吉祥寺駅東口から通りに出ると目の前に館名が書かれた大きな看板がシンボリックな街のロードショー館『吉祥寺オデヲン』が建っている。前身は、かつて歌舞伎町にあった1200席の大劇場"グランドオデヲン"を中心に、最盛期には20館以上もの映画館を運営していた東亜興行株式会社が昭和29年9月に設立した木造の"吉祥寺オデヲン座"だ。設立当初は洋画の三番館として二本立て興行を行っていたが、昭和53年10月には4つのロードショー館、"吉祥寺松竹オデヲン(後の吉祥寺松竹、吉祥寺オデヲン)"、"吉祥寺スカラ座"、"吉祥寺セントラル"、"吉祥寺アカデミー(後の吉祥寺東宝)"と、ゲームセンターを有する複合型娯楽施設・吉祥寺東亜会館としてリニューアルオープンする。平成24年1月に館名を再び"吉祥寺オデヲン座"に統一。同年8月には完全デジタル化(しばらくはフィルムとデジタルを並行して上映していた)に伴い、地下1階にあった劇場を閉館して3スクリーン体制の東宝系ロードショー館『吉祥寺オデヲン』として再スタートを切る。


現在も座席は全席自由の定員入替制となっており、昔ながらのスタイルに年輩のお客様からは重宝がられている。今では珍しいスクリーンが湾曲になっている場内は天井が高く、映画を視界イッパイに楽しみたいという方に好まれている。「ずっと映画館から離れていて20年ぶりに帰って来たんです」と語る支配人の村石透氏は、観客の映画館で映画を観る意識が大きく変わった事に驚いたという。「ちょうどシネコンが経ち始めた頃に、映画館から離れていたので、しばらくぶりに戻って来たら私の知っている映画館の形態とは全く変わっていました。記憶にある映画館は立ち見だろうが詰め込んでギューギューになりながら映画を観ていた時代です。今では立ち見はダメで座席分しかチケットを売らない興行ですからね」近年最大のヒット作となった"アナと雪の女王"でも座席予約の問い合わせが多くなっていた事から、座席指定も視野に検討しているという。

駅前の利便性から買い物がてら映画でも観ようか…と、フラリと入られるお客様も多く、車を使われない年輩のグループやご夫婦が連れ立って来場される姿をよく見かける。「やはり、吉祥寺という場所柄ですかね…お客様は昔から来ていただいている年輩の方が中心です。5回観ると1回無料になるスタンプカードも、あっという間にスタンプを貯めて観にきてくれる常連さんも多いですよ」また、誕生日の月に同伴者一名までシニア料金で観賞できるバースデー割引を利用して朝からハシゴされる強者もいるとか。春・夏・冬休みシーズンになると、子供向けのアニメ映画が主流となり、人気作品には朝から長い行列が出来る。「私たちは小さいお子さんが映画に慣れ親しんでくれる環境をもっと作らなければならない…これが一番の課題ですね」


久しぶりに映画館の受付に立った村石氏は、最近映画館での映画の観賞方法が分からないお客様が増えていると感じている。「自宅で映画を観る手軽さに慣れてしまっているのでしょうね?」だからこそ、映画館で映画を観る経験のためにも子供向けアニメの重要性を昔以上に感じているそうだ。「小さい時に両親が映画館に連れてきてくれたお客様は、大人になってもデートや友だち同士で来場してくれます。"小さい時にココで両親と観た"と、懐かしんでくれると、やっぱり嬉しいですね」ロビーにあるポップコーンとサッポロポテトの自動販売機を懐かしがっている若者を見ると映画館が街に根付いていると実感させられる。『吉祥寺オデヲン』のすぐそばには井の頭公園があり、車を使わない中高生が映画を観た後に街をブラブラしてから公園を散策するといったデートには最適な環境にある。平日でも仕事が早く終わったから…と、ちょっと寄り道して映画を観るのもたまには良いのではないだろうか。









「あそこだったら近いから、ちょっと寄って行こうか…的なノリで来てもらえるような純粋に映画を楽しんでもらう空間作りは、こだわっています」わざわざ出掛けるのではなく、気軽に立ち寄る…という感覚が街なか映画館の良さではないだろうか。「ウチの劇場がシネコンに負けていないのは地元のお客様とコミュニケーションを図れる地域密着型だと思っています。これに関しては劇場のコンセプトとしてこれからも変わらずに進めて行きたいと考えています」だからこそココには普段着のまま気軽に来れる親しみがあるのだ。

何でも新しくするのではなく、設備は新しいものを導入していきながら、サービスは昔の良さを大事にしていきたいと語る村石氏。「まぁ、建物も古いですから新しいシネコンには劣るところがあっても、雰囲気の良さや、お客様が落ち着いてゆっくりと過ごせる空間作りという点は守って行きたいと考えています。だからこそ大きな変化をせずに、このまま何十年先まで維持して行く事が大切なではないでしょうか?」そうなのだ、地域の人々が何年も"映画を観るならココで…"と訪れてくれる限りは、変わらない良さというのも地元密着型の映画館には必要なのだ。(2014年5月取材)


【座席】 『5階』246席/『3階』249席/『2階』224席 【音響】 『5階・3階』SRD-EX/『2階』SRD

【住所】東京都武蔵野市吉祥寺南町2-3-16吉祥寺東亜会館 【電話】0422-48-6521

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