渋谷、新宿と並ぶ東京のターミナル駅─池袋。ココに集まる人々は流行り廃りで訪れるのではなく昔から池袋を拠点にして生活圏の一部としてこの街を利用している。沿線の高校生たちはショッピングや遊びの場を地元である池袋に求め、ココを自分たちの聖域としているのだ。そんな池袋で若者たちが多く訪れる場所となっているのが東口からサンシャイン60に向かって走る通称“サンシャイン60通り”。ココにはティーン向けのファッションから娯楽施設まで所狭しと軒を連ねている。休日は勿論、平日の午前中から何故か制服姿が見受けられる通りだが…この通りにはもうひとつ全国でも数少なくなった映画街という側面もある。元々、昭和初期の池袋には近隣に撮影所があったため興行が盛んな土地でもあり、戦後は名画座の街として知られるようになった。最近は郊外のシネマコンプレックスや都心の再開発の波に押されて観客数の伸び悩みが問題になっていた。そんな池袋の映画館が映画街の再生を掛けてひとつの転機を迎えている。

1982年12月1日にオープンした東京テアトルが経営するロードショウ館『テアトルダイヤ』はちょうど“サンシャイン60通り”の中央に位置するホテルテアトルの地下1階にある。上映作品は多岐に渡り全国メジャー系の作品からムーウ゛オーバー、単館系…そして春・夏・冬休みのシーズンには東宝系の子供向け番組をプログラムされている。それだけに来場者層も幅広く、まさに子供からお年寄りに至るまで多くの方が訪れている劇場だが、池袋という土地柄か中高生の姿が目立つ。ここ数年で一番動員数が多かったのが圧倒的に中高生に支持された“電車男”という事からも、その世代の層が多い事がうかがえるだろう。事実、平日の初回から劇場前には長蛇の列が出来る程の反響を見せていたという。

各々の映画館が協力して2003年に“池袋シネマ振興会”を設立。共通の割引制度の導入やサービス等を展開し映画の街として生まれ変わろうとしている池袋。「“池袋シネマ振興会”によって今までライバル関係だった映画館同士が協力し合って池袋を盛り上げていこうとしているところです。実際、ウチの劇場がある“サンシャイン60通り”には3つの映画館─11スクリーンがあるわけですから出来るだけリーズナブルな価格で映画を観てもらって映画館の梯子もしてもらえたら…と、考えているのです」と語ってくれたのは劇場スタッフの杉本学氏。池袋にある全ての劇場で2004年3月から発行された季刊フリーペーパー「buku」を毎月29日(ブクの日)に持参すれば料金が1000円になるサービスを始めている。「こうした活動によって池袋を映画の街にしていこうというのが映画館だけではなく豊島区とも協力し合ってロケ誘致を行う等新しい動きをこれから展開しようと思っています」という言葉通り池袋の映画館が共通のサービスを行う事によって街自体が巨大なシネマコンプレックスとなって街を巻き込んだ大きな映画街が誕生する日も近いかも知れない。



サービスに関してはコチラの劇場を運営されている東京テアトル全館で行われている会員組織“CLUB C”がある。入会金3150円でテアトル系列の劇場がいつでも1000円で観賞が可能となり、更に映画1本につき1ポイントが加算され10ポイントで1本映画が無料となる等ファンには何とも嬉しいサービスが充実されている。他にも劇場が入っているホテルテアトル宿泊者には劇場を割引価格で利用出来るサービスがあるので、ホテルを利用される方はフロントで是非問い合わせてもらいたい。
場内はワンスロープ式だが勾配が激しいため前列の頭が気になる事は無い。フィゲラス社製の座席は座り心地が良くスクリーンの高さに合わせた角度がついているため快適に映画を観賞出来る。「出来るだけお客様が心地よく映画を御覧頂ける環境を作っていきたいと考えております。それはサービスも勿論ですが、せっかく良い映画を観ても私たちスタッフの対応一つで台無しになってしまう事もあるわけですから…。お客様が映画と一体となって映画の世界に入り込んで、初日に場内で拍手が起こる場面に出くわす度に、こういった雰囲気を大切にするのが私たちの使命だと思います」と杉本氏は最後にこう結んでくれた。
(取材:2005年6月)

【座席】 204席
【音響】 DTS・SRD

【住所】 東京都豊島区東池袋1-21-4ホテルテアトル地下1階
2011年5月29日を持ちまして閉館いたしました。

 
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