神奈川県内でも最大級の客席数を誇った『横浜東宝』。昔は2階にある『横浜東宝エルム』とひとつの劇場だったのを1階と2階で分けて現在の姿になった。とは言うものの客席617席は『横浜スカラ座』と並ぶ最大規模。客席に座るとスクリーンの大きさを実感でき、上映が始まりスクリーンに映画が映し出されると、その迫力に思わず圧倒されてしまったものだ。「本当は70mmの映画を上映出来る設備を持っているのですが、最近70mm映画そのものが制作されなくなっていますから…」と松岡氏は語る。こうして70mmの魅力はデジタルへと移行してしまうのであろうか?70mm映画の迫力に胸踊らせていた世代にとっては、実に勿体ない話しだ。2階にある『横浜東宝エルム』は『横浜東宝会館』の中でも特徴的な劇場で場内に入ると急勾配の傾斜に驚かされ、最後尾の席に座ると通常の映画館の2階席よりも高い位置からスクリーンを見下ろせる。場内は横が広くそして高さが通常の2倍近くはあるだろうか…。勿論、傾斜が急なだけに前の人の頭は決して邪魔にはならない。そして、もうひとつ特徴的なのはロビー…1つの劇場のロビーとしては、かなりのゆとりを持っていた。『横浜スカラ座』だけはエレベーターを使って入場する。会館の左側にあるエレベーターに乗って4階、そこには広々とした映画館が存在している。薄暗い場内と赤いカーペットの敷き詰められたロビー(昔懐かしいゲーム機も現役でガンバっていた)…そのロビーには劇場の歴史を感じさせる柱が立っている。最前列に座ってもスクリーンに奥行きがあるせいか観ずらいことはなく、むしろどの場所に座ってもスクリーンが大きいため問題はない。正面でチケットを購入して左にある床に赤いラインと緑のラインが轢かれている階段を降りて行くと『横浜東宝シネマ1・2』のロビーの前に出て来る。この二つの劇場は『横浜東宝会館』の中でも比較的小さく1階席と2階席に別れている。やや後方に位置する2階席からはスクリーン全体が見渡すことが出来る昔ながらの映画館だ。また劇場ロビーへ至る途中に東宝経営の中華飯店とおそば屋さんがあり、上映までの待ち時間にちょっと食事を取る観客の姿が良く見られたものだ。壁一面に東宝系作品のパンフレットが展示されており丁度良い時間つぶしができたロビーも今はもう無い。


西洋の文化が、いち早く入って来た港町、横浜。その代表とも言えるのが映画であった。『横浜東宝会館』は東宝直営のロードショウ館として数多くの名作を送り続け、大スクリーンに投影されるアクションやロマンスに観客の心を捉えて離さなかった。2001年11月29日を持って閉館された映画館にもう一度感謝を込めて「ありがとうございました。」と言いたい。また、ひとつ日本から大切な文化の灯が消えた…。

 

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