東京の下町文化を今も残し続けている浅草。昔は浅草映画街として多くの映画館が建ち並んでいた浅草六区も今では数も減り数館を残すだけとなった。それでも浅草に映画の灯を灯し続けている劇場がある。昼間は通常の東宝ロードショウ封切り館、しかし土曜の夜には昔懐かしい東宝の名作を4本立でオールナイト上映している『浅草東宝』。「大体古い映画を中心にかけているから、プリントが残っていないとか、運良くあったとしても上映に耐えられない程、劣化している作品が多くて選定には苦労してますよ。」と笑いながら語ってくれたのは支配人の飯山栄一氏。オールナイト興行を始めたのは今から30年も前からだという。「昔の映画は単純だから面白い。毎週楽しみにして来てくれるお客さんがいる限りやめられませんよ。」オールナイトは固定のお客様が多いが、特集によってはガラリと客層が変る。吉川浩司特集を組んだ時は場内を若い女性で埋め尽くしてしまったとか…。それでも一番の人気は往年の大物スターが出ているヒット作だという。また、毎年恒例の大晦日に行われるクレイジーキャッツ特集では場内は溢れんばかりのファンで満席となる。「やはり浅草寺が近いせいでしょうか、初詣を終えた方が朝まで映画を観て、まぁ笑って年を越そうっていう感覚で来られるんでしょうね。」


▲客席数575席の大画面に大スター三船敏郎、美空ひばり、百恵ちゃんが蘇る。
浅草という場所柄か、古くから浅草に住んでいる年輩のファンや場外馬券売り場が近隣にあるため、朝まで映画を楽しんでその足で日曜日のレースに挑まれるギャンブラーに至るまでオールナイトのファンは実に幅広い。「昔と違って昼間の興行はあまり人が入らなくなったのですが、その変りオールナイトはある程度席が埋りますので、それだけ人気があるんでしょうね。」昔と変ったのは映画だけではない。「浅草自体、夜が早くなりましたよ。今では夕方6時頃になると人通りも少なくなって…そういった意味でもオールナイトが活気付いてくれるのはうれしい話しです。」と複雑な心境…「浅草も昔は映画の浅草と言われていたぐらい通りも人だかりで歩けない程だったんですけどね。とは言ってもまだまだ映画は浅草じゃなくちゃと思っている人もいるわけですから。」やはり往年の浅草ファンにとって、この場所はまさしく映画の聖地なのだろう。古き良き時代の名画をロードショウ館の大スクリーンで観る…当時を思い出しながら映画を楽しむ…こんな贅沢は『浅草東宝』だからこそ出来るのだ。「オールナイトの…と言うよりも映画の良さを解ってくれれば良いなと思っています。毎週、土曜の夜を楽しみに足を運んでくれるお客様がいてくれるのが一番ですね。」と語る支配人の表情は明るい。ちなみにオールナイト料金は4本立で1400円と格安。しかも劇場で発行している“楽天地ニュース”を持ってくれば1200円で観られるのだから是非、利用したい。


『浅草東宝』の昼の顔…その名の示す通り東宝邦画系ロードショウ館として数々の新作を贈り続けている。春休み・夏休みにはアニメを中心とした子供向けに人気が集中、遠くは春日部から子供を連れて朝早くから来場されるお母さんの姿がよく見られる。浅草という町をブラブラ歩きながら映画の帰りには美味しいものを食べるのも良い。また、浅草情緒に浸りながら散策するのもオツな映画の鑑賞方法だろう。「明るく楽しい東宝映画」の看板の下1階の扉を開けると浅草東宝のネオンが輝き毎土曜日のオールナイト・スケジュールが掛かっている。エレベーターを上がって自動販売気でチケットを購入して場内へ入ると客席数500席以上の大劇場が姿を現わす。映画という文化を支え、ずっと映画の歴史を見守ってきた劇場だ。「ウチは座席数が多いですから、映画も観応えありますよ。ただ平日の昼間、あまり人が入っていない映画だと寂しくなってしまいますね。」と苦笑いを浮かべる支配人だが…「それでも映画館で映画を観る良さっていうのはテレビでは味わえないですよ。当然、お金を払って観るからには真剣に映画と向き合って観ますよね。そこにブラウン館では観られない発見があるのではないでしょうか。」映画の面白さは、細かい所にまで気を配っている事。雑音の無い異空間で体験出来る贅沢は映画館だから可能なのかも知れない。(取材:2001年3月)


【座席】 575席 【音響】 DS
【割引】 レディースデー(水曜日)1,000円
     映画サービスデー(毎月1日)1,000円

【住所】 東京都台東区浅草2-6-10 ※2006年2月13日を持ちまして閉館いたしました。


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