若者が集まる流行の中心地─渋谷。まだ現在のような渋谷が形成される以前、昭和28年11月宮益坂口にオープンした“渋谷東映”は地元映画ファンにとって娯楽の場所であった。駅から歩いて2〜3分、駅の反対側というだけでハチ公口ほど混雑しない格好の場所…永い間、そんな渋谷っ子たちに親しまれて来たこの映画館も平成5年2月に2館の映画館を持つビルに生まれ変わった。ビッグカメラやマクドナルド等が入った“渋谷東映プラザ”の7階と9階に在る『渋谷東映劇場』と『渋谷エルミタージュ』である。その名が示す通り東映の直営館である『渋谷東映劇場』が邦画系『渋谷エルミタージュ』が洋画系を中心にラインアップを組まれている。今年6月に目の前にあった“渋谷東急文化会館”の閉館に伴いそれまで“渋谷パンテオン”で上映されていたルーブル系の作品が『渋谷エルミタージュ』で引き継いで掛けられる事となった。渋谷だから若者がメインかと思うと東急東横線と田園都市線が乗り入れているせいかお客様の層は意外と幅広い。「渋谷という街に集まるのは若者が中心ですが住んでいる方々はお年寄りが多いんです。また乗り入れている2つの沿線には比較的映画館が少ないので大体、渋谷か横浜のいずれか近い方に流れているというのが現状です。」と語ってくれたのはスタッフの千葉隆昭氏。

渋谷はファミリー向けが弱いというイメージがあるが、実はそんな事はないらしい。「確かに若者向けの作品はダントツで渋谷が強いのも事実です。特に最近では窪塚洋介の作品をやるとセンター街に来た若者がそのまま流れて来ますから…」。『渋谷東映劇場』のヒット作としては13週のロングラン興行となった“失楽園”が第1位、続いて“鉄道員ぽっぽや”と上位を占めているのは中高年に高い支持を受けた作品という結果を見てもコチラが幅広い客層に支持されているというのが解るだろう。「残念な事に“バトルロワイヤル”は全国で週の動員数が1位だったにも関わらず次回作の公開スケジュールの都合で4週間興行というのが悔しかったですね。同じ期間やっていれば間違いなく記録を塗り替えたんでしょうけど…」と思いを語る。他にも“GO”“凶気の桜”などティーン向けの作品は全国的にコチラが動員数で上位にランクされている。


特に“凶気の桜”は渋谷が舞台になっていただけに多くの若者が詰めかけたという。(ちなみにコチラのビルでもロケを行ったそうだ)また、子供たちの休みシーズンとなると東映アニメフェアに多くの家族連れが来場し、ロビーは子供たちの歓声で盛り上がりを見せる。
一方『渋谷エルミタージュ』のヒット作としてはダントツで“L.A.コンフィデンシャル”。「この作品が公開された97〜98年は洋画の当たり年で、2位の“恋愛小説家”“ベストフレンズ・ウエディング”“ピースメーカー”と殆ど上位を占めています。ただ“ピースメーカー”の初日は東京で大雪が降りまして山手線が全線ストップしてしまい最終回の上映が出来なくなってしまったんです。後にも先にも上映を休止した初日はあれだけで…それだけに印象深い作品でしたね」
1階のチケット窓口からエレベーターで各々の館に上がると上品なロビーが広がっている。大理石を使用した壁面や柱には重厚感があり何とも贅沢な気分を味わえる。また身障者(同伴者1名まで1000円で入場可能)向けのスロープやトイレなどバリアフリーの設計が両館とも施されている。ワンスロープ式の場内はビルの中にある映画館とは思えないほど天井が高く開放的でシートの座り心地は抜群だ。
「渋谷パンテオンの閉館に伴って多くの観客が流れてくるのが予想されるのですが…その受け皿としてお客様にいかに満足していただけるかというのが大きな課題です。忙しくて対応が悪くなったと言われないようにしないと、結局は同じ映画をやっていたらお客様は自分の好きな劇場を選びますからね。そうなると接客や施設のメンテナンスに一番気を使います」と言う千葉氏。「映画館にいらっしゃるというのは映画の内容を知りたいのではなく映画館で観たいから来られるんですよね。だとしたらやはり我々の責任は重大です」と最後に語ってくれた言葉が印象に残った。
(取材:2003年6月)

【座席】 『渋谷東映劇場』410席/『渋谷エルミタージュ』302席 【音響】 DS・SR・SRD(エルミタージュのみ)SRD-EX

【住所】 東京都渋谷区渋谷1-24-12 【電話】 03-5467-5773

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