の中、次に何を仕掛けてくるのか…これからも目をはなす事が出来ない。(取材:2006年9月)





【座席】『梅田日活劇場』78席/『梅田ローズ劇場』44席

【住所】 大阪府大阪市北区堂山町17-8  2011年6月26日を持ちまして閉館いたしました。


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