東京─神楽坂、今でも路地に入ると粋な三味線の音が聞こえてくる街だ。一方では再開発が進みオフィス街となってしまった飯田橋が面している。そんな近代的な雰囲気からちょっと抜け出したような路地に成人映画専門館『飯田橋くらら劇場』がある。昭和30年代、各映画会社が次々とピンク映画を作り出した頃にオープン。当時は濡れ場のシーンだけがカラーになるというパートカラー全盛の頃だ。「最初は映画館にするつもりなんてなかったんだよ。本当は麻雀屋にするつもりだったんだけど…成人映画をやらないかって誘いがあって始めたんだな。」と語る代表の浮田稔夫氏。当時はにっかつが本格的にロマンポルノ製作に乗り出しており宮下順子、谷ナオミなどの看板スターを次々と輩出していた。「絶頂期の時はお客さんもかなり入っていたよね。毎回、立ち見でそれでも入り切らないんだから。」という言葉を裏付けるかのように今でも場内には谷ナオミのポスターが飾られている。現在、上映作品はエクサス、大蔵映画、新東宝の作品を掛けており、週替り3本立興行で料金は900円だが18時以降は600円、最後の1本は300円で入場できる。「俺がサービス開始の看板を出すのを待ち構えている人もいるんだから…」と苦笑う。

「やっぱり料金も今が限界。1000円出してお釣があるから良いんであってこれ以上は高くしたくても出来ないなぁ。昔はココもオフィス街だから平日の昼間でもサラリーマンが仕事サボッて観に来ていたけど、今はそれどころじゃないんだろうね。殆どそんな人はいないよ。」と語る通り、今では常連の方がメインとなっている。その常連の中でもお得意さんと言えば…「いわゆるゲイのお客さんですよ…お相手を物色しているんだろうね。」確かに場内へ入るとやけに上映中にも関わらず席の移動が目立つ。そうこうしている内に自分の周りに人が寄ってきている事に気付くのだ。「それは狙われてるんだよ。」と笑いながら教えてくれる浮田氏から意外な言葉が飛び出す。「特に一番後ろの席というのが暗黙の了解でその道の人達の席みたいになっているらしくて、知らないでそんな所に座ったら、そりゃ皆寄ってくるよ。」…まさしく一番後ろの席に座ってしまったのだが「我々もある程度は黙認している部分もあるんだけど、皆が皆そっちのお客さんばかりじゃないからね。中にはタチの悪い人もいるから、さすがにお客さんからクレームが来たら怒りますよ。」とは言っても従業員である男性スタッフも気が気ではないらしくトイレは常に女性用を使うようにしているという。
地下へ深く降りて行く階段の両壁には所狭しと映画のポスターが張り巡らされている。何とも怪しげなムードが成人映画の持つ陰隈さを醸しだす。場内への入口はひとつ…しかもその入口はスクリーンの真横であることにビックリする。オレンジ色の照明がアヴァンギャルドな雰囲気を持っている場内はむしろ危険な香りがするイメージ通りの(?)成人映画館かも知れない。「場内のイスも昔から変えていないからね…何でも新しくするよりも適度に古いほうが逆に居心地がいいんじゃないかな。」という浮田氏の言葉も解る気がする。前述したその道の方々が座る最後列はパイプイスとなっており…ナルホドこれならば席の移動も簡単というわけだ。その後ろにある映写室、そこには年代物の映写機が今でも現役で活躍している。「古い機械だから故障しても何とかごまかして使える…ただ修理屋には文句言われるけどね。いつまでもこんな機械使っているんじゃないってね。」





コチラで行っているサービスとして劇場オリジナルのスタンプサービスを実施している。誰でも無料で会員証を発行してもらえ来場する毎に1回スタンプを押してもらう。それが10回たまると1回分無料で入場できるというもの。月に30人は無料サービスを利用している程、リピーターにとってはありがたいサービスだ。しかも期間は無制限なのでいつまででも利用できる。「中には10回は長いから5回にしてくれっていう常連さんもいるけど、1回の入場料が900円なのに5回でタダになっちゃ赤字だよって(笑)言い返しているんだけどね。まぁ、ウチみたいな小さな小屋は常連さんで成り立っている所もあるし…スタンプカードの利用者が多いのはありがたいよね。」と笑顔で語る浮田氏。昔のように看板女優だけでお客を引っぱれる時代は終ったという現在、こうしたサービスが劇場を運営する上では欠かせないものとなっているのだ。「今ではタイトルのつけ方も規制されているからヘタに女子高生シリーズなんて特集も組めなくなっているから厳しいよ。」と苦笑するものの成人映画ファンにとってココは数少なくなったオアシスである事は間違いない。
(取材:2003年2月)

【座席】 258席 【住所】 東京都新宿区神楽坂2-19 銀鈴ビル地下 【電話】 03-3268-8239

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