「映画の市場は国際市場」を当然とするスタンスで、アジアを拠点に活動する映画監督・高橋玄が新たにスタートさせたプロダクション「GRAND CAFE PICTURES」の第1回作品『CHARON(カロン)』。『不夜城』『キッチン』『もういちど逢いたくて(星月童話)』などの日本香港合作映画で知られるポール・チェン(鄭振邦)プロデューサーのもと、製作費1300万円、撮影期間11日というインディーズ映画が誕生した。また、永いキャリアを誇るプロフェッショナルが企画の意義に共鳴し参集し、低予算ながら国際映画市場に通用する35ミリ・ネガフィルム撮影・プリントによる劇場映画として完成した。

【物語】
作家・勝木大(水上竜士)は、結婚相談所で「一切の性生活の不在」「私生活に干渉しないこと」「私を養わないこと」という奇妙な条件を提示した太田秀子(森崎めぐみ)と結婚した。だが、作家の妻となった秀子は、書店の店員・川杉由都、そしてギャングの示現道男(川本淳市)と暮らす娼婦・カロンという3つの顔を持つ多重生活者。ある日、客に殺されかけたカロンは、自己防衛で傷害事件を起こす。カロンと道男の関係が変わり始めたその頃、夫である勝木は、妻が娼婦・カロンであると知り、客としてカロンをホテルの部屋に呼んだ。その翌日、カロンは町から姿を消した。夫と恋人にそれぞれ最後の食事をテーブルに残して。元夫である勝木と、元恋人の道男は、それぞれ別の道からカロンの足取りを追う中で出会い、共にカロンを探す旅に出る。そして、作家とギャング、ふたりの男が辿り着いた旅の先に見たものは、彼女がカロンと名乗り続けた悲しい謎の解答だった。








映画『CHARON(カロン)』は、脚本の完成度の高さから企画段階で、インディーズ映画『メイド・イン・ホンコン』やタイ映画の大ヒット作『オンバック(日本公開題名『マッハ!』)』を世界的ヒットに押し上げた香港の有力映画配給会社ゴールデン・ネットワーク社が世界配給を決定。すでに 第53回マインハイム・ハイデルベルグ国際映画祭インターナショナル・コンペティション正式招待 ゆうばり国際ファンタスティック映画祭正式参加 ドーヴィル・アジア映画祭正式招待が決定している。

監督/脚本 高橋玄が語る「CHARON(カロン)とは…
国際市場が前提だからこそ、日本の有名性に束縛されることがない新鮮な配役で、どの国の観客が観ても共感できる物語を語ることができると、私は考えています。それに、映画はフィルムで撮影されていて映画というもので、最近の日本のように、演出意図ではなく、単に予算の制約という理由だけで、ヴィデオ撮影、ヴィデオ上映をしていて「映画」と名乗るのは、国際的にはまるで映画未開国である証明のようなものです。いかなる低予算であろうと、今後、私たちはフィルムによる描写の可能性に立ち戻った映画作りを続けるつもりです。それに、映画は作れば当然、市場は世界です。ヴィデオ・テープの規格に関係なく、映写機とフィルムは万国共通だからです。今回、我孫子市や柏市などが市民や、市行政までが全面的に協力してくれたのも、地元出身の俳優の映画だからというより、超低予算での国際配給映画が地元で誕生したという未知数への興味と理解が得られたからだと思っています。これが、Vシネマなら、こうした反応は起こせません。観客は未知のものが観たいのです。有名芸能人の顔を見たがっていると錯覚しているのは、実は映画の製作者側なんですね。CGもアクションも有名人も不要。映画の原点に立ち返った、俳優と演出、それを撮影するキャメラだけで描いた、優しいムードのフィルム・ノワールが『CHARON(カロン)』です。相変わらず借金まわしての製作はハードですがね・・・」

