東急東横線の綱島駅…横浜と渋谷の間に位置するこの街は大正時代に温泉が出た事から温泉街として発展してきた。また川崎市に隣接しているからだろうか、安くて旨い昔ながらの定食屋から一杯飲み屋が軒を連ねる歓楽街というイメージが強い。近年では新しい専門店が出来始め、学生と地元住民が親しむ生活の拠点となっている。そんな綱島駅西口から歩いて5分ほど…商店街を抜けた辺りにタバコ屋が目印という珍しい外観の映画館『綱島映画』がある。交通量の多いメインから一歩、内側に入っただけで映画館があることを見過ごしてしまいそうな閑静なたたずまいの一画だ。その中にある『綱島映画』は昔も今も街の映画館として地元住民から親しまれ続けている。子供たちの休みの期間に上映されるアニメフェアなどには、子供を連れたお母さんが買い物の途中に立ち寄っては子供だけを預けて、その間に買い物を済ませてしまう…なんていうホノボノとした光景が見られるのも地域密着型の劇場の特徴だ。

元々は綱島駅の反対側・東口にあった昭和22年5月に創業した客席450席を有する大映と松竹の専門館“綱島クラブ映画劇場”が前身。昭和41年に現在の場所に“綱島中央劇場”という館名で東宝と東映の専門館を立ち上げた。その後、このふたつの劇場を統合して多摩商事が運営する“綱島クラブ”となったのは昭和43年。そして、現在の運営会社である多摩興産株式会社が経営を引き継ぎ、『綱島映画』として再スタートを切る。「元々、綱島という街は住宅地という生活圏でありながら、かつては飲み屋などが建ち並ぶ歓楽街でしたから…それが時と共に街の様子も変化して、我々劇場も上映作品をそれに合わせて変えて来たんです」と語ってくれたのは劇場担当の南雲喜一氏。日本映画の斜陽期と呼ばれていた昭和40年代には二番館や日活ロマンポルノの三本立で苦しい時期を乗り越えた事もあった。


昔は必ずと言っても良いほど、ひとつの街に映画館が存在していたものだった。近隣の駅から映画館が減ってきつつある現在も尚、あらゆる世代の地元の人々に親しまれている劇場がココ『綱島映画』なのだ。場内はスクリーンが、かなり奥に設置されているせいか最前列でも観やすいのが特長で座席背持たれの頭の部分に付いているクッションのおかげで深く腰を下ろしても快適に映画を観る事が出来る。夏・冬・春休みとなると“東映アニメフェア”や“東宝”の特撮・アニメなどを上映し場内は子供たちの笑い声や歓声で溢れかえる。通常は邦画・洋画を問わずロードショウ作品を上映するものの、たまに都内で終了した作品のムーヴオーバー館として延長上映されたりする。

「結構、気付かない内に終了してしまって、観たかった映画を上映している劇場を探しているお客様にはありがたいと評判です」と南雲氏が語る通り、見逃してしまった洋画などには滑り込んで来られる方が多い。やはり、休日はファミリー層が圧倒的に多く両親に連れられた子供たちの姿が目につく。平日は逆に、学生・シニア世代がメインとなり特に中・高年齢層の方々が多い。「ウチではシニア割引を実施していますけど、やはりシニアの方が以前と比べると多くなりましたよね」コチラではシニア割引をロードショウ作品では1000円から1200円で設定されているが、ムーヴオーバー作品では小学生料金まで割引をされるというのだから年輩の方にはありがたいサービスだ。勿論、毎週水曜日のレディースディ割引も行っているので地元に住む主婦層には好評なサービスのひとつだ。「まだまだ設備面やサービス面で強化していかなくてはならない課題が多いですがお客様に満足していただける所から少しずつ改善して行こうと考えています」と最後に南雲氏は語ってくれた。(取材:2001年8月)


【座席】 180席 【住所】 横浜市港北区綱島西2-7-24 ※2005年5月16日を持ちまして閉館いたしました。

本ホームページに掲載されている写真・内容の無断転用はお断りいたします。(C)Minatomachi Cinema Street