穏やかな気候に恵まれた瀬戸内海に面した造船の街―広島県・呉市。明治22年に旧海軍の鎮守府が置かれ、軍港として発展。海軍兵学校と戦艦大和が作られた街として今でも多くの観光客が季節を問わず訪れている。また、最近では“男たちの大和”や“海猿”のロケ地として知られているが、昭和40年代は何と言っても“仁義なき戦い”シリーズのロケ地として全国に名を轟かせた。かつては、造船業に携わる人々や自衛隊関係者、学生で賑わっていた街も、他所の地方都市と同様に高齢化が進み、港の反対側にあるアーケードも最盛期に比べると、どこか寂しげな印象を受ける。かつて、海の男たちの娯楽のひとつであった数十館あった映画館も今では2館を残すのみとなってしまった。その内のひとつ…昭和61年にオープンした衣料雑貨ストア“ポポロ”の4階にある2スクリーンを有する映画館『呉ポポロ』は、子供からお年寄りに至るまで地元の人々に愛され続けている小さなシネコンスタイルのロードショウ館だ。







当初、パチンコ屋と単独の映画館だったコチラの場所に衣料雑貨ストア“ポポロ”設立の計画が持ち上がった時、近くにあった“サン劇場”という映画館が火事で焼失してしまったため、“ポポロ”の中に映画館を設置する事が計画の中に取り込まれたという経緯がある。さすが、買い物帰りのお母さんや若い女性客様が多い劇場なだけに、ワンスロープ式のレッドとブルーに色分けされた2つの場内は時代を感じさせない清潔感溢れる落ち着いた雰囲気を漂わせている。ロビーも奥行きがあり、ゆったりと待ち時間を過ごせるのが特長的だ。上映作品についてはフリーブッキング制を導入しており客層に合わせて、同経営の近くにある映画館“呉シネマ”と、作品を入れ替えたりする等連携を図っているが、若い女性向けの作品は『呉ポポロ』がメインで上映されている。そんな中で、近年公開された“海猿”のロケ地だった事から羽住英一郎監督が舞台挨拶に訪れる等の話題を振るい、県外からも多くの観客が詰めかけたという。


また“男たちの大和”も臨場感を味わいたい…という多くの映画ファンが殺到し、劇場が立ち見客で溢れ返ったという。その光景を見た支配人の新氏はこう語ってくれた。「昭和40年代、この周辺は歓楽街でしたから、やくざ映画や戦争映画は盛況で、映画館の扉が閉まらない程の立ち見客で連日賑わっていたものです。それが時代の流れでしょうか…数十館あった劇場も次々と閉館していき…ですから、映画館に人が殺到する雰囲気を久しぶりに思い出しましたよ」劇場のオーナーが“赤字でも映画館は存続させる!”という、心強い考えの持ち主であるという。そうした映画人がいる限り、呉の街から映画の灯は消える事はないだろう。(2008年10月取材)

【座席】『ポポロ1』100席/ポポロ2』150席
【音響】SRD-EX

【住所】 広島県呉市中通3-5-3 【電話】 0823-24-6609






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