マンマ・ミーア! MAMMA MIA!
どんなことがあっても、笑っていよう。自分の人生がもっと好きになる。

2008年 アメリカ カラー シネマスコープサイズ 108min 東宝東和配給
制作 ゲイリー・ゴーツマン 製作総指揮 リタ・ウィルソン、トム・ハンクス 監督 フィリダ・ロイド
脚本 キャサリン・ジョンソン 撮影 ハリス・ザンバーラウコス 美術 マリア・ジャーコヴィック
衣裳 アン・ロス 振付 アンソニー・ヴァン・ラースト 音楽 マーティン・ロウ、ベッキー・ベンサム
出演 メリル・ストリープ、アマンダ・セイフライド、ピアース・ブロスナン、コリン・ファース
ステラン・スカルスガルド、ドミニク・クーパー、ジュリー・ウォルターズ、クリスティーン・バランスキー

2009年1月30日(金)より全国ロードショー公開中
オフィシャルサイト http://www.mamma-mia-movie.jp/


 1999年のロンドンでの初演以来、全世界170都市以上で上演され、3,000万人以上を総立ちにさせているロングラン・ミュージカルの映画化。タイトル曲“マンマ・ミーア”をはじめ、“ダンシング・クイーン”“チキチータ”等、誰もが知っている数々のABBAナンバーにのせて、奔放な青春時代を送った母親と、堅実な家庭を築きたいと願うしっかり者の娘の「愛と絆の物語」が笑いと涙で綴られる。主人公の母親ドナを演じるのは、ハリウッド史上最多14回のアカデミー賞ノミネート歴を誇るメリル・ストリープ。ニューヨーク公演を観て「出演者の一人として舞台に立ってみたい」という手紙をキャストに出した彼女は、映画化に当たり出演のオファーに即答したというほど。本格的なミュージカルは初挑戦ながら、圧倒的な歌唱力を披露しつつ、身体を張ったスタントも見事にこなしている。娘のソフィー役に抜擢されたのは、伸びやかな歌声とキュートな個性を光らせる『ミーンガールズ』のアマンダ・セイフライド。その他にもかつてのドナの恋人役に007シリーズのピアース・ブロスナン、『ブリジット・ジョーンズの日記』のコリン・ファース、『パイレーツ・オブ・カリビアン』のステラン・スカルスガルドといった超一流の男優を配している。監督のフィリダ・ロイドを筆頭に、脚本のキャサリン・ジョンソンなどオリジナルの舞台を手掛けたスタッフが顔を揃え、舞台のエネルギーはそのままに、スケールアップした映像とイマジネーションの世界を新たに構築している。相次ぐサプライズと予想を超えた至福のエンディングに酔いしれるファンは多いに違いない。


※物語の結末にふれている部分がございますので予めご了承下さい。
 エーゲ海に浮かぶギリシャの美しい小島。ソフィ(アマンダ・セイフライド)は、この島で小さなホテルを経営するドナ(メリル・ストリープ)の一人娘。明日、結婚式を控える彼女は、母親に内緒で3人の男性を招待していた。父親の名前を明かされていないソフィはドナの日記から、同時期に付き合っていた3人の内の誰かが父親ではないかと思ったのだ。ホテルに突然現れた、建築家のサム(ピアース・ブロスナン)、銀行マンのハリー(コリン・ファース)、冒険家のビル(ステラン・スカルスガルド)を見てドナの気持ちは大きく動揺する。その晩、ホテルではソフィの独身最後を祝うパーティーが開かれた。ソフィはそこで一人一人にカマをかけ誰が父親か探ろうとした。しかし、3人が3人とも自分が父親ではないか?と思い始め、翌日のソフィのエスコート役をかって出る始末。事態の収拾がつかなくなり、ますます混乱するソフィはその場で気を失ってしまう。翌朝、「結婚式を中止したら?」というドナの言葉に「私の子供には、父親が分らない事で苦しめたくない」と言ってドナを傷つけてしまう。さらに恋人のスカイとも、何の相談も無く3人を招待した事をめぐって口論になってしまう。人生最大の晴れの日であるにも関わらず落ち込むソフィ。そんなソフィにドナは優しくウエディング・ドレスを着せてやり、ソフィはそこで初めて母親として苦労して来たドナの心境を知る。ソフィを妊娠した事で母親から感動されたドナは、ソフィがいてくれた事で幸せだったと話す。それを聞いたソフィは結婚式のエスコートをドナに頼むのだった。


