韓国の首都ソウルから30分、仁川国際空港への幹線道路にあるベッドタウン“富川市”。人口80万人の巨大な街は今、映画の街として注目を集めている。2004年で8回目を迎えた「富川国際ファンタスティック映画祭」は韓国のみならずアジア中から多彩なゲストが来場する韓国トップクラスのイベントとなった。こうした映画祭の成功をきっかけに“富川市”は映像文化都市として新たな産業興しを行ってきた。その計画のひとつとして作り上げられたのが『富川ファンタスティック・スタジオ』である。

オープンセットとしては国内初の試みだと言われるコチラの施設は、京都にある“東映太秦映画村”を参考にして2002年に完成し、2年間で約450万人の入場者数を記録。1950年代の街並を再現した巨大なオープンセットでは今年日本でも大ヒットした「ブラザー・フッド」や2005年公開予定の日韓合作の超大作「力道山」の撮影が行われた。特に日本でのロケ地がないため看板などを当時(昭和)の日本の物に変更して撮影された「力道山」は、その殆どがコチラの施設を利用している。他にもテレビドラマやCFの撮影にも利用される等、ここが新しいスタジオの中心地となりつつある。

一歩、施設内に足を踏み入れるとまるでタイムスリップしたかのような錯覚に陥る程、街の造形は看板や扉1枚に至るまで細部にまでこだわりをみせている。


街はいくつかのゾーンに分かれておりメインストリートとなっている路面電車が走る一角には所々に日本語の看板や国旗を確認する事ができる。当時、日本の文化が入り込んでいた街並を立体的に肌で感じる事によって、教科書では学ぶ事が出来なかった日本の軍国主義政策が色濃く街のあちこちに見られるため、観光として楽しむだけではない、自国の歴史を学ぶチャンスを提供してくれる。メインストリートを中心として左右裏路地には昔懐かしい映画館や場末の飲み屋…一方では庶民の生活感漂う商店や住居がしっかりと再現されている。

このメインストリートで撮影されたのが朝鮮戦争を背景に兄弟愛を描いた「ブラザー・フッド」の冒頭シーンであり劇中にも路面電車に飛び乗る兄弟の姿が描かれていた。「ブラザー・フッド」は3日間ココで撮影され4500万円を掛けたと言われている。時代や設定によって看板や外観を改装して全く違った街並を作り上げる事が可能であり、訪れる度に全く違った印象を受ける。「力道山」では日本の裏町を再現した長屋を作り上げ苦悩する力道山がドブ河に身を投げるシーンが撮影された。こうした撮影現場も上手くタイミングが合えば、近場で韓国の大スターを見る事が可能だ。

コチラの施設の建設費用と土地は全て“富川市”が提供。セットに関してはテレビ局の美術を担当している業者が全面協力するなど官民一体となって新しい映像文化を作り上げた集大成なのだ。現在は民間で施設を管理運営しており、オープンしてから2年足らずで映画4本、テレビドラマ4本が撮影されるなど大成功を納めたと言っても過言ではないだろう。(取材2004年7月)







  本ホームページに掲載されている写真・内容の無断転用はお断りいたします。(C)Minatomachi Cinema Street