瀬戸内海に面した中国地方最大の都市―広島。JR広島駅より市電・宮島線に乗り換え相生通りにある立町駅に降り立つと、中国地方最大規模の客席数を誇る映画館『広島スカラ座』がある。周辺には県庁、市民球場、広島城、美術館…といった公共施設が建ち並び、市の中心部を流れる太田川には、たくさんの観光客が訪れる平和記念公園と世界遺産“原爆ドーム”が数十年の時を超え、静かに佇んでいる。

劇場の歴史は古く昭和33年に“朝日会館”という館名で現在の朝日ビル7階にオープン。当初は映画館としての機能の他に講演会や発表会にも利用出来る多目的な役割を担っていた。平成15年8月に“朝日会館”が長い歴史に幕を下ろし、別の場所にあった『広島スカラ座』(昭和41年オープン)が運営を引き継ぎ、現在に至っている。「“旧スカラ座”の360席から現在の800席を超える劇場になってしまい、扉を閉めに行くにも歩く距離が変わったので、感覚を覚えるのにしばらくかかりました(笑)」と語ってくれた支配人の中村宏氏。言葉通り、オフィスビルの中にある映画館とは思えない。贅沢なまでに場内は広く、開放的な高い天井は、コンサート会場のようだ。


今では数少なくなった2階席分の高低差のあるスタジアム形式の座席はどこからでも観易く、大劇場が少なくなって来た昨今、往年の映画ファンからは多大な人気を博している。エレベーターで7階に上がると目の前に広がるシックなロビー。渋い木目調の壁面と天井の照明が映り込む光沢のある床が、大劇場が有する高級感を漂わせている。ロビー両サイドにある階段を上がると、そこにも休憩スペースが設けられており、ちょうど座席の後方に位置する重厚な木目の扉から入場すると場内全体が見渡す事が出来、劇場の大きさに圧倒されるであろう。年輩のお客様が多いコチラは、大きなスクリーンで映画を親しんで来られた映画ファンに圧倒的な支持を得ている。上映作品は“丸の内ピカデリー1”系列の松竹洋画系をかけているが、大スクリーンの迫力を充分に活かせるアクション大作は、やはり人気が高い。


一度コチラの巨大スクリーンを体感すると臨場感ある映像にリピーターとなる方も少なくない。最近のヒット作としては“ラストサムライ”で、朝から最終回まで全席満員となったという程。ちなみに“朝日会館”からの記録としては“タイタニック”が更に上を行く入場者数を誇り、広いロビーに何重もの列が輪を作り、その列は階段にまで伸びたという。近年、郊外にシネコンが増えてからファミリーピクチャーが弱くなってきたというものの、周辺を官公庁やオフィス街に囲まれている場所柄、大人向けの作品は人気が高いというわけだ。平日の最終回にはOLやサラリーマンの姿が目立つのもコチラの特徴だ。

他にも“硫黄島からの手紙”では幅広い年齢層が訪れる等、歴史超大作には圧倒的な強さを見せている。“硫黄島からの手紙”の公開時に、広いロビーを活用して実際に硫黄島から届いたという当時のお手紙の展示をしたという。「たまたま広島県在住の方で、お父さんが硫黄島に兵隊として配属されていたという事で、硫黄島より届いたお父さんからの手紙を快く提供していただいたんですよ」










他にも戦後、戦没者の家族が硫黄島に行く機会があった時に撮影された現地の写真も一緒に展示を行い、来場された方々は映画だけではなく本物に触れる事で、貴重な体験を出来たと喜ばれていた。「ただ…」と、中村支配人は続ける。「映画館は、あくまでも文化事業でありつつも商売としてやっている事ですから、実在のお手紙を展示をする事は果たして良いのだろうか…という意見もありました。ですが、お客様に戦争の悲惨さを実感していただいたので良かったと最終的には思っています」こうした戦争を扱った映画に対して広島は他所の街とは違う思いを持っているのは間違いない。「街の中心に“原爆ドーム”という聖地があり、妙にはしゃげない…という現実も確かにあるのです。広島は、常に平和を発信しなくてはならない…それを背負っているが故に娯楽に対して、どこかで構えてしまう部分があります」取材後、映画館から歩いて5分ほどの場所にある“原爆ドーム”の前に立った時、中村氏の言われた言葉が理解出来た気がした。(2008年9月取材)

【座席】828席 
【音響】SRD・SRD-EX

【住所】広島県広島市中区基町13-7朝日ビル7F
※2009年9月6日をもちまして閉館いたしました。

 

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