テイカーズ TAKERS
全てを手に入れた男たちの予測不能な犯罪計画!

2010年 アメリカ カラー シネスコサイズ 107min 日活配給
制作 グレン・S・ゲイナー、クリス・ブラウン、モリス・チェスナット 製作、脚本 ガブリエル・カソーズ
監督、脚本 ジョン・ラッセンホップ 脚本 ピーター・アレン、エイヴリー・ダフ 撮影 マイケル・バレット
編集 アルメン・ミナジャン 美術 ジョン・ゲイリー・スティール 音楽 ポール・ハスリンジャー
出演 マット・ディロン、ポール・ウォーカー、イドリス・エルバ、ジェイ・ヘルナンデス、マイケル・イーリー
ティップ・ハリス、クリス・ブラウン、ヘイデン・クリステンセン、スティーヴ・ハリス、ジョナサン・シェック

2011年11月19日(土)銀座シネパトス他全国順次ロードショー
オフィシャルサイト http://takers-eiga.com/


 ゴージャスな若き犯罪者グループの姿を描くサスペンス・アクション。監督は『ロックダウン』の新鋭ジョン・ラッセンホップ。俳優でもあるガブリエル・カソーズの原案をピーター・アレン、エイヴリー・ダフらによって完成させた。撮影は『ボビー』のマイケル・パレットが担当し、スピード感溢れるクールな映像を作り上げている。テイカーズを演じるのは『ワイルド・スピード』のポール・ウォーカー、『マイティ・ソー』のイドリス・エルバ、『スターウォーズ エピソード3シスの復讐』のヘイデン・クリステンセン、『セントアンナの奇跡』のマイケル・イーリー、そしてプロデューサーとして名を連ねているヒップホップアーティストでもあるT.I.、『ストンプ・ザ・ヤード』のクリス・ブラウンがスタイリッシュな犯罪者を好演している。また、彼らを執拗に追い続ける刑事に『クラッシュ』の演技も鮮烈なマット・ディロンが扮している。全米公開前に出演者のT,.I.が武器不法所持で刑務所に収監されたり、クリス・ブラウンが恋人への暴行で警察沙汰になるといったトラブルで公開が延期されたが、2010年8月に公開されるや大ヒットを記録した。


※物語の結末にふれている部分がございますので予めご了承下さい。
 ゴードン・ジェニングス(イドリス・エルバ)、ジョン・ラーウェイ(ポール・ウォーカー)、A.J.(ヘイデン・クリステンセン)、アッティカ兄弟のジェイク(マイケル・イーリー)とジェス(クリス・ブラウン)のメンバー5人は、銀行強盗で奪った大金で豪勢なライフスタイルを享受している。彼らは詳細なプランを立てて手がかりを残さず、年に一度だけ大仕事をこなしてきた。最近成功させた犯罪は200万ドルの銀行強盗。犯行後、テレビクルーのヘリコプターを奪って脱出するという思い切った計画で現場から立ち去った。だがこれはロス警察の刑事ジャック・ウェルズ(マット・ディロン)の注意をひく。彼は昔ながらの刑事で、結婚も子供もおよそプライベートライフは総て捨てて仕事にのめりこんでいた。そして警察署の援助も受けずに、自らの手で次の犯罪が起る前に突き止めようとしていた。そんなテイカーズの前にかつての仲間、ゴースト(T.I.)が姿を現す。刑務所から出所してきたばかりの彼は、今度のヤマがうまくいけばもう強盗をしなくてもいいほどの大金強奪だと提案。それは3000万ドルを積んだ現金輸送車を襲うという計画だった。しかし現金輸送車がくるのは5日後―その機会を逃せば計画は消滅だという。前の仕事が終わってすぐに次の強盗にとりかかるのはメンバーの厳格な作戦ルールに反するが、金額の大きさに釣られ、ロスの人通りの多い場所で爆薬を使用して道路に穴を開け、真っ昼間に強盗をやってのけるという大胆な計画を実行することに。わずか数日で準備、メンバーは込み入ったプランをスタートさせたが、それが残酷なロシアギャンググループとの抗争に巻き込まれることになるとは思いもしなかった。その頃、ジャックは絡み合った証拠の一つ一つを解きほぐし、ついにチームリーダーのゴードンにたどりつく。だがテイカーズが計画を実行するまでの時間は刻々と迫っていた。


 開始早々10分も経たない内にマスク姿の男たちが銀行に押し入りワザと女子事務員に警察へ通報させて無線を傍受したテレビ局のヘリを奪い逃げる。全ては計算通り…鮮やかな手口で一気にたたみかけるスピーディーなオープニングで以降のテンポが確定したと言えるだろう。人を殺さず金だけを奪うスマートな犯罪集団と言えば『オーシャンズ11』、やや暴力的だがお互いの素姓も知らないクールな犯罪者たちの『レザボアドッグス』、変わり種で完全犯罪を成し遂げた『インサイドマン』なんていうのもあるが本作程、犯罪をゲームのように楽しむスタイリッシュな男たちの姿にワクワクさせられた作品は珍しい。何より彼らにとって強奪はゲームであり、決して困窮からくる強盗団ではないという設定がカッコイイ。ひとつの仕事を終えると仕立ての良いスーツを着こなし高級店でシャンパンを酌み交わす。間違っても場末のバーでビールで乾杯!ではない。しかも金の一部はチャリティーに寄付するのだから、そんじょそこらの強盗団とは格が違う。年々、暴力描写が過激になっているクライムムービーにおいてフィルムノワール的な雰囲気を持つ本作はかえって新鮮な印象を与える。
 本作の魅力のひとつに登場人物設計がしっかりと成されている事が挙げられる。俳優を本業とするガブリエル・カソーズがある日、突然湧いたインスピレーションを基に脚本家のピーター・アレンと執筆された本作は原作物とリメイクが目立っていた最近のハリウッド映画の中で久しぶりに見応えのあるオリジナルとなった。カソーズとアレンが書き下ろした脚本はアクションよりもむしろ登場人物設計に比重を置いており、一人一人のキャラ造形がしっかりしているから感情移入しやすいのが特徴的だ。仲間を裏切り窮地に追い込むかつての仲間ゴーストを演じたT.Iは全米トップクラスのヒップホップアーティストだけに彼が話すセリフのイントネーションが英語に弱い筆者ですら実に心地良く響いてくる。最近のクライムムービーには胸を打つセリフが少なくなったなぁと思っていたが…やはりカソーズが俳優だからだろうか?印象的なセリフが多い(やはりヒールの吐く言葉は格言であるべき)。と言いつつも体を張ったアクションも目を見張るものがあり、警察に追いかけられたジェシー(やはりR&Bのトップアーティスト、クリス・ブラウン)がスタント無しで街中を逃走するシーンにおいて『フレンチコネクション2』のジーン・ハックマンに匹敵する走りを見せる。そんな彼らを追いつめる型破りな刑事ジャックを演じたマット・ディロンもまたイイ。椅子から立ち上がる時もしんどそうな中年刑事だが、捜査に対するこだわりは半端じゃない。窃盗団のメンバーらしき人物に目星をつけたとたん娘を車に乗せたまま尾行を開始するような男だ。彼の同僚が賄賂を受け取り犯人を逃がすビデオを見た時の衝撃…あぁイイ歳の取り方をしているなぁと思う。

警察に取り囲まれた建物にいるジェイクが「俺の車は裏に止めている」と言うと弟のジェスが「俺の車は正面だ」と言う。逃げられないと覚悟したジェイクが一言「お前の車で行こう」そして二人は正面から出て行き…。

 

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