かつて、池袋には映画に魅了された者たちが集まる伝説的な名画座があった。映画を志す学生や映画の世界に夢を抱く若者からお年寄りまでが足を運んでいた映画館─『文芸坐』。昭和30年に設立された2つの館から成るこの名画座では洋画と邦画を各々上映されており名物のオールナイトには映画というものにカタルシスを持った人間たちが、その世界に浸っていた。その特異なプログラムに現在、芸能界で活躍している俳優や映像作家もまた、スクリーンの向こうに何かを感じ、そこから巣だっていった。そんな名画座が建物の老朽化のため閉館と決まり、最後の日には『文芸坐』ファンが大挙して押し寄せて別れを惜しんだ。「必ず戻ってきますから、その日まで待っていてください」という言葉を残して平成8年、『文芸坐』は永い歴史の幕を降ろした。あれから4年─平成12年12月12日。約束通り『文芸坐』は『新文芸坐』となって戻ってきた。


そんな名画座の復活にファンは勿論、マスコミや映画人たちも待ちかねていたと言わんばかりに称賛の拍手を持って歓迎。名画座がどんどん消えて行くこの時代に新しく誕生した名画座『新文芸坐』はまたしても伝説を作ってしまったようだ。「やはり4年のブランクでお客様の層が変ってきた事は事実ですね。勿論、昔からの『文芸坐』ファンの方たちも大勢いらっしゃるんですけど…」と語る永田稔支配人は複雑な表情を見せる。「二本立てという映画の観方に慣れ親しんでいないお客様が多いんです…むしろ新しいお客様ですよね。中には“どういう風に二本立ての場合お金を支払ったら良いのですか?”なんて質問されたり、一本だけ観て帰られた後に二本観る事が出来ると気付かれて戻って来られる方もいらっしゃったり…以前では考えも付かなかった素朴な疑問を持たれているのがカルチャーショックでした」言われる通り、今は昔馴染みの古い映画ファンと名画座に初めて接する新しいファンが丁度、混在している状態なのだ。「映画の楽しい観方を知っている我々が新しいファンに正しい映画の楽しみ方を伝えていきたい」と語る支配人の言葉が顕著に現われているのが上映開始から30分過ぎた場合は次回上映まで待ってもらうというシステム。「せっかく同じ料金を払うのならば最初から観てもらいたい。例え場内がガラガラでもその姿勢は貫き通したいですね。初めて名画座に来られたお客様にも満足して帰ってもらえるような場を提供していかなくてはと思っています」



たしかに自由入場が当り前となっている名画座のシステムを新しくしていくには浸透するまで時間が掛かるかも知れないがベストな環境で皆が映画を楽しめるために、この姿勢は続けて欲しい。コチラの名物だったオールナイトも勿論、健在で土曜の夜は通常興行の他にゲストを招いてトークショーを交えながらゲストが選んだ作品を上映したりしている。「夜通し映画を観に来る人はやはり団塊の世代の方が中心。今の若い人はあまり見かけませんね。」と嘆く支配人だが「若い人に、もっと映画を知ってもらいたい」ということから現在、高校に劇場を提供して映画教室を開設するなどの企画を考えているという「映画の素晴しさを若い内に知ってもらえたらウレシイですね。映画館をマイシアター感覚で観に来てくれるようになれば…と思っています」コチラのサービスとして代表的なものに一年足らずで会員3500人を越してしまった程の人気を博す“友の会”がある。入会金1300円で半年間有効で入会時に招待券が進呈され入場料金1000円と格安で映画鑑賞が可能だ(特別・オールナイトは除く)。

会員の殆どを占めている程、女性の姿が多くなってきているが、それは紛れもなく新しくなった『新文芸坐』の施設が女性だけで来ても安心出来る明るく開放的な作りになっているからだろう。ロビーは自然光が充分に注がれる明るい造りとなっており、天井が高いせいかノビノビとしたムードが感じられる。エントランスには和田誠氏が描いたスターのイラストが壁面いっぱいに飾られているのが特徴的で、売店では映画関係の書籍からパンフレットのバックナンバーに至るまで充実している。場内は全てカップホルダーが設置、傾斜のついた座席によってどの位置からでも理想的な角度で映画を観る事が出来る。そして、何と言っても音響の素晴しさはコチラの自慢…ドルビーEXを完備しているから音の良さはロードショウ館並みだ。「復活を待っていてくれていたファンの方には本当に感謝しています。でも、これからですよ…ゼロからの出発と考えて新しいお客様にも今まで経験したことのない映画の観方を提供していくんだと姿勢を正してがんばらなくては」と語る支配人の言葉には映画ファンと共に歩み続けてきた歴史ある映画館の風格を感じてしまった。(取材:2001年9月)

【座席】 266席 【音響】 SRD-EX

【住所】東京都豊島区東池袋1-43-5 マルハン池袋ビル3F 【電話】03-3971-9422


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