世界遺産・姫路城を中心に栄えた播磨地方の中核市である姫路市には連日多くの観光客が訪れている。JR姫路駅から姫路城に真っ直ぐ延びる(日本の道100選に選ばれている)街路樹が美しい大手前通り沿いに3つのスクリーンを有する映画館『姫路OS1・2・3』がある。古くからあった映画館"姫路南座"を取り壊し、現在のビルを建設したのは昭和39年8月の事。6〜8階を"姫路OS劇場"という単独の大劇場としてオープン。7階に映写室があり、天井が8階まで吹き抜けていたというからかなりの大劇場だったことが伺える。






昭和30年代から40年代にかけて、関西のOS系列と言えば、関東のテアトル系列と肩を並べる老舗大劇場というイメージが強く、当時の大作映画のパンフレットにはOS劇場の館名が記載されており、関西の人間でなくても劇場名は知られていた。「ここから見える景色が自慢なんですよ」劇場を案内してくださっている途中で、おもむろに大手前通りに面した窓のカーテンを開けた支配人の中山浩一氏。8階ロビーの窓からは左にJR姫路駅、右に姫路城を臨む最高の眺望が広がっている。「残念ながら夏はカーテンを開けているとロビーの温度がどんどん上がってしまうので、今の時期は閉め切りにしているんですよ」"姫路OS劇場"が、現在のような複合館のスタイルで3スクリーン体制となったのは平成7年7月だ。6階に『OS1』、ロビー両サイドの階段から8階に上がると『OS2』と『OS3』が並んでいる。立体構造となっているコチラの劇場でユニークなのは効率的な人の流れを考えた機能性に優れた設計にある。設計に携わったのは『OSシネマハーバーランド』の建設にも関わっていた技師で、既存の施設を巧く活用しながら新しい導線を作り出しているのが特長で、シネコンのような横の広がりがない縦型の劇場特性を考えた機能美に溢れている。





しばらくは“シックスセンス”や“千と千尋の神隠し”といった若者向けの娯楽作が強かったが、最近ではシニアの方が多いからか“レ・ミゼラブル”のような作品に多くの観客が訪れている。神戸や大阪のベッドタウンである姫路市は、都市部に仕事で出て行く人たちが多いため、平日の昼間は年配層や主婦層がメインとなっているのが現状だ。「思い返せば、どうして若者が外に出て行ってしまったかというと、姫路が若者たちにとって不便な街だったのかも知れません。姫路の夜は早くて、夜8時には商店街の店が閉まってしまいます。仕事帰りに映画を観て、何か食べて帰ろうか…と外に出たら真っ暗だったら、若い人たちは姫路で遊ぼうと思わないですね。それが駅前の再開発によって変わってくると思いますよ」と中山氏は語る。姫路市内には歩いて5分圏内に映画館が集中しているからだろうか、上映作品も実に上手くバランスが取れているようだ。「市内にある3つの映画館がお互いに情報交換をして、街を盛り上げて行こうという意識が高いんです。これは昔からこの地で興行を続けてきた基盤の上に成り立っているからでしょうね。ですから、客を取り合うような競争はないですね」

まずワンスロープ形式の作りとなっている『OS1』にはロビーの左側から入場して、退場はロビー中央にあるコンセッションスタンドの裏手から出てくるといった観客の流れが時計回りになるよう計算されているのが素晴らしい。上の階にあるスタジアム形式の『OS2』『OS3』は、隣り合っていながらも通路は完全に切り離されているので、これであればどんなに混雑していてもスムーズな流れが確保できるという事だ。エレベーターで6階に上がると正面にチケットカウンターとコンセッションスタンドがあるロビーが広がる。OS劇場独自のサービスであるドリンクバーはロングランの人気メニューだ。映画の日など2作品ハシゴされる方には是非利用していただきたい。小じんまりとしたスタジアム形式の場内はスクリーンサイズと客席の規模感がちょうど良いのが特長的だ。上映作品としては東宝をメインとした子供向けのアニメが強い。駅に近いからだろうか、車を利用されないシニア層と若年層が多く、リニューアルのこけら落としで上映された“ダイハード3”が、いきなりの大ヒットを記録するという、幸先の良いスタートを切る。









新聞広告も3館合同で出すなど、街の映画館で映画を観ようという気運を盛り上げようとしている動きに、地元の百貨店や商店街も協力的だ。子供向けアニメを上映する時期には、保育園に上映作品のぬりえを配布して、子供たちの作品を山陽百貨店に展示するなど、映画館に親しんでもらう施策を積極的に行っている。
現在は駅前を中心に再開発が行われており、まさに街全体が変わってくる過渡期に姫路市は差し掛かっているようだ。「本当だったら平日の仕事帰りに映画を観てもらいたいサラリーマンやOLさんが、職場の近く(神戸、大阪)で観てしまうのです」映画館と街が連携することで、もっと街を楽しんでくれる若者が増えてくれるはずと中山氏は期待をしている。「映画館というのは本来、人が集まる場所なのです。街に来ればその人たちは必ずどこかに寄ってくるはずなんですから。そういう意味では映画館は強い商業施設だと確信しています」
(2013年8月取材)


【座席】 『OS1』206席/『OS2』111席/『OS3』111席 【音響】 5.1ch

【住所】兵庫県姫路市駅前町254OSビル6F ※2016年1月31日をもちまして閉館いたしました。


  本ホームページに掲載されている写真・内容の無断転用はお断りいたします。(C)Minatomachi Cinema Street