【監督/脚本 高橋玄 プロフィール】
1965年東京生まれ。東映東京撮影所で映画界入り。インディペンデント出身で現在、アジアの映画界で注目されている映画作家。1992年の劇場映画監督デビュー作『心臓抜き』はカルト・ムービーの傑作として根強い人気がある。他にも『嵐の季節』『突破者太陽傳』『LADY PLASTIC』『銀の男』などがある。次回作は社会派ドラマ映画『ポチの告白(CONFESSION OF THE DOG)』も完成間近。

【エグゼクティヴ・プロデューサー 鄭振邦(ポール・チェン) 】
1958香港生まれ。日本電子工学院映像科留学後、ゴールデン・ハーベスト社を中心に数多くの香港映画の製作を担当。香港・日本との合作映画のプロデュースには定評があり代表作に『孔雀王』『帝都大戦』『南京の基督』『香港大夜総会』『キッチン』『不夜城』『もういちど逢いたくて』『SPY-N』、高橋玄との共同企画ではドラマ『九龍で会いましょう』(テレビ朝日)などがある。2000年から拠点を上海に移し、中国中央電視台のドラマ製作を始め、巨大な中国資本を背景にアジアと国際市場に向けての映画、エンターテインメント事業を指揮している。GRANDCAFE PICTURESのエグゼクティヴ・プロデューサー。


【港町キネマ通りは、こう観る】

CHARON カロン 
娼婦として妻として二つの世界に生きていた女性カロンを巡って二人の男が彼女を探す旅に出る。

2005年 日本 89min グランカフェ・ピクチャーズ配給
監督、脚本 高橋玄 撮影 飯岡聖英  照明 小川満  美術 吉田悦子  編集 菅野善雄 音楽 高井ウララ、村上純、小倉直人
出演 川本淳市、水上竜士、森崎めぐみ、舩木壱輝、水木英昭、吉守京太

観終わった後、何故か脳裏に焼き付いて離れない映画がある。本作もそういった映画の1本だ。主人公のカロンと名乗る女性は謎に包まれた不思議な二重生活を送っている。一切の性生活をしないという契約の元に結婚した著名な作家と、彼女に娼婦として仕事の斡旋を行っている組織の男との半同棲生活。前半、観客は彼女の未知なる部分に惹かれていく。正直、本作で描かれている様々な事柄に対して明確な理由付けは、なされていない。しかし人の生き方なんて、はっきりと提示できるものなんか意外と無いもので、自分自身がとった行動ですら「何であんな事をしたのか?」説明出来ないものが多い。この映画は、そういった説明的な無駄を省きながら現在進行形の人間を描いている。そう、本作には無駄なシーンが無く、それは主人公に限らず脇役の行動に至るまで後に何らかの意味が出て来る。これは高橋玄監督の脚本が二重生活を微妙な力加減で交差させる事に成功しているおかげで複雑になりがちなストーリーを上手くまとめ上げているからに他ならない。後半、突然姿を消したカロンを巡って二人の男性が全く知らない彼女の一面を少しずつ紐解いていくのだが、ここで前半部でばらまいていたジグソーパズルのピースが組み合わさっていくのである。それでも最後まで、どうしてカロンが娼婦となったのか?何故性生活を送らない契約で結婚をしたのか?本当の真意は彼女の口から明らかにされていない。ただ彼女の残酷な過去が解き明かされ映画は終演を迎える。このラストを希望に満ちていると判断するかどうかは観客の判断にお任せするとして…実は、ここに監督がタイトルに選んだ“見えないが確かに存在する冥王星の衛星=カロン”の意図があるのではないだろうか?映画で明確に理由を描く程、人間は単純ではないという事…不確実なままエンドクレジットが流れた時に観客は自分自身を見つめ直す機会を得る事になるだろう。カロンを演じた森崎めぐみの演技は素晴らしく、人生にある意味見切りを付けてしまった女性を目と唇の演技で表現している。

もう一度観たい!と、すぐ思える映画ではない。むしろ一度観た時の自分の心境を何度も反芻して自分の頭の中で映画を組み立てたくなる…そして、もう一度観たくなる…。そんな不思議な魅力のある映画だ。

 

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