ここ数年で大阪の成人映画館事情は大きく様変わりを見せている。難波に数館あった成人映画専門館も今や2館を残すのみ。また、関西の成人映画館の大部分がフィルム上映からビデオプロジェクターでの上映を主流として昔ながらの上映形態を保っている劇場というのは少数派となっているのが現状だ。そんな中、千日前道具屋筋沿いにある『テアトルA&P』は昔と変わらない映画館らしさを今に残している。昭和39年にオープンしたコチラの劇場は16年前から成人映画専門で上映を開始。大蔵映画と新東宝作品の2本立興行を行っている。「現在の成人映画の実情として新作が年に2〜3本しか撮られていないので配給会社が貸し出し可能な過去の作品をリストアップして、その中からチョイスしているんです。作品数の減少が一番の難題です。」と語ってくれたのは支配人の越智孝夫氏。








連日オールナイトという垂れ幕と手描きの看板が懐かしい外観。小さな入口をくぐると天窓からほのかに自然光が差し込む階段が続く。細長い階段は淫媚な雰囲気を醸し出し、アンダーグラウンドな妖しさが独自の世界観を作り出している。階段を上がりきると自動券売機が設置され、チケットを購入してエントランスに入ると思ったよりも広いロビーに驚く。売店に置いてある小袋に入った豆菓子とカチカチに固まったアイスクリーム…ビールを片手に場内に直行する人と、まずはロビーでくつろぐ人…映画の始めから観る必要も無い、気の向いた時に場内へ入る。薄明かりの中に浮かび上がる六角形の場内はシックなトーンが印象的だ。この場内でお相手を物色し夜のミナミに二人で消えて行く男たち…非日常の世界が毎夜展開されているのである。決して女性が立ち入る事ができない世界─ココは男たちだけの聖域であり絶好の隠れ処なのだ。(取材:2003年7月)

【座席】 157席 

【住所】 大阪府大阪市中央区難波千日前12-3
 ※2004年6月を持ちまして閉館いたしました。 

   

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(C)Minatomachi Cinema Street

隣接するスーパー“A&P”が経営するコチラの劇場と同系列の“千日前弥生座”の支配人も兼任されている越智氏は成人映画館が抱えている現状を説明する。連日2本の成人映画をオールナイト上映(朝5時頃まで)をしており、一般700円、学生・シニア500円というリーズナブルな料金で朝まで過ごすことができる。おかげで労働者の方が宿代わりに利用したり、終電に乗り過ごしてしまった方が始発までの間利用されるというケースも多いのだが…実はコチラの劇場、夜はもうひとつの顔を見せている。それは…「午前中は年輩の方が多いんですが、夕方から深夜にかけてゲイのお客様が多くなるんですよ。ですから知らないお客さん(いわゆるノン気の方)が驚かれて飛び出してくることもありましたね。(笑)勿論、そういう時は注意しますけど、難しいですよね両方とも私たちにとっては大切なお客様ですから…気を悪くされないように気を使いますね。」毎日、40人から50人、ゲイの方が訪れるらしく「逆にそういった方々(リピーター)のおかげで成り立っていますね。」と越智氏は続ける。「こんなん言うたらなんやけど…ウチはゲイの方々にとって社交場(出会いの場)みたいになっているらしいんですよ。」一度、ゲイ専門誌にコチラの劇場が出会いのスポットの穴場的に紹介され、それ以来、新しい出会いを求めてその道の方々が多く詰めかけているというわけだ。「なぜゲイの人々はゲイ映画専門館ではなくウチみたいな普通の成人映画館に来るのか、一度常連さんに聞いてみたことがあるんですよ。」どうやらウチに来る方はノン気の人をゲイの世界に誘う事が楽しいらしく、ゲイの人しか集まらない専門館はつまらないらしい。一般の映画館では想像もつかない特殊な客層…これが成人映画館だけが持つ特色なのだ。