名古屋は駅を挟んで街の雰囲気がガラリと変わる。新幹線の改札口がある、その名もズバリ“新幹線口”は“裏”と呼ばれ、昔ながらの青物問屋や商店街が今も残っており、ターミナル駅とは思えない風情を醸し出している。一方、“名鉄・近鉄”駅側は“名古屋ビルヂング”がシンボルとなっているオフィス街…現在、駅前にトヨタのオフィスビルが大規模な再開発で工事を行っており、今年の終わりには名古屋駅前も大きな変貌を遂げるであろう。こうした進化をし続けている名古屋駅に、昔と変わらない光景もある。

オフィスビルの裏手にはスナックや遊技場などの繁華街が広がっており、昼の閑散とした雰囲気が夜になるとキラビやかなネオンに彩られる。かつて名古屋駅周辺だけでも6館もの成人映画館が軒を連ねていた。「20年前の全盛期の頃は成人映画館の中でも日活ロマンポルノを上映している劇場が多くて、フィルムの掛け持ちとかを結構やっていましたね…」と当時を振り返るのは、現在駅前に残る最後の成人映画館『シネロマン名古屋』の吉野孝典支配人。


「オートバイでフィルム缶を他の劇場に運ぶなんて事は日常茶飯事でしたよ」成人映画版“ニューシネマパラダイス”のような光景が毎日繰り広げられていたという。コチラの劇場がオープンしたのは昭和51年8月(設立時の館名は“名古屋駅前にっかつ”)…日活がロマンポルノの製作を始めて全国に直営館を作っていた頃にさかのぼる。当時、名古屋地区におけるロマンポルノの勢いが、いかに凄まじかったかは数字にも表れている。当時、名古屋地区における成人映画の売り上げが池袋・新宿よりも良く、名古屋近辺でも一般館よりも売り上げが安定していた程。成人映画館も時代と共に減少を続け、昭和40年代には映画と実演が有名で東てる美も舞台に立った“テアトル希望”も閉館、昨年秋には“円道寺劇場”も閉館されてしまった。





『シネロマン名古屋』があるフロアは元々“駅前プラザ劇場”という成人館(設立時は一般作のムーヴオーバーやビデオ化されないB級作を上映していた)だったが、そこの閉館に伴い約5年前、2階から移設して再オープンしたもの。そのため今でも階段に“駅前プラザ劇場”の看板が残っている。『シネロマン名古屋』は日活直営のロマンポルノ専門館としてスタートしたが、その後日活がロマンポルノの製作を打ち切りにしたため、館名を“ロッポニカ名古屋”と変えてミニシアターとして一般作を上映していた。「ただ、この場所がメイン通りから一本裏に入った場所にあって、周辺がパチンコ屋・飲み屋街なので一般映画をやるには、あまり良い場所ではないのです。そこで、新日本映像が成人映画の製作を開始したのをきっかけに、また成人映画館に戻したわけです」と言われる通り、名古屋駅前という理想的な立地でありながら、歓楽街の入り口に位置している事から男性にとっては一目を気にせず立ち寄る事が出来る隠れ家的な存在となっている。形態は3本立て週替わり興行で新作と旧作を併映して上映されている。やはり、新作の本数が少ないというのが現在の課題だが、その分お客様にもっと来場してもらおうとスタンプカードを発行。5本観ると1本入場無料になるというサービスを実施している。

客層はシニア層が半分を占めており、金・土曜日に行われる朝5時半までのオールナイト興行では中年層がメインになってくる。また、こうした立地のおかげで平日の昼間はサラリーマンが多いのも特徴のひとつ。「ただ、現在向かいのトヨタビルが建設中ですからサラリーマンの姿が減ってしまいましたが、完成したら人の流れも変わって、集客がアップするのでは…と期待しているのですが」と語る吉野支配人は今後の番組編成や舞台挨拶等のイベントも秋に向けて検討中だという。「これから、団塊の世代の方々がリタイアされる時代ですから、その方たちが青春時代に観てきたロマンポルノの名作等を番組に取り入れる事で成人映画の面白さを再認識してもらえたら…と考えています」



女教師ものやスチュワーデス、OLものといった制服ものが根強い人気を誇っているコチラの劇場は逆にSMが不評だという。「昔はできるだけバラエティーに富んだジャンルでプログラムしていたのですが、最近はお客様の好みがはっきりしていますから3本立ての構成はなるべく同じような作品をセレクトしています。また昔のように女優によって来場者が増えるといった事は無いため作品の幅は広がったように思いますね」

エントランスの自動券売機でチケットを購入して中に入ると広がる長いロビー。通路には日活ロマンポルノの名作ビデオが販売されている。清潔なロビーは成人映画館のイメージとは程遠い居心地の良いスペースとなっている。ロビーの突き当たりにある休憩所では設置されているテレビで日活の運営しているアダルト衛星放送レインボーチャンネルが流されているので、常連客は朝から晩まで場内とロビーで一日過ごされるという。場内もミニシアターのような雰囲気を持っており座り心地の良いシートでのんびりと誰に邪魔される事無く自分だけの時間を過ごしたくなるお父さんたちの気持ちも理解できる。「ウチのお客様は大人しい方が多いので、お客様同士のトラブルはないですよ。成人映画館はゲイの方が多いと言われていますが逆にゲイの方は少ないですね。一時、ゲイの社交場になっていた成人映画館が閉館直後ウチに流れてきましたが、自然と雰囲気が違うと感じたのでしょうね…いつの間にか来なくなりました」やはり常連のお客様が多い劇場は目に見えない連帯感のようなものが漂っているらしい。だからこそ自分たちが心底くつろげるオアシスのような空間になるのだろう。これは決して劇場側だけで作り出せるものではなくお客同士が長い年月をかけて築き上げた結界のような気がする。(取材:2005年12月)




【座席】 205席 【音響】 DS

【住所】 愛知県名古屋市中村区名駅4-4-31 Cochi-Pachi4階 ※2007年4月16日を持ちまして閉館いたしました。

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