歌舞伎町に最後まで残っていた1000席の大劇場「新宿ミラノ座」が閉館する事となり、『アラビアのロレンス』が、LAST SHOW上映された。多分、この巨大スクリーンで観る事も叶わないだろうと…仕事を早々に切り上げて19時の回に滑り込んだ。席は全席自由なので、僕はお気に入りの前から4列目中央寄りで観賞。スクリーンが視界いっぱいに広がるこの席はダイナミックな映像を満喫するには最適だ。思い返せば同じ東急レクリエーションが運営する今は亡き「渋谷パンテオン」で開催されていた東京国際ファンタスティック映画祭で『アラビアのロレンス』が70mm上映されて以来。あの時は上映中に起こった地震によって映写機が稼働しなくなり中断という口惜しい思いをしたのだが、まさかこんなカタチで実現するとは…。

4分ほどの序曲が終わり、真俯瞰からバイクの手入れをするロレンスがスクリーンに映し出されると会場から沸き起こる拍手。シネスコの画質を均一化するため左右が大きく湾曲するスクリーンもこれで見納めか…と思うと感慨深いものがある。『戦場にかける橋』でアカデミー賞を獲得したデビッド・リーン監督が次なる題材として選んだのは熱帯雨林のジャングルから灼熱の砂漠だが、シネマスコープサイズのスクリーンいっぱいに広がるフレデリック・A・ヤング撮影(『円卓の騎士』や『ソロモンとシバの女王』などダイナミックで格調の高い映像が得意なカメラマンだ)による砂漠の映像だけでも大いに観る価値あり。カメラマンの一人にニコラス・ローグの名前があるのに驚いた。冒頭、アラビアへ単身行くことになったロレンスがマッチの火を吹き消すと、地平線から太陽が昇る画面に変わるところで思わず鳥肌が立ってしまった。争いが絶えない部族を束ねてトルコ軍が占領する港町アカバやダマスカスを攻撃するスペクタクルシーンは、遠景や俯瞰のショットとラクダに乗って突進してくるピーター・オトゥールら出演者たちのアップ(スタンドインではなく本当に騎乗しているのだ)…と、何台ものカメラで捉えた迫力ある映像こそCG慣れした若者に観てもらいたい。

興奮冷めやらぬまま帰宅して早速、『アラビアのロレンス』のパンフレットを開く。A4サイズよりもひと回り大きく、手にしっとりするケント紙(多分)の紙質は、従来のパンフレットに比べてかなりの豪華仕様となっており配給会社の意気込みを感じる。映画では語りきれなかった晩年のロレンスについて書かれているのが興味深い。アラブのために奔走したロレンスだが後半では、そのカリスマ性が政治家には邪魔な存在になっている事が作中で描かれているが、パンフレットではロレンスの晩年と死後について紹介されており、名前を変えて最下級のいち兵士となっていた事実に、彼の苦悩がその後も続いていたのを伺い知る事が出来る。

また、当時は手作業であったであろう折込で(この加工もお金がかかっている)ダマスカスに進撃するアラブの連合軍を正面から捉えたスチールと砂漠を進むラクダ騎乗兵の一群のスチールが素晴らしい。