老舗デパートが建ち並びショッピングの街として栄え、若者から年輩の方まで幅広い年齢層の人々が集う街─銀座、有楽町。夜になると、きらびやかなネオンサインのイルミネーションが通りを華やかに照らし出す。渋谷が若者を中心としたサブカルチャーの街とすれば、ココは本物だけが持つハイソサエティーな街だ。そして、映画の街として古くから親しまれてきたもうひとつの顔…戦前から映画という文化の灯を灯し続けてきた場所。JR有楽町駅前にあった日本屈指の大劇場“日劇”は映画、舞台、音楽と永い年月数多くの名作を送り続けてきた。


昭和16年に歌手、李香蘭が舞台に立った時は長蛇の列が劇場の前にできたという逸話を残している。そんな“日劇”が駅前再開発によって閉館し、1984年“有楽町マリオン”として生まれ変わり、かつての“日劇”の名を受け継いだ映画館が3館、このビルの中に誕生したのだ。各々、東宝が直営する映画館のチェーンマスター館である3館は正に日本映画興行界において最高峰に位置する劇場で11階にある“日本劇場”は常に洋画の大作、話題作を送り続けている。9階にある2館“日劇東宝”は東宝邦画を、そして“日劇プラザ”は“日本劇場”同様に洋画を中心としたプログラムで幅広い年齢層に親しまれている。オープンしてから18年目、2002年の3月に『日劇PLEX 日劇1・2・3』と館名を新たに全館リニューアルした。

“ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ”でオープンした“日本劇場”『日劇1』で上映される映画は日本全国の映画館が掛ける作品の判断基準となる程で、なかなか試写を観る事が出来ない地方の映画館主は「日劇1で掛かるなら…」という理由で上映するか否かを決めると言われている。「それだけに我々に課せられた責任は重いですね。」と複雑な表情を見せる劇場スタッフの別所嘉之氏。「やはり東宝の大黒柱ですからね。その名に恥じぬようにサービスにしても作品にしても気を抜けないです」同時に、コチラに来場されるお客様が“映画を観るならココ”とこだわりを持っている劇場固定の─いわゆる映画館に対して目の肥えたファンばかりである事から、常に最高の環境を提供して満足させなくてはいけないという使命も同時に背負っている。“日劇”ファンの多さはリニューアル前の最終作品だった“地獄の黙示録完全版”に、数多くのファンが詰めかけた事でも計り知ることが出来る。そんな最高峰に位置するコチラのヒット作は何と言っても“タイタニック”を筆頭に“ターミネーター2”“ロボコップ”“インディー・ジョーンズ最後の聖戦”など…どれもが大作という名に応わしいラインアップばかりだ。ロビーはビルの中の映画館とは思えないほど豪華な作りで2階に上がる壁面に飾られているステンドガラスは劇場の顔になっている。



かつて平成ゴジラが“有楽町マリオン”を破壊するシーンで正にその現場で観ていた観客は臨場感溢れる映像に歓喜した“日劇東宝”『日劇2』。“おはん”でオープンして以来数多くの東宝が製作した邦画を送り続け“踊る大捜査線”を筆頭に“タスマニア物語”“稲村ジェーン”“Shall We ダンス”“リング”などの名作から“ドラえもん”“クレヨンしんちゃん”“ポケモン”などの子供向け映画に至るまで幅広いラインアップで日本映画界をリードしている。「やはり夏、冬、GWの子供向け作品は安定していますね」という言葉通り子供の休み期間中は、コチラの劇場は子供の城になってしまう。日本映画を専門にしているコチラの名物として有名なのは、やはり初日舞台挨拶の多さ。「まず間違いなく初日は舞台挨拶などのイベントは行っています。確かに舞台挨拶がある回は混雑するのでお並びいただく事になりますが…作品によっては前の回の上映終了後の出演者挨拶だけを立見でご覧いただいて次の回を座って鑑賞することも可能ですから、そういったチャンスを見つけてもらえたらと思います」という裏技で、その時しか聞くことが出来ない舞台挨拶を要領良く観る事にチャレンジしてはいかがだろうか。

『日劇2』とガラスの仕切で左右対象となっているのが“日劇プラザ”『日劇3』だ。コチラでは洋画の中でもアクション大作というよりもディズニー映画を代表にカップルで観たいデートムービー中心で作品構成されている。代表作も“恋に落ちたシェークスピア”や“美女と野獣”“スターマン”“コクーン”などファンタジー性の強い作品群がラインアップ、客層としても同じ洋画を掛けている『日劇1』に比べると年齢も比較的若くカップルで来られる方も目立つ。『日劇1』は前列がワンスロープ形式、中央から後ろは段差のついたスタジアム形式となっている。『日劇2・3』は共にワンスロープ形式の劇場構造。全館リニューアルして客席数を若干、減らした分座席の幅にゆとりを持たせ(カップホルダーも新たに設置)、音響も最新の設備を導入するだけではなく場内の壁に吸音材を施し音の反響は以前と比べて格段に向上された。勿論、スクリーンサイズは以前のままで最高の音響を大画面で堪能できる。




また、売店もスペースを広く取りメニューも充実させるなど映画を楽しむ環境としては最高の物を提供している。割引サービスとしては水曜レディースデー、映画の日(1000円)は勿論、東宝全館で行っている金曜日のファーストショウ割引(1300円)も好評のサービスだ。「コアな映画ファンから昔の日劇世代、そして若いカップルから家族連れに至るまで幅広いお客様がいらっしゃいますから、誰もが楽しめる…そんな空間を作っていく努力をしていかなくてはならないと思っています」と、別所氏の言葉通り老舗の大劇場はより良いサービスを常に模索し成長し続けている。(取材:2002年5月)


【座席】『日劇1』948席/『日劇2』668席/『日劇3』524席 【音響】DS・SRD・DTS・SDDS・ESS

【住所】 東京都千代田区有楽町2-5-1 有楽町マリオン内 ※2018年2月4日を持ちまして閉館いたしました。

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