顔のないスパイ THE DOUBLE
二転三転する衝撃のクライマックスに、すべての観念が打ち砕かれる!!

2011年 アメリカ カラー シネスコサイズ 98min クロックワークス配給
制作総指揮 エドワード・ボーガーディン 監督、脚本 マイケル・ブラント 脚本 デレク・ハース
撮影 ジェフリー・キンボール 編集 スティーヴ・ミルコヴィッチ 衣裳 アジー・ゲラード・ロジャース
プロダクション・デザイン ガイルズ・マスターズ
出演 リチャード・ギア、トファー・グレイス、マーティン・シーン、テイマー・ハッサン、スタナ・カティック
スティーヴン・モイヤー、オデット・ユーストマン

2012年2月25日より、新宿バルト9他全国ロードショー
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 アンジェリーナ・ジョリー主演の新感覚アクションムービー『ウォンテッド』や全米No.1に輝いた西部劇『3時10分、決断のとき』など多くのヒット作を輩出する人気脚本家マイケル・ブラントが監督を手掛ける本格サスペンス・アクション。待望の初監督作品となる本作で長年温めていた企画を遂に映像化する。また撮影を『トップガン』のジェフリー・キンボールが担当し、影の世界でしか生きられないストイックな男たちを映像化している。敵味方の区別もつかない壮絶な世界に生きる男たちを主人公にラストまで一切の予断を許さないリアリティ溢れる至高のスパイ・アクションを誕生させた。主演はゴールデングローブ賞主演男優賞を受賞した『シカゴ』をはじめ、数々の話題作に出演する名優リチャード・ギア。本作では複雑な多面性を持つ難役に挑み、62歳とは思えぬハードなアクションを披露する。リチャード・ギア演じるポールに憧れ、伝説のスパイ“カシウス”逮捕に執念を燃やす若きFBI捜査官に『スパイダーマン3』のヴェノム役でお馴染みの若手注目俳優トファー・グレイスが扮し、さらに脇を固めるのは『地獄の黙示録』のマーティン・シーン、人気テレビシリーズ『トゥルーブラッド』のスティーヴン・モイヤー、『イースタン・プロミス』のテイマー・ハッサンなどの実力派ベテラン勢が名を連ねている。


※物語の結末にふれている部分がございますので予めご了承下さい。
 ワシントンで起きた上院議員殺害事件。その手口から捜査線上に浮上したのは、既に死んだと思われていたソビエト伝説のスパイ“カシウス”だった。犯人は“カシウス”なのか?事件の真相を解明するため、CIA長官(マーティン・シーン)は、一度は引退した冷戦時代の元諜報員ポール・シェファーソン(リチャード・ギア)を呼び戻し、議員を内偵していたFBIの若き捜査官ベン・ギアリー(トファー・グレイス)と共に捜査に当たらせる。捜査が進むにつれて明らかになる“カシウス”の正体。そこに浮かび上がったのは、まさにチームのリーダーであるポールの姿だった。時を同じくして20年前に姿を消していたKGBの元特殊部隊も捜査線上に浮上。真実は一体どこにあるのか?全ての謎が解けた時、やがて宿命の対決の火蓋が切って落とされるのだった。


 デジタル技術が発達したおかげで当たり前のようにアクション映画にCG合成が取り込まれるようになってかなり経つ。たまに実写を観てるんだかアニメを観せられてるんだか困惑気味に陥る昨今だが…。どうしてもCGを主軸に置いてしまうと本来映画としてあるべき俳優の演技と、その演技を効果的に表現するカメラワークの醍醐味が二の次になってしまう。(勿論、CGを否定しているわけではない)1970年代のアクション映画と言えば男優の優雅な身のこなしと洗練された出で立ちで危機を突破するダンディズムに映画ファンは熱狂したものだ。ジョン・フランケンハイマー、ウィリアム・フリードキン、ピーター・イェーツの映画に男が惚れるのは、時代遅れのストイックな主人公たちに自分を重ね合わせカタルシスを感じたから。本来は男優が主役のはずなのだが、どうも最近は派手な爆発やクラッシュの影に男優が押しやられていたのが気になっていた。また、彼らは決してウエルメイドなヒーローではなく(ジェームズ・ボンドは別として)どこか弱さがあるところに男の色気を感じたわけで、だからこそ『ジャッカルの日』のエドワード・フォックスや『フレンチコネクション』のジーン・ハックマンをこよなく愛したのだ。その点において本作は、あの傑作西部劇『3時10分、決断のとき』(二人の男の意地のぶつかり合いが良かった)の脚本を手掛けたマイケル・ブラントの初監督作品だけにアナログ全開の本格スパイ・アクションに仕上がっており、熟練の域に達したリチャード・ギアの演技と『トップガン』でストイックな男たちの世界を真正面から捉えた撮影監督ジェフリー・キンボールによるスタイリッシュな映像が堪能出来るのが嬉しい。
 本作でリチャード・ギアが演じる引退したCIA諜報員ポール・シェファーションの正体は、実はソビエト伝説のスパイ“カシウス”。どのようにCIAに入り込んだのか?という経緯を詳しく語られていないのが冷戦時代の不気味さを思い起こさせる。原題の“THE DOUBLE”は、勿論ふたつの顔を持つ主人公を指しているが、もう一人のスパイ(これ以上はマナーに反するので言えないが)という意味も合わせ持っている。スパイのヒロイズムは東西冷戦の終結と同時に崩壊しており、今や凄腕のスパイを持ってしても伝説としてしか存在しえないという設定が興味深い。真の顔を封印して別の人間として20年も過ごしてきたスパイの悲しみをリチャード・ギアは見事に表現しており、『ジャッカル』のような派手なアクション大作よりも『北京のふたり』や『クロッシング』といった等身大の人間を演じた方が俄然イイ味を出す。トファー・グレイス演じる若きFBI捜査官ベンと共に“カシウス”を追う事となるのだが、ここで我々は巧妙に仕掛けられたいくつもの罠に陥る。ブラント監督の正攻法で淀みのない演出とプロデューサーのデレク・ハースと共同で書き上げた練りに練った脚本によって、「えっ、そうだったの?」と何度膝を叩いた事か。『3時10分、決断のとき』で追う者と追われる者の道中を描いていたが、本作でも対等の立場であるはずのふたりの男が、実は追う者と追われる者だったという表裏二焦点の面白さがある。ハーバード在学中に“カシウス”の論文を書いたほど傾倒(インスパイアと言っても良い)するベンと“カシウス”の共通点が共に国家の犠牲者である…という結末も奥深い。

最終的に安息の地…とは愛する家族がいる我が家。という結論はマイケル・ブラントとデレク・ハースの一環した思いである事は間違いなさそうだ。

 

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