 1970年代最後のミュージックシーンを席巻したABBAの名曲で綴るブロードウェイミュージカルの映画化。最近、ザ・ビートルズの曲で構成されたミュージカル『アクロス・ザ・ユニバース』が記憶に新しいが、これからも、こうした既製のナンバーを使ったミュージカルが増えていくと思う(個人的には、カーペンターズで是非やってもらいたいのだが…)。やはり、自分の聞き馴染んだ思い入れのある曲が流れると一緒に口ずさみ、いつしかリズムを取ったり出来るのがこの種のミュージカルの良いところ。往年のMGMミュージカルに慣れ親しんだ人には、抵抗を感じるかも知れないが、FMエアチェックでカセットテープにベスト盤をこさえていた世代にとっては、たまらない作り方だと思う。それだけに、うるさ型のファンの厳しい目にさらされるリスクも多いわけだが、かく言う筆者も正直“チキチータ”の扱いに若干の不満を持っている。…と、いうのも曲に対する思い入れがある証拠で、それが作品の出来と一致するものではない。ファンにしてみるとABBAの曲を熟知しているわけで、本作の良いところはミュージカルシーンに突入する際に小さく流れるイントロが聞こえたとたんに“おっ、これか!”と先に分かってしまう快感を得られる事だ。冒頭間もなくアマンダ・セイフライドが女友達と歌う“アイ・ハブ・ア・ドリーム”から既に筆者はノックアウトされ、メリル・ストリープが、かつての男たちに驚き、胸ときめかせ、高らかに歌い上げるタイトルとなっている“マンマ・ミーア!”は最高だ。もっとベタを言えば、ABBAになくてはならない“ダンシング・クィーン”は圧巻。舞台では表現出来なかった、部屋からホテルの庭へ飛び出し、海岸に島民全員が集結したかのような人々が大合唱するシーンでは、我を忘れてリズムを取ってしまった程だ。
 幸せモードに満ち溢れた本作…始まって間もなく昔観た映画である共通点がある事に気付く…79年の大ヒット作『グリース』だ。ジョン・トラボルタとオリビア・ニュートンジョンの健康的な学園ミュージカルは、観ていて“こんな学園生活を送ってみたい〜”と憧れを抱いた人も多かったのではなかろうか。思えば、ABBAも同じ時代のサウンドだ。この頃のアメリカは安定していたからだろうか?確かに、60年代ほど音楽に思想性は無く、聴いているだけでハッピーになれる音楽が多かった。
 ギリシャの美しい海に囲まれた島で可愛い小さなホテルを経営するシングルマザーと明日に結婚を控えた先進的な娘の元にやって来た3人の父親候補…なんてシチュエーションとストーリーを聞くだけでワクワクするじゃありませんか。こうしたノー天気(失礼!あくまでも良い意味です)な設定こそが正しいミュージカルの作り方なのです。あまり、ミュージカルに馴染みのないメリル・ストリープを筆頭にピアーズ・ブロスナンが普段あまり見せないおどけた演技を披露してくれたのも楽しみのひとつ。舞台の演出を手掛けたフィリダ・ロイド監督は、オリジナルの良さを損なわずに映画的な広がりを見せようと心がけ、それはものの見事に成功している。舞台で熟されたシナリオが映画の世界で映像という力を借りて、より光を放つ。これぞ、ハリウッドのミュージカルだ!

「あの子の考えている事が、ようやく分ったと思うたびに、もう成長して私の指の間をすり抜けていく」ミュージカルはセリフよりも歌詞が名セリフ。このセリフは“スピリッツ・スルー・マイ・フィンガーズ”の一節。

 

  本ホームページに掲載されている写真・内容の無断転用はお断りいたします。(C)Minatomachi Cinema Street