アクロス・ザ・ユニバース ACROSS THE UNIVERSE
愛こそは全て―「ライオンキング」の天才演出家が仕掛けた壮大なミュージカルの誕生!

2007年 アメリカ カラー ビスタサイズ 131min 東北新社配給
プロデューサー スザンヌ&ジェニファー・トッド 監督、原案 ジュリー・テイモア
撮影 ブリュノ・デルボネル 音楽 エリオット・ゴールデンサール、ティース・ゴール 
美術 マーク・フリードバーグ 編集 フランソワーズ・ボノ 衣装 アルバート・ウォルスキー
出演 エヴァン・レイチェル・ウッド、ジム・スタージェス、ジョー・アンダーソン、デイナ・ヒュークス
マーティン・ルーサー・マッコイ、T.V.カービオ

2008年8月9日(土)より 全国ロードショー公開中
オフィシャルサイト http://across-the-universe.jp/


 『フリーダ』にてアカデミー賞6部門にノミネートされ、“ライオンキング”の舞台演出でトニー賞など数々の賞に輝く天才監督ジュリー・テイモアが33曲にもおよぶビートルズの名曲を武器にしてミュージカル映画に革命を起こす。「レット・イット・ビー」「愛こそはすべて」「ヘイジュード」など今なお愛され続ける定番のヒット曲の歌詞とメロディを登場人物の心情を物語るメッセージとしてアレンジ。1960年代のアメリカと、そこに生きる若者たちの恋と青春をリアルに描いたオリジナルミュージカルなのだ。しかも、テイモア監督ならではの独創的な映像イメージを散りばめたミュージカルシーンは衝撃的で斬新。全米では23スクリーンでの限定公開ながら、興行成績16位という快挙を達成。その後、口コミで人気が広がって964スクリーンにまで拡大。ゴールデン・グローブ賞ではミュージカル・コメディ部門の最優秀作品賞にノミネート、アカデミー賞では衣裳デザイン賞、グラミー賞では最優秀サウンドトラック賞へのノミネートを果たしている。テイモア監督は有名スターを起用せず、登場人物のイメージにピッタリな新人を発掘。出演者たちは全て吹き替えなしで、しかもライブ音声でセリフ同様に歌を歌っているのだ。主人公のジュードには『ラスベガスをぶっつぶせ』のジム・スタージェス、ヒロインのルーシーには『サーティーン あの頃欲しかった愛のこと』で美少女スターとして頭角を現したエヴァン・レイチェル・ウッドが見事な歌声を披露してくれる。


※物語の結末にふれている部分がございますので予めご了承下さい。
 1960年代。イギリス・リバプールの造船所で働くジュード(ジム・スタージェス)は、米兵だったまだ見ぬ父親を探しにアメリカへ渡った。プリンストン大学で、管理人として働く父は初めて息子の存在を知って戸惑う。その反応に失望したジュードは、そこの学生マックス(ジョー・アンダーソン)と出逢う。たちまち意気投合した二人は親友となり、マックスの妹ルーシー(エヴァン・レイチェル・ウッド)を紹介されたジュードは恋に落ちる。ジュードは、大学を中退したマックスと共にニューヨークへ行き、歌手のセディ(デイナ・ヒュークス)が住むアパートで共同生活を送る。そこに、デトロイトの暴動で弟を失ったギタリストのジョジョ(マーティン・ルーサー・マッコイ)やオハイオから出て来たプルーデンス(T.V.カービオ)も仲間に入り、新しい生活が始まった。ジュードがデザイナーとして順調に仕事を始めた頃、ベトナムで恋人を亡くしたルーシーが訪ねてくる。失意のルーシーを優しく慰めるジュードとの間に愛が芽生え始める。そんな時、兄のマックスに招集令状が届き、彼は徴収されベトナム戦争へ送られてしまう。兄を思うルーシーはジュードの心配を尻目に反戦運動に没頭し、すれ違いが生じて二人は別れてしまうのだった。一方、順調にツアーを開始したセディは新しいバンドで再スタートを切るという契約にサインをしてしまい、ジョジョと決別してしまう。ある日、コロンビア大学で行われた学生たちの抗議活動に警察が介入、その中にいたルーシーを助けようとしたジュードは逆に逮捕され、イギリスへ強制送還される事になる。バラバラになってしまった仲間たち、恋人たちは再び心をひとつにする日は来るのだろうか…。


 冒頭、リバプールの海岸で主人公の青年が口ずさむ“ガール”。歌っているのか台詞なのか…どちらにも聞こえるこのシーンの映像に「この映画は名作だ!」という予感が走る。ブロードウェイでロングランヒットを記録した全編を覆い尽くすビートルズ不朽の名曲だけで構成されたミュージカルの映画化。最近、日本でもABBAの曲だけのミュージカルが流行ったのが記憶に新しいが、まさか誰もが望んでいながらも実現不可能と思われていただけに興味津々。本作で使われているナンバーは33曲。ほとんど耳に馴染んだ聴いた曲ばかり。これならば、ビートルズファンじゃなくとも充分に楽しめる。アメリカ激動のベトナム戦争を背景に、父親探しにアメリカにやってきた英国青年ジュードが恋に落ちるルーシーとの恋愛物語が核となり、彼等を取り巻く複数の男女を交えた群像劇が繰り広げられる。ビートルズの歌詞は、同じ曲でも恋愛の歌かと思っていたら、場面によっては政治を批判した歌に聞こえる。60年代に起きた事件や思想を巧みに織り交ぜながらキチンと恋愛ドラマに仕上げているジュリー・テイモア監督のセンスは素晴らしいものがある。確かに彼女の『フリーダ』も数本の絹糸を紡ぎ合わせるかのような流麗さがあったが、本作はそれ以上。『アメリ』のカメラマン、ブリュノ・デルボネルによる映像もエッヂが効いて実にイイ。特に、“ストロベリー・フィールズ・フォーエバー”のシーンで主人公がデザイナーと恋の狭間で悩みながら、壁に無数のイチゴを刺す映像は最高。きっと、オリジナルのプロモーションビデオがあったならこんな映像だったかも?刺さったイチゴから滴る果汁が、まるで血のよう。また、徴兵テストを受けに行く恋人の兄のシーンでは“アイ・ウォント・ユー”をバックにポスターのアンクルサムが手を伸ばしてくるシュールさ。最近のCGが乱発され辟易していたハリウッド映画だが、こういう使い方はよろしい。このシュールな2つのシーンは、ベトナム戦争…いや、イラク戦争に対する痛烈な批判と感じるのは私だけだろうか?
 本作は、ビートルズの曲を使うだけではなく、ファンを喜ばせるエピソードも交えている。ラスト、アパート屋上で行われるライブは、正にビートルズのラストライブ(今のところ観ることは叶わない映画『レット・イット・ビー』に収録されている)だったり…。こうした小ネタにファンは、思わずニンマリしてしまう。ただ、ジュードの役名だけは深読みし過ぎて「生き別れのお父さんが後半もっと関係してくるんだよ!」等と勝手に思い込んで肩透かしを喰らうのもビートルズねたがあまりにも日常に氾濫しているが故か…。あまりメッセージ性に捕らわれず、純粋にビートルズの名曲に酔いしれて、終わった後CDを借りにレンタルショップに直行するのが正しい観賞の仕方かも。

「顔の記憶力は?」と家主の女性に聞かれて「良い方ですけど…」と答える主人公に彼女は、こう続ける。「良かった…洗面所に鏡が無いの」物語に関係ないが、こういうウィットに富んだ台詞が好きだ。

 

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