夜の帳が落ちる頃…ネオンが瞬き仕事帰りのお父さんたちが、ちょっと一杯。そんな光景があちらこちらで見られる街。JR新橋駅の烏森口から2〜3分。浜松町方面へ向かってガード沿いに歩けば、すぐ見えてくる。ガード沿いに、ほんの少し歩くと見えてくるイイ味を出している『映画劇場』の看板が夜の目印。どこか懐かしく、そしてホっとさせられる懐かしい雰囲気が漂う映画館。そこが『新橋文化劇場』と『新橋ロマン劇場』だ。ハリウッドのアクション映画を中心としたプログラムを送り続けている名画座が『新橋文化劇場』。そして、にっかつロマンポルノの封切作品と再映を交互に3本立てで興行を守り続けているのが『新橋ロマン劇場』だ。

昭和32年の設立当時は三館体制でスタートを切り、現在ゲームセンターになっている場所(文化劇場の左隣)にニュース専門館があった。しかし、テレビの普及からニュース映画の人口が減り約20年前のリニューアルの際、閉館…現在の2館体制となった。「うちはJRのガード下っていう事もあって、あまり立地条件に恵まれているとは言えないんです。その分、料金を安くしてご覧いただこうと、低価格に設定しているんです。」と、語ってくれたのは、つい先程まで場内の掃除をしていた松坂芳男支配人。「低価格で観ていただく為には、経費をかけずにスタッフだけでなく私も何でもやりますよ。」と笑う通り場内の清掃は勿論、映写技師、もぎり、果てはフィルムの修繕に至るまでマルチに何役もこなしている。「うちは5割から6割が三、四十代のサラリーマン。平日はスーツ姿のお客さんが多いですよ。」と、言う様に早朝9時30分の回から会社員らしき男性客があちこちに見られる。


劇場の最大のウリは何と言っても低価格。900円で2本(文化劇場)、1300円で3本(ロマン劇場)が会員(入会金、年会費無料)になると300円割引で観られる。また、会員には誕生日の月には一ヵ月有効の招待券が送られてくるのがうれしいサービスだ。まだ入会されていない方は是非入会しよう。更に誕生日の月と、スタンプをためて劇場招待券をもらえるスタンプサービスも行っているので要チェックだ。『ロマン劇場』の方は年齢も広くなりサラリーマンからシニアの常連(男性ばかり)がメイン。「昔からの熱狂的なにっかつファンが多いんですけど、上野や池袋と違ってハードな(SM系)作品が受けるんですよ。ですからアンケートでも団鬼六、小沼勝の名前がよく上がりますね。」とは言うものの次第に上映出来る状態のフィルムが少なくなっているのも事実。上映前には支配人自らフィルムの修繕作業をしている。「ファンの要望とフィルムがある限り昔のにっかつ作品は上映していきますよ。」と力強く宣言してくれた。

高架下にある映画館だけに電車が通ると地鳴りのような音が聞こえるが、ファンにとってはこれも劇場のカラーだ。上映作品の苦労は『ロマン劇場』だけではない。「最近、純粋なアクション映画っていうのが減って来てますから、ミニシアター系のちょっと社会派の作品も盛り込まなくてはならないんですよ」以前のアクションオンリーだった頃に比べて女性客やカップルが増えて来たものの、昔からの常連さんからは“やっぱりアクションがいい”と厳しい指摘もあったりする。しかし、ここ数年で大ヒットを記録したのは意外にも“普通じゃない”と“ダイヤルM”だったという。「この時は連日立ち見で劇場内に入り切れず、初めて券売機を止めました。またあんな事があったら良いんですけどね」と、笑顔で語ってくれた支配人、最後にこんな言葉を述べてくれた。「映画館は誰にも邪魔されない自分だけの時間が持てる場所。そういった場所をお客様に提供できるというのが、この業界にいる誇りですよね」(取材:2001年2月)



【座席】 『新橋文化劇場』81席/『新橋ロマン劇場』81席 【音響】 DS

【住所】東京都港区新橋3-25-19 ※2014年8月31日をもって閉館いたしました。


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