霧島連山の麓にある豊かな自然に恵まれた街・宮崎県都城市。JR日豊本線で宮崎から電車に揺られて1時間ほどの西都城駅に、街にひとつの映画館『シネポート CINEPORT』がある。幕末まで島津藩だったことから、この地に住んでいる人たちは、鹿児島気質の人が多いという都城。戦時中の西都城には陸軍の飛行場があり、そこから特攻機が飛び立っていたという歴史がある。それに対して、隣駅の都城は昔からの産業や商業が発達した街で、駅前は全く異なる様相を呈している。駅の反対側を流れる大淀川を背にして駅前の通りを歩くと、市の合同庁舎がある大通りに地元に根付いた商店街が現れ、そこから更に5分ほどの場所にプロヴァンス風のオシャレな外観の商業施設C-PLAZAが見えてくる。そうか…ここが街の中心なのだ。西都城の中心部が駅から離れた場所にあるのは、昔ここが唐人町であった事に起因している。そのC-PLAZAにある『シネポート CINEPORT』の歴史は古い。「元々は、通りの向かいにあったのですが、道路を拡張するという事で、現在の場所に移ったんです」と語ってくれたのは二代目館主を務める河村敏行氏だ。


河村氏のお父様・河村敏雄氏が、ここ中町で客席400席を有する鉄筋1階建の東映の封切館“都城東映劇場”を立ち上げたのは昭和30年。戦前から戦後にかけて大きなデパートが建ち並び、10館ほどの映画館が軒を連ね、休日ともなると買い物客と観客で通りは活況を呈していた。河村氏が“都城東映劇場”の仕事に関わるようになったのは昭和53年のこと。「一度、父は映画館を閉めていた時期があって、私が帰って来た頃は、東映系作品は別の映画館でやっていました。斜陽期には生き残るために成人映画もやったりして…父も苦労したようです」ポルノをやるくらいなら…と河村氏が劇場を洋画専門に路線を変更。それから間もなく公開した“E.T.”の爆発的ヒットを目の当たりにする事となる。「その時代は看板屋さんが描いていた時代だったのですが、配給会社から珍しく細々と通達がくるわけですよ。絵看板には、この色は使ってはならない…とかね。その時代に、そんな細かい注文をつける事は珍しかった。ヤヤコシイこと言うな〜って思ってましたが、今から思えば配給会社はアメリカの状況を知って、ヒットを確信してたからなんでしょうね」その後、河村氏が経営を引き継いだ昭和62年には、老朽化した“都城東映劇場”を取り壊して、客席数93席のミニシアター『CINEPORT』を立ち上げた。

その頃には、映画館が次々と閉館してしまい平成8年には閉館した東宝系の映画館を引き継ぎ2館体制で運営していたという。現在の場所に移動して3館体制の新生『CINEPORT』を設立したのは平成13年。「私が映画館を引き継いだ時に応援してくれた洋画の配給会社さんとは今でもお付き合いさせてもらってます」霧島の山々を臨み、天気の良い日は桜島も見えるという2階テラスのベンチに腰掛けると晩夏の風が実に心地よい。ロビーよりもテラスで待ち時間を過ごされる方が多いというのもよく分かる。夕暮れ時になると『CINEPORT』のネオン管にあかりが灯り、否が応でも気分が盛り上がってくる。仕事帰りのカップルや夫婦、家族連れなど夏休みシーズンは、平日でも幅広い年代に渡る観客でロビーは賑わっている。普段は、1日4作品の上映を行っているが、ハイシーズンには6作品上映することもあるという。「本当はじっくりと4作品くらいで回したいのですが…」と顔をしかめる河村氏。「昔は二本立て興行の組み合わせを考えるのが、興行に携わった人間とっての醍醐味でした。そこを見極めるところが勝負で、自分の読みが当たるのか、配給会社のデータから得られた予測が当たるのか…そこですよね。だから、今でもコチラの読みが当たった時はそりゃ嬉しいですよ」


「逆に今夏、公開した『ミニオンズ』のように、映画をずっとやってきても予測出来ないヒット作もあったりして(笑)こういうのも面白いですよね」と続ける河村氏。現在のお客様は地元の年配層とファミリー層がメインとなっており、若い人の映画館離れに頭を悩ませているという。「都城は、高校を卒業したら宮崎とか福岡といった大きな街に出て行ってしまうので、これからの映画を支えてくれる若者層が街全体にいないのが大きな課題です」ヒット作も二極化されており、子供向けのアニメと、“おくりびと”や“そして父になる”といった人間ドラマに人気が集中してしまうのだ。「だから、中高生向けの青春映画はやらない…それだったら、小さな作品でも洋画をやった方が入るんです」最近は、劇場への問い合わせにも変化が見られ、吹き替えをやっているか…という質問が多く寄せられている。「昔からの映画ファンは、洋画は字幕じゃなきゃいかん…という方が殆どですが、若い方からの問い合わせが圧倒的に多いですね。今じゃ大作ともなると、ひとつの映画で、字幕・吹き替えが・2D・3Dそれぞれにあって…ウチのように3スクリーンしかないと、どれかしか選ばないかんわけで、今年の夏はさすがに今の時代はどれが王道なんですか?って、配給会社の営業さんに聞きましたよ(笑)」今の若い人は本当に映画館で映画を観る事を望んでいるのか…と、疑問に思っているという河村氏。「もしかしたら映画館というのは、いずれ時代にそぐわなくなるかも知れない…でも、それまでは映画館を続けていきますよ」と、最後に述べた言葉が印象に残った。(2015年8月取材)


【座席】 『スクリーン1』80席/『スクリーン2』80席/『スクリーン3』53席 【音響】 SRD

【住所】宮崎県都城市中町 17-9 シネポートビル 【電話】0986-24-2571


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