春は満開の桜が艶やかに咲き誇り、初夏になると目にも鮮やかな若葉が涼しげな上野公園。古くから東京の名所として親しまれている公園に隣接する『上野スタームービー』は昭和27年“上野スター座”としてオープン。大蔵映画の直営館であるコチラの劇場は洋画ロードショウ館として下町の映画ファンの憩いの場所でもあった。それから大蔵成人向け映画の封切り館として上野の夜を照らしていたが、平成11年リニューアルオープンして現在の館名となり“渋谷東急3”系列のチェーンとして洋画・邦画のロードショウ作品を贈り続けている。

「昔は上野にも、たくさん人が来ていたのですが今ですと映画を観る若い人は、みんな有楽町に流れてしまって…やはり若い人を呼べる劇場にならないとダメですね…でも」と支配人の佐々木辰雄氏は語る。



「一度来てくれたお客様は、このロケーションを見て“また来ます”とアンケートに書かれていく方が多いですよ。おかげで、最近リピーターの方が少しずつ増えていますね。一度来られれば満足して帰っていただける劇場だと自負しています」という言葉通り公園に面して建っているオシャレな外観や、映画を観終って公園を散策…なんていうのも映画の余韻を楽しむ最高のコースなのだ。リニューアルしたばかりの場内はベストの状態で映画を鑑賞するための配慮が随所に施されている。スクリーンはかなり高い位置に設置されているので前の人の頭が邪魔にならず、座席も座り心地の良いシートにグレードアップされている。また、スクリーンを中心に同芯円に座席が配置されているので一番端の席に座っても画面は観やすく工夫されている。

ロビーは明るく開放的で天井に設置されているモニターからは最新作や次回作の予告編が流され、元々は単館系の作品を掛けられていただけあってミニシアター並みのチラシを置いているのが特徴的だ。開放された入口からは涼しい公園からの風が入り、実に快適。また、サービスとして平日に来場されたお客様にはコーヒーの無料サービスを行っており夏場にはアイスティーがサービスされるなどちょっとした気配りがウレシイ。「元々、ウチは成人映画専門館でしたから、成人映画をやっていた頃はスタッフとお客様との間に会話があったんですよ。その頃からのスタッフですから、お客様との接し方には自身がありますね。」劇場で取られているアンケートにもその評価はしっかりと表われており気分良く劇場を後に家路に着くファンは数多い。ちなみにコチラのアンケートに答えると毎月10名の方に招待券を進呈しているというのも心憎いサービスだ。下町から遠くは千葉、埼玉からもリピーターが増えているのも頷ける。




『上野スタームービー』の横の階段を2階に上がるとそこにも小さな映画館がある。昭和51年に設立された成人映画専門の『日本名画劇場』は以前と同様大蔵映画のムーヴオーバー館として今も変わらない顔を持っている。ただ珍しいのは上映システム…国内でもコチラだけと言われているビデオプロジェクターによる成人映画ビデオシアターであるということだ。一方、その隣にある『世界傑作劇場』は都内唯一のゲイ映画専門館として有名。館名の通り設立当初は洋画専門の名画座だったのだが今から15年ほど前に現在のスタイルに変わった。勿論、客層はそちらの趣味の男性客ばかりで「どちらかというと劇場で相手を探しに来るお客様が多いですね。」と言われるように入場する時は一人だが帰る時は二人で…という姿が良く見られる。どちらの劇場もユニークな上映システムを採用しており、通常客席の後からスクリーンに映像を投影するのだがコチラではスクリーンの裏側から映像を逆、又は鏡に反射させて投影している。「劇場が狭いために編み出した劇場なりの工夫ですよ。」と笑いながら話す支配人は最後に「映画館というのは物を売る商売じゃないですから、気持ち良く映画を観てもらって気分良く帰ってもらうということが大切なんです。だからスタッフの対応の良さが一番のサービスでそれ以上のサービスは無いんです。」と付け加えられた言葉を裏付ける様に接客しているスタッフの笑顔が印象に残った。(取材:2001年11月)

【座席】『上野スタームービー』141席/『日本名画劇場』40席/『世界傑作劇場』46席
【音響】『上野スタームービー』SRD/『日本名画劇場』VT

【住所】 東京都台東区上野2-13-6  2009年3月31日より休館。現在は『上野オークラ』としてリニューアルしています。


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