Vol.2 ル・シネマ編


『ル・シネマ』のパンフレットはサイズが通常のパンフレットよりも一回り大きく、一目見ただけでル・シネマのパンフレットだとわかる。これも一種のこだわりで、オープンからその姿勢は変えていない。紙質も女性向けに絹目の素材や厚手のマット紙などを使用しており、抑えた写真の色調が上映作品の上質さを物語っている。企画から制作に至るまで配給会社と共同で行うところに劇場の姿勢と現場からの意見を存分に反映させることが出来るのだろう。素材そして寄稿される方々全てにおいてグレードが高いのも納得が出来るわけだ。基本的には現在に至るまでシナリオ収録は徹底(一部を除く)しており、これもまた『ル・シネマ』のパンフレット・カラーでもある。

カミーユ・クローデル 
変形A4サイズ/24頁

実在した人物がモデルの場合、パンフレットの内容が変わるという例。文藝春秋から出版された『カミーユ・クローデル』の翻訳をされた東大教授であり演出家でもある渡辺守章氏が実在した彼女について分析しているのが興味深い。また、作家の清水妙さんがであるカミーユを分析している。いわゆるロダンに対して激しくぶつけた恋…彫刻という世界から恋というプライベートな世界に至るまで、女性という立場に立って書かれているのが面白い。実在した人物を描いている映画だからこそ映画評論家以外の分野から語られるカミーユ・クローデル像。映画鑑賞の後にもっと良くカミーユを知ることができる読み物なのである。

Tokyu Bunkamura Inc.


美しき諍(いさか)い女(め)
変形A4サイズ/24頁

前述の『カミーユ・クローデル』と同じように芸術の世界を描いていながらフィクションとノン・フィクションでは寄稿される面子も変ってくるのは当り前。アーティストの横尾忠則氏、パール兄弟のヴォーカルであるサエキけんぞう氏、フランス文学者の中条省平氏など…バラエティに富んでいる。どことなく映画を観終った後に各分野の方たちが映画についておしゃべりをしているといったイメージがある。特に、横尾忠則氏は映画のチラシ、ポスターなどのデザインを手がけているだけに自身も映画がよほど好きなのだろう。画家とモデルという密室の中で長い時間過ごす両者の関係をアーティストという立場から分析しているのがとても面白い。

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シラノ・ド・ベルジュラック
変形A4サイズ/28頁

『ル・シネマ』=フランス映画という位置付けが、映画ファンの間でされていた頃の作品。絹目の紙質が物語の雰囲気にマッチしており、そのせいか掲載されている写真もスチールながら映画とは違った味わいを見せているのが特徴的。写真に絡めて劇中の名台詞を載せているなど趣向が凝っている。ドパリュデューの演技が際立つ作品だからだろうか、演出家の宮本亜門氏が評論を寄せているなど興味深い。また、明治学院大学の教授がフランス文学という視点からベルジュラックを分析しているなど非常に内容が濃い読み物としても楽しめる逸品だ。

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髪結いの亭主 変形A4サイズ/24頁

まず、表紙のイラストに心が揺らいでしまう…。あえて写真を使わずに林田洋一氏が描かれたクレパスタッチのイラストが何とも官能的で映画を観る前からドキドキしてしまう。いつにも増して写真点数が多い中面は映画を観れば理解出来るであろう。とにかく映像美=作品の艶でもある本作のウリをとにかく前面に打ち出して見せたわけだ。女優の岸田今日子氏が“女床屋について”と書かれているが、彼女の持っている怪しげな雰囲気もまた本作にピッタリとはまっているのが面白い。主演のアンナ・ガリエナやパトリス・ルコントのインタビューなど読み応えあるパンフレットとなっている。ちなみにシナリオ収録は今回には無い。

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トリコロール 
青の愛/白の愛/赤の愛
変形A4サイズ/48頁

『ル・シネマ』創立5周年記念作品として上映された3部作から成る本作。恋愛映画の大作として有名だがパンフレットも大作なみ…3部作を一冊のパンフレットにまとめたのだから読み応え充分。各々の作品中に流れる曲のオリジナル歌詞を掲載されていたり各々作品のイメージに合わせたレイアウトを施すなど、ある意味において映画の写真集的な役割も担っている。巻末にキャストスタッフのプロフィールが掲載され作品毎に個性を見比べてみるのも良い。その中でも最も興味深いのはキェシロフスキ監督のインタビュー記事…本作に関しての優しい視線がこの記事を読むことで理解出来るだろう。

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恋するシャンソン 変形A4サイズ/28頁

とにかく、本作ほど『ル・シネマ』のカラーにピッタリと当てはまった作品はないのではないだろうか?表紙のポップなデザインは遊び心に溢れていながら作品の持っているユーモア感覚はしっかりと表現されている。音楽がキーの映画だけに寄稿には、なかにし礼氏や嶺川貴子氏が書かれている。勿論、劇中に使用された曲目もしっかりと解説付きで掲載されており中にはちょっとしか使われていない曲もあったりするのでどこのシーンで使われていたか説明まで書かれているのが親切だ。出演者が多い映画にしてもパンフレットの効力は必要不可欠だが音楽が多い作品もパンフレットは重要な役割を果たしてくれるという良い例である。

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初恋のきた道 変形A4サイズ/28頁

2000年の映画界はチャン・イーモウ監督に染まったという感が否めない年だったが、本作は初日から超満員でロードショウが終了してからも名画座に留まらず地方のロードショウ館までも上映を行った程の大ヒットだった。パンフレットの内容もヒロインのチャン・ツィイーを前面に押し出して彼女の魅力を余すことなく伝えている。寄稿には評論家の今野雄二、秋山登氏などに加えて演出家である久世光彦氏が本作の風景について書かれているのが興味深い。また何よりもウレシイのが本作のもうひとつの目玉、中国家庭料理についてレシピを掲載していることだ。映画を観た方なら食べたいと思ったであろう“きのこ餃子”はチャレンジしたい。